2000年9月29日(金曜日)


昨日別れる時には、普通にまたね^^と言ったのに。

別れ際には、また体に火が点く様な、深いKISSを交わしたのに。


「愛してるよ。お休み。」

と、部屋のドアを閉めるまで、私を見送ってくれたのに。


何故?たった数時間しか経っていないのに、何が変わったの?


私は、いつもの時間に届くヨウからのメールが届かない事で、

朝から何も手に付かずにいた。


もしかしたら、疲れて眠っているのかと思い、

6時まで待ってメールを送った。


10分経っても返信が無い。

また、送る。また10分経っても返信が無い。


何度同じ事を繰り返しただろう・・・・。

まるでストーカーの様な気持になった。


会社に出て、思い切って自宅に電話をした。

冷たい機械声のメッセージが流れる。


思わず、ヨウ!!って叫びそうになるのを辛うじて堪え、

受話器を置いた。

奥さんが帰って来て、聞かれては困る。

別居中とは言え、鍵は持っていると言っていた。


私は、パソコンからFAXを送る事にした。

会社用のFAX用紙に、慇懃な文章で連絡が欲しい旨を打ち込み、

送信した。


もし、他の人が見ても仕事の連絡だと思える様に、端的に。


出来る事なら飛んで行きたかった。

今日は尼崎で仕事だと聞いている。

ここからなら車で1時間も掛からない。


それでも、月末前の私の仕事は忙しく、

午後からは和歌山に行かなくてはいけない。


何故?連絡がないの?

私はどうやって和歌山と事務所を往復したのか覚えていない。

そして5時前に事務所に戻った時、兄が言った。


「安達君から電話があったで。なんや、携帯が壊れたそうで、

090*****に架けて欲しいって。

仕事の仲間の携帯らしいよ。」


長かった半日分の12時間が一瞬にして解決した。


私は自分の携帯を手にし、席を外した。


きっと今、ヨウの声を聞くと泣いてしまう。

私にとって、この12時間は長過ぎた。


ゆっくり携帯のボタンを押した。


「もしもし・・・」ヨウの声だった。

見ず知らずの携帯に架けたのに、いきなり大好きな声が耳に落ちる。

私は、もしもしと言うありきたりな言葉を忘れてしまっていた。


「バカ・・・・」聞こえただろうか?

鼻の奥がキーンと鳴る。


「ごめんな。弥生。心配したよね?」

ヨウの声が私を包み込む。


「何で?どれだけ心配したか分かる?こんなの、もうイヤだよ。」

「ホントにごめん。携帯な、壊れてん。急に、電源入らん様になって。

弥生の携帯の番号、家に帰らんと分かれへんし。

NTTで会社の番号調べて電話してん。

お兄ちゃん、怒ってなかったかな?」

ヨウは、自分との事で兄が怒っていないか、心配だったのだろう。


「それは大丈夫やけど、何で私の番号覚えてないん?」

「だって、弥生は短縮に入れてあるから。

ごめん。俺、あほやからそんな長い番号覚えてられへんもん。」

「ホントに!!あほなんやから。私なんか、ちゃんと覚えてるのにさ!」

私はここぞとばかりの憎まれ口をきいた。


「ほんじゃ、言ってみ。俺の番号。」

「うん。あのね・・・・。短縮の1番^^」

「偉い!!って、ちゃうやんか^^。おもろい奴やなぁ~」

漫才のような会話が続いたが、

私は本当に泣き出しそうな位の安堵感で一杯だった。