彼がいなければ生きてゆけない。

それと同時に、

彼さえいなければ自由になれる。

そんな相反する思いが私を惑わしてゆく。


『愛なんか』より。 唯川 恵 氏著


随分前に読んだ本だけど、

とても印象深かった小説のひとつ。


あとがきに書かれていた、

『愛なん』じゃなく、

『愛なん』との、

題名についての件も、興味深く読んだ覚えが有る。


そして、同じ思いを、私自身も経験した。


彼がいないと、きっと私は死んでしまう。


恋焦がれて、今の付き合いを決めてから、

私の全ては彼だった。


彼がいないと、生きてはゆけない。


本当にそう思っていた。


でも、時間を重ねて、

少しだけ、自分を取り戻した頃、思った。


彼に出逢わなければ・・・・。


彼さえいなければ、

私はもっと、自由になれるんじゃないか?・・・・と。


今は、そのどちらも、当てはまらない。


彼がいなくても、私は十分生きてゆけるし、

彼さえいなければ・・・・とも、思わない。


でも、だからこそ、思う。


彼の存在は、

私にとって、かけがえのないものだと。


ひとりでも生きてゆける私が、

心から欲しいと思う、彼との時間は、


駆け引きの無い、宝物だし、

何物にも変えられない、大切なもの。


それはきっと、これから先も変わらないと思う。