アパートに戻り、さっき買ってきたアイスとワインで映画を見はじめる。もう9時だ映画を見てそれからチュッチュして寝ることになるだろう。きっと泣かなくて済む。
これまでは泣きそうな気分になったら、彼に聞いてもらいたかった。
でも今回は話し合うのが怖い。何を言われるか聞きたくない。
映画で気がまぎれて2人の話なんてしなければちょうどいい。
いつもみたいにふたりでシングルベッドに寝転がって腕枕してもらう。
なんでもないこと話してるのにわたしの頭はいつか彼が居なくなる事がかき消せないで暗いまま。
彼が言うことに適当に返事しながら涙が溜まってくる。
腕枕の彼のTシャツの袖に涙を浸み込ませて泣いてないふり。
「泣いてるの?」
「泣いてないよ。」
反射的に背中を向ける。
ばれた。
もう泣かないはずだったし、泣きたくなかった。
「こっち向いて。なんで泣いてるか言って。」
もう泣かないと言ったくせにまた泣いてるわたしを少しも責めてない彼らしい優しい言い方。
帰りたい。
たいしてけんかもしたことのないわたしたち。ここで逃げるようにわたしが帰ったら?彼は止めるのかしら?もし止めてくれなかったら?怖いから落ち着くまでじっとしてることにした。早まるな、わたし。
時々涙が溢れる。こわい顔して固まってるわたしを見守る彼。
「なんで泣いてるのか話してみて。」
「いい。」
「じゃあ、俺が話してもいい?」
「やだ。」
またそっぽ向いて固まるわたし。深呼吸。気合でも入れなきゃ話聞けないよ。なに言い出すんだろ??
ワインをもう1杯ついで飲みほす。深呼吸。はぁ~。鼻かんで聞く準備。
「おいで。」
向き合って足を絡ませてすわる。ハグ。
抱き合ったまま彼が話し始める。もう避けられないみたい。聞こうじゃないか。
「ひとりじゃ決められないから一緒に考えて欲しい。もう俺は来年はバイクには乗らないと思う。そのあとどうしようか考えてた。終わったら地元に帰ろうと思ってたけどPIEと会ってるうちにもっと一緒にいたくなった。」
「Cutieはどうしたいの?オプションは?」
ひとりじゃ決められないなんて言っておきながら、本当は決まってるんじゃないかと思った。でもこう決めたからってわたしに言うだけじゃ突きつけてるようでかわいそうに思ったのかなんなのかそういう言い回ししただけではないかと思った。
「本当は地元に帰ってお父さんの仕事の手伝いしながらなにか別の事もできればいいと思ってたよ。それかこっちに残ってなにか仕事探す。なんだってできると思うんだよ。」
「なんでもできるのは知ってるよ。」
「なんで今日言うの?泣いたついで?」
「いつか言わなきゃと思ってたよ。」
「泣いたまま放っといてよかったの?」
「ずっと前からこうしようと思ってたことを女の子なんかの為に変えていいの?」
「え!?だめなの? いいよ。いいんだよ。」
「どうして欲しい?」
「わたしがひとつだけして欲しいことは、 ちゃんと自分で納得してどうするか決めて欲しい。」
「行っちゃってもいいよ。」
やっとの思いで言葉にはしたけどすぐに涙が追いかけてくる。
「そんなに強くならなくていいよ。」
「俺、PIEといると幸せだよ。これからも一緒にいられたらいいと思う。」
ギュッと抱き合って
「どうしたらいいんだろう?ただこうしていたいだけなのに。」
「そうだ、ふたりでどっかに行こう。」
「うん。それがいい」
「そうだなぁ。沖縄だ。沖縄に行ってなにかお互いに新しい仕事見つけてふたりで暮らすの。」
そうしたい。
こうしてわたしも彼と一緒に悩むことになった。そう簡単にどうするか決まらない。
わたしたちが一番重視したいポイントは?ふたりが一緒にいられる事?わたしが実家の近くを離れない事?彼がやりたかった事を思い通りやる事?プライオリティさえわからないよ。
ひとりの問題じゃないからって一緒に考えるように持ちかけてくれてうれしいよ。
交わした言葉のひとつひとつを思い出しながらここに書いてゆくDashboard Confessionalがとても似合うし心に響く夜でした。明日は数日ぶりに彼と過ごすよ。