前回の続きです。
⦿ハイハット
ハイハットを右に振るか、左に振るかは人それぞれ、あるいはほかの楽器との兼ね合いによりけりですが、ど真ん中という事はあまりなく、多少を左右にパンニングされるのが一般的です。
今回はわずかに左に振っています。
OHマイクのハイハットパンニング
左に振る理由はOHマイクを(近ければAMBIも?)考慮しているからです。
上の画像のような配置がではハイハットはOHのステレオマイクの左側に距離が近いのでOHだけを聞くとHHが左に寄っており、それぞれの定位を合わせるのが目的です。
OHの音がほとんど聞えないくらい小さい場合やそもそも使わない場合は問題にはならないのですが、OHの音が多い時にOHから聞こえるハイハットが右からで単体のハイハットが左からの場合妙にハイハットの音像がワイドに広がってぼんやりした印象になります。
Drummer配置とAudience配置
敢えてぼんやりさせたい場合はそれもアリかもしれませんが、私は基本的に揃えるようにしています。 左も右と左の配置を変えたいときは「Drummer」と「Audience」をクリックすれば視点も聞こえてくる音も左右逆になりますのでこの機能を用います。
実際にどんな風に聞こえるのかはハイハットをソロで鳴らしながらOHの音だけを聞いてチェックすることができます。ミキサーのTweaksでOHのwidthを調整し、左右のマイクの距離を離せば離すほどこれが顕著になりますので実験してみてください。
基本的にOHから聞えてくる定位と単体のハイハットの定位を同じくらいにするとクッキリした感じなります。OHの音を無視出来るレベルの小ささで使う場合はあまり気になりません。
次にイコライザーです。
ハイハットはロック系の曲のように攻撃的にギラギラさせたい場合と少し丸みを付けて主張し過ぎないようにする場合がありますが、元音がどういう感じなのかという事は大前提になるものの、丸みを付けたい場合は妙に出っ張っている周波数をカットしたり、高域を削っていくことで主張し過ぎない感じにしていくことが出来ます。
ハイハットに丸みを付けた処理。
これはかなり大げさに丸みを付けた処理です。
逆に攻撃的にギラギラさせるなら下のようなアプローチがあります。
ギラギラさせるハイハット
そもそもハイハットは何もしなくても金物特有のギラギラした音であることが多いのですが、ロック系の場合は元の音が多少籠り気味な場合に広めのQで4kHz~6kHzを持ち上げることがあります。
かなり極端にやっていますが、やり過ぎると耳に痛い感じなります。
Q幅が狭いと音像が崩れていくのですが、逆にQ幅が広すぎても低域のないハイハットはほぼ全部の帯域が持ち上がることになりますので、ほどよく広いQ幅を探してみましょう。
低域にキックなどの被りが強い場合やフロアノイズなどの混入が多い場合は適度にHPFを入れることもあります。
未処理のMP3はこちらです。
丸みを付けた処理のMP3はこちらです。
ギラ付かせた処理のMP3はこちらです。
丸みのあるMP3は如何にもミックスで処理したという印象のハイハットですが、曲調が可愛い感じだったり、バラード調の場合はある程度まではハイを抑えないとキンキンし過ぎて曲に合わない場合があります。この辺りは完全に好みの問題です。
まとめとしてはポイントはハイハットとOHの定位を揃えてボヤけない(広がらない)ようにすることと、その曲にあったイコライジングカーブをちゃんと作れるかどうかです。
EQは必ずしも必要というわけではなく、元々が好みの音の場合は何もしない場合もありますし、コンプでダイナミクスをある程度まで調整することもあります。
⦿ライド
HHとは逆の位置にパンニングします。
普通一般のドラムセットの配置ではハイハットを左ならライドは右側にありますので、ハイハットと逆の位置に定位させるのが普通ですし、OHのマイクにもそのように音が入ります。
OHを単体でよく聞いてライドの定位を確かめ、同じくらいの位置に単体のライドをパンニングします。
ライドをクラッシュのようにアクセントとして使うこともありますが、基本的には刻みを担当することが多く、従って処理の方法もハイハットにおける手法をそのまま踏襲することが多いです。
ライドの処理
ここでは適度にEQを入れています。
まずこのライドトラックには意外と低い成分が多いので左右に振ったときにほかの低域楽器を邪魔しない目的でHPFを入れます。
あとは直接スティックが打撃する帯域の500Hz付近とギラギラ感をコントロールする7000Hz付近を多少カットしています。
ギラギラ感はやはり4kHz~6kHz辺りなのですが、今回のライドはちょっと高めの音が気になったので7kHzあたりをカットしています。
⦿クラッシュ
クラッシュはBFDのものを使うことももちろんあるのですが、BFDとは関係のないサンプルの波形をそのままDAWに貼ったり、BATTERYなどのサンプラーで使うこともあります。
Stanton Moore Cymbalsのようにシンバル専用の追加パックまであるBFDの拘りようですが、以外と「これだ!」と思えるクラッシュを探すのは大変だったりします。
毎回毎回同じ音なのも問題ですが、お気に入りのクラッシュ波形と出会えたらそれを幾つかストックしておくのも個人的にはお勧めです。
今回は元々のBFDのプリセットのものを使うのが趣旨なのですが、収録されている音はやや籠り気味というか薄い膜があるような音でシャキシャキしない印象なので多少EQでクッキリさせてみます。
クラッシュのEQ処理(大げさにやっています)
同じ金物系ということでハイハットと考え方は通じるものがあります。スティックが直接当る打撃音と妙なピークを抑えつつ、金属的なギラギラ感や空気感を付加したいというのが趣旨の処理です。
コンプで迫力と奥行き調整
迫力と(単体で聞くとわかりにくいですが、全体の音像の調整という意味で)奥に持って行くためにコンプを掛けています。アタック最速、リリース50msくらい、レシオは一般的な4:1です。
GRが4~6dBくらい掛かるようにしています。
この辺りは完全に好みでコンプで多少詰まった感じにしたり、アタック感を強調したりすることも出来ますが、キックやスネアと違ってクラッシュに対して積極的に音作りをすることは個人的にはあまりありません。
未処理のMP3はこちらです。
処理済みのMP3はこちらです。
元々の音は薄い膜が掛かったような感じは処理を行うことでクッキリした感じにはなりますが、やはりクラッシュはこのように色々弄って良い音にするよりも最初から良いサンプルを用意したほうが良い結果になるというのが個人的な経験です。(どんな楽器でもそうではありますが)
叩き方、叩く位置、素材、マイキング、録音機器などによるのでしょうが、芯のある音色、高域の伸び、美しい響きなど様々な要素において好みのクラッシュの音を探すために色々な音源やサンプリング素材を漁ったりしています。
基本的には常時鳴るものではありませんし、ほかの楽器との被りも特段気にするような楽器でもありませんので、クラッシュだけBFD以外から持ってきても極端に違和感を感じるような結果になることはないはずです。
また必ずしもローファイなものが悪いというわけではなく、HIPHOPのような曲調なら敢えてローファイな音にするくらいですから、結局は好みの問題に帰着する部分でもあります。
次回に続きます。
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