旦那さんが階下に降りてから、1時間以上過ぎて、

好子ちゃんが帰るのが分かった。


私は、また部屋にやって来られ、

話の結果を告げられるのがイヤで、

電気を消して頭から布団を被って、息を殺した。


でも、その思いは杞憂に終った。


旦那さんも義母も、各々の部屋に戻って行った。


翌日の夕食は、私の仕事が遅かったせいもあり、

私が帰宅すると、既に終っていて、

ホッとしながら独り食べたのを、今でもはっきり覚えている。


結局彼女は、私との付き合いをやめたくない。

折角友達になれたのに、こんな終わり方は寂しい。


自分の悪いとこは直す様にするから、

どうか、今まで通りでいて欲しい。


と、切々と訴えて帰ったと、

旦那さんが独り食事をしている私の元にやって来て言った。


必死で彼女を擁護する旦那さんの様子が、何だか可笑しくて、

私は、もう良いや・・・と、思った。


私自身、この3人が仲良くしててくれれば、

自分のしたい事を出来る時間が、持てるかも知れない。


利用される振りをしながら、私が利用すれば良いんだ。


割り切って付き合っていこう。と、決めた私は、


「もう、分かったよ。

結局は、私が付き合いを辞めるって言っても、

オーちゃんたちは反対するんやろ?

もう、こんな事で頭使うのイヤやし、今まで通りで良いよ。

けど、次また彼女が豹変したら、その時はきっぱり断るからね。


それと、もう少し距離を置いた付き合いを心掛けるから、

そのつもりでいてな。」

と、旦那さんに言った。


旦那さんは、

「分かった。そしたら、やーちゃんから

その事彼女に話したってな。

心配してるやろうから早めに言うたってくれるか?」

と告げ、自室に戻って行った。


遅くまで仕事して、独り夕食を食べている私には、

労いの言葉すら掛けないのに、

好子ちゃんへの心遣いは完璧に出来るんだ・・・・と、

思うと、本当の邪魔者は私の方に思えた。


でも私の性格上、いつまでも嫌な事を引っ張る事は出来ず、

その日の内にメールを送った。


電話を架けるには遅すぎる時間だったのに、

そのメールに直ぐ彼女から電話が有った。


自分は、弥生ちゃんみたいに上手く文章で

気持ちを書けないからと、彼女は言った。


私はもう一度、旦那さんに話した通りの事を告げ、

疲れてるからと、早々に電話を切った。


彼女は短い電話の間に、何度も『ごめん』と言う言葉を使っていた。


余りに簡単に出て来るその言葉が、反って嘘臭く聞こえ、

私はもうそれ以上話を続けたく無くなったのが、本心だった。


翌日、彼女との結果を旦那さんと義母に告げると、

2人とも、心から安心した・・・と言う、表情をした。


それからまた、私の本心とは違うところで、

家族ぐるみの付き合いが続いている。