大好きな大好きな洋へ
もう眠ってるね。
明日は初めて日曜日のデートだよ。
何処に行こうかな。
楽しみにしながら今日は眠るね。
じゃあ、明日。
大阪に着いたら1度メールしてね
愛してるよ 弥生より
メールを送り、携帯をバッグに仕舞った。
時計を見ると既に3時前だ。
早く帰らなきゃと、ママに帰る合図で、胸元で指をクロスさせ×と記した。
旦那さんはまだまだ飲み続けるようだった。
家までは歩いて直ぐだが、独り歩き、帰るには遅過ぎたので、
結局、私はタクシーを呼んで貰った。
翌朝、一旦6時には目が覚めたが、旦那さんは帰っていなかった。
私は広いベッドで抱き枕を抱え、もう1度ゆったりと眠りに落ちた。
夢を見たのだろうか。
それとも自分の不安定な思いが、
現実と交差させて夢を作り上げたのだろうか・・・・。
父と、義母と、旦那さんに詰め寄られて、泣いている自分を見た。
音声の壊れたTVのようだった。
3人は鬼の形相で、口をパクパクしている。
何を言っているのかは分からなかった。
胃酸が胸にまで込み上げてくるのを感じ、再び目を覚ました。
5分程の映像だった筈なのに、時計を見ると7時を回っていた。
ドヨンとした身体と、それ以上に重い心をよいしょと持ち上げ
バスルームに向かうと、玄関の鍵の音がした。
私の心とは真逆の、陽気な旦那様のお帰りだった。
「お帰り・・・」沈めた声で旦那さんを迎えた。
「・・・・・」もう何を言っているのか、判断不能だった。
背中を押しながら寝室まで誘導すると、旦那さんは、
ドタンと、砂袋が落ちる様な鈍い音と共に、ベッドに落ちて行った。
私は静かにドアを閉め、バスルームに向った。
温め目のお湯を溜めたバスタブに頭から沈むと、
母の胎内に抱かれている様な安堵感から、涙が溢れて来た。
ヨウ・・・・。
心の中で呟く。
この家はもう壊れてしまった。
壊したのはきっと私なのだろう。
キッカケは旦那さんだったのかも知れない。
でも、最後のトドメを刺したのは、誰でもない、私だ。
私が今守りたい物は、家庭と言う器ではなく、
ヨウとのこれからだった。
それが間違いであっても、もう止める事は出来ない。
反対に、仮面を被り続ける覚悟は、しっかりと出来ている。
ドライヤーを当てた髪が乾いていくのと同時に、
私の家庭への思いも乾いていく。
出て行けと言われたら、黙って出て行こう。
独りになる事は、恐くは無い。
ヨウと逢えなくなる事を引き換えに出来る物など、何も無いのだから。