何時にドアを開け、何時にお風呂に入り、
何時に眠ったのか、覚えていない。
ただ、気が付くと携帯を握り締めたまま、ソファに横たわっていた。
リビングはひっそりとし過ぎていて、
私は自分の泣き声に目が覚めた様だった。
寝室からは旦那さんのいびきが、薄っすらと届いていた。
私は、自分の頬が涙で赤くなっているのに気付き、
顔を洗いに洗面所に行った。
時計は、4時20分を指している。
眠ったのか、眠れなかったのかすら分からなかった。
私は静かにキッチンに行き、好きなアールグレイのミルクティを淹れた。
喉を通るミルクティは、熱く私の心に染みた。
もう一度ゆっくり、考え様と思った。
何故、別れて数分で○モードに繋いでいたのか?
私の家の近くに車を停めたままだったのか?
そう言えば、逢った時少し変だったと、今更ながら思い出したが、
それでも納得の行く答えは見付からない。
まさか、ヨウに限って、
他の女の人とメールなど、してはいない筈だと信じていた。
彼の携帯は私の名義なので、請求がはっきり分かる様に、
通話記録と、○モードの通信記録も取っていた。
でも、内容は見ずにそのままいつもヨウに渡していた。
(旦那さんのパケット料金が以上に高かったので、
全部の通信記録を当時は取っていました。)
次の請求書が届いた時には、1度目を通してみようと思ったが、
それまでは確かめ様がない。
ヨウに聞けば済む事だったが、もし、聞きたくない答えだった時、
私の心は壊れてしまうと思うと、途轍もなく恐かった。
旦那さんに裏切られて、気が変になった頃の事が、
一瞬にしてフラッシュバックした。
ヨウに限って・・・と、思う心と、
ヨウも男なんだから・・・と、思う心が交錯していた。
私は携帯を開き、ヨウにメールをした。
洋介さんへ・・・・。
(いつもと違う表題で、きっとヨウは私の異変に気付くだろう。
と思っていた。)
今日はお誕生日祝ってくれて有難う。
ヨウの車が見えなくなってから、
マンションの踊り場で電話を架けました。
でも、お架けになった番号はただいまパケット通信中です。って、
アナウンスが流れました。
別れて数分なのに、何故?って思いました。
誰かからメールが来ただけなのかな?って思って、
何回も架け直したけどずっと同じアナウンスでしたよ。
何故?って、聞けば良いのかも知れないけど、
今は少し距離を置きたいと思います。
これが、11月15日じゃなければ、
ここまで嫌な気持にはならなかったと思います。
でも、今はとても話をする気になりません。
メールも電話も暫く拒否します。
私の気持が落ち着くまで、時間がどれだけ掛かるか、
正直、私にも分かりません。
さようなら・・・・・。 弥生
私は、2回に分けてメールを送った後、直ぐに着信拒否をした。
私は最後の言葉にあえて『さようなら』と括った。
ヨウはこのメールを、多分後1時間もしない内に見るだろう。
そして、直ぐにメールを送ってくるだろう。
でも、メールは送れない。
次にはきっと、私が事務所に着くだろう時間に、電話を架けて来る筈だ。
でも、電話も繋がらない。
その後どう言う行動に出るかまでは、私には分からない。
連絡を取る事をあきらめてしまうかも知れない。
そうなったら、終わってしまう?との不安が、頭の半分以上を占領していたが、
それならそれでも良いと思う自分もいた。
旦那さんに裏切られ続け、私は何処か裏切られる事に
慣れてしまっていたのかも知れない。
ヨウだけは絶対に私から離れていかない・・・・と、思っていた
さっきまでの私が、頭の中から消えて行こうとしている。
私は携帯を閉じ、もう一度眠ろうと、今度は寝室のベッドに潜り込んでいた。