ヨウは私を背中から抱き、何か囁いた。
「何て言ったの?」私の問いに答える代わりに耳たぶを噛む。
「俺が欲しい?」
今度はちゃんと聞こえた。
「うん。欲しい。このままじゃ帰れないよ。」
哀願する声は、泣き声になる事を私は初めて知った。
「このまま、事務所に行っても大丈夫?」
私は頷き、事務所の鍵をヨウに渡した。
1日締め切った部屋は、空気が澱んだまま私たちを迎えた。
ガラス戸を開け、入り口に掛けてある姿見の前でヨウが止まった。
私のTシャツを剥ぎ取り、白いGパンを上手に脱がせた。
私の背骨をなぞる様に体を密着させたまま、鏡越しに私を攻める。
「ヨウ。恥かしい。奥に連れてって。」
私は鏡に映る自分の口元で、自分の発した言葉を知る。
「駄目」甘い声で冷たく言い放つヨウは、
既に自分自身を持て余しているのが分かる。
「このままここでしよう。」
「嫌だよ。恥かしいよ。」
「嫌じゃない」
「嫌だ・・・・」頭を振ろうとする私をしっかり捕まえ、
熱いヨウの舌が私の舌に絡みつく。
力の入らない私の手を鏡に付かせ、
後ろからヨウがしっかりと繋がろうとする。
私の体は、ヨウに合わせて変化していく。
まるでひとつになる事が決められているかの様に、
一分の狂いもなく、ヨウのカタチになっていく。
そのまま2人同じ所まで昇り、絶頂に達した。
去っていく波を、私たちはそれでもひとつになったまま感じていた。
ヨウの滴る汗と熱い愛を、私はゆっくり飲み込んだ。
「弥生。ごめんな。また無理させた。こんなん初めてやよね?」
「うん。初めて。だけど、嬉しかった。
今でもヨウが中で生きてるみたいで・・・。」
恥かしそうに口にした言葉を、ヨウは私の唾液と共に飲み込み言った。
「また、弥生の初めてを貰ったんやね。」
さっきまでオ・ト・コだったヨウは、子供の眼差しで私を捉えていた。