一緒に住み始めたのは築15年以上の古い文化住宅(大阪ではこう言います。)の2階だった。

駅から徒歩15分、6畳、4畳半、1畳程の台所。


それでもまだ、お風呂が付いているだけマシだった。


薄い壁に囲まれた古い部屋ではあったが、その頃の私たちには夢見心地のMYスイートホームだった。


毎日「おはよう」「おやすみ」が言えて、一緒にご飯食べて、一緒にお風呂に入る・・・。

今、その頃の事を思い出すと、不思議な気分になる。

いつ、私達の歯車が狂いだしたのか。

いいえ、本当は最初から合ってはいなかったのではないか?とさえ思える出来事が、次から次と向かい風の様に、まだ純粋だった私に起こり続けた。


最初の大きな出来事は、結婚して最初に迎えたお正月の直ぐ後だった。


私がいつものようにバイト先から帰ると、私より遅い帰りの筈の旦那さんが家にいた。

電気も点けずに薄暗い部屋に・・・・。


玄関を開けた私の顔を見るなり、

「仕事辞めて来た。」と言った。


やっと、少し生活が楽になり始めたところの晴天の霹靂だった。

(それから私は何度その霹靂を経験しただろう・・・。)


世間知らずの旦那さんは、すぐに失業保険が貰えて、その間に新しい仕事を探せば良いと軽い気持ちで考え、後先考えずに仕事を辞めていた。


でも、半年も勤めず、それも最初の3ヶ月は試用期間で、保険には掛かっていなかったので、失業保険など貰えるはずも無く、また私たちは貧乏の底に落ちていくしかなかった。


それでも親には泣き付かず、頑張った。


若かったんだなぁ~って、本当にしみじみ思える。。。。。


旦那さんはその後、私がバイトしていたオフィス街のレストランに、コック見習いとして働き始めた。

高校出の未成年、既婚、資格なしで手っ取り早くお金が貰えるのは、当時は水商売しかなかった。


それでも、会社に勤めているより手取りは高く、夜の帰宅が最終になる事を我慢さえすれば、生活自体は楽にはなった。


まだ付けていなかった電話も引いた。

オフイス街なので、日曜日は休みだったから、休日は一緒に過ごせた。


でも保険関係は一切無く、私が正社員で勤めて、保険を貰うしかなかった。

その時から私がきちんとした仕事に就かなければ、と言う思いで今まで働いて来ている。

(3度、転職はしましたが・・・・。)


そうして働き始めたお店で、旦那さんは最初の浮気をした。


結婚して3年目の春だった。