テスト設計用ドキュメントの例 | 組み合わせテストケース生成ツール 「PictMaster」 とソフトウェアテストの話題

テスト設計用ドキュメントの例

テスト仕様書のフォーマットをどのようにするかは大きな問題です。テストに関するドキュメントについての標準規格に IEEE 標準規格 829-1998 の IEEE Standard for Software Test Documentation があります。この規格ではスクリプトテストにおけるドキュメントを総合的に網羅しており、現時点で最も優れたテストドキュメントの標準規格だと思われます。


この標準規格では、以下の8つのドキュメントを定義しています。


・テスト計画書

・テスト設計仕様書

・テストケース仕様書

・テスト手順書

・テスト項目移管レポート

・テストログ

・テスト不具合レポート

・テストサマリレポート


このうち、テスト設計に関係するドキュメントは以下の3つです。


・テスト設計仕様書

・テストケース仕様書

・テスト手順書


IEEE 829 標準規格では、必ずしもすべてのドキュメントを作成する必要はないとしています。わたしたちのチームでは、テスト手順書の内容はテスト設計仕様書とテストケース仕様書で記述されているので、テスト手順書は作成していません。テスト設計仕様書とテストケース仕様書をまとめて「テスト仕様書」と呼びます。


IEEE 829 標準規格の詳細については、日経BP社の「体系的ソフトウェアテスト入門」や、同 「はじめて学ぶソフトウェアのテスト技法」などの書籍に明記されています。ただし、各ドキュメントの概念的な説明だけで具体例などは書かれていません。


この記事ではわたしたちのチームが使用している実際のテストドキュメントの例を示します。ここで示すドキュメントはオフィスなどで使われる大型のビジネスホンシステム(512台までの内線電話機を収容可能)を対象とした総合テストで使用したドキュメントです。


ドキュメントはすべてExcelのワークシートを使用しています。最近のビジネスホンシステムは新しい通信媒体や新しい通信端末の登場で機能が増加し、数百の機能を備えています。テスト用ドキュメントは機能ごとに1つのExcelのBook(ファイル)にまとめられています。全体として数百のExcelのBookが存在します。


テスト技法に「要因組み合わせテスト」を採用したテスト項目がある場合は、組み合わせ作成ツール MTG のBookを利用します。1つのBookはテスト設計仕様書として1つのワークシートがあり、続いてテスト小項目ごとに1つのテストケース仕様書のワークシートがあります。MTGのBookを利用したものには組み合わせテストを採用したテスト項目ごとにMTGのワークシートが存在することになります。


テスト項目の分類は、機能ごとに大項目・大項目のなかの中項目・中項目のなかの小項目、となっており、小項目はさらにいくつかのテストケースで構成されています。

それでは最初に一例として「個別保留・転送」機能に関するテスト設計仕様書を示します。


多種類テストケース生成ツール MTG (Multi type Test case Generation tool)-テスト設計仕様書



この例では、「D-01 個別保留・転送」が機能名称であり、大項目に相当します。これを単位として1つのExcelのBookを構成します。この機能のテスト設計仕様書はワークシート名が「テスト仕様D-01」となっています。この機能についてのテストケースの件数が339件であることが左上の集計欄から分かります。


テスト設計仕様書のワークシートは、項目番号(中項目)と細目番号(小項目)とから成り立っています。このワークシートには、テスト小項目ごとにテスト操作欄、確認内容欄、参考欄、そして「機能説明書との関連」欄があります。

機能説明書との関連」欄には、そのテスト小項目が機能説明書のどの記述項目の部分についてのテストなのかを記入します。この記述があるおかげで、そのテストで確認しようとする機能の詳細が分かり、テスト内容の意味を把握する上で参考になります。


参考」欄には、そのテストを実施するために必要なテスト環境について記述します。具体的にはシステムのデータ設定項目とその設定値などです。ビジネスホンシステムは、このシステムデータの設定内容によって、さまざまな機能がどのように動作するかを指定するようにできています。システムデータの種類には膨大な数があり、テスト担当者がテスト実施時に独力で設定項目を把握することは困難な場合が多いため、テスト設計時に設定すべきデータ項目とその設定値を調査し、明記しておきます。


テスト操作」欄には、そのテストで行なう操作を順番に箇条書きで記述します。「チェックシート」とあるのは、テストケース仕様書のワークシートのことです。


確認内容」欄には、テスト操作欄の番号に対応する形で、その操作を行なったことでどのような結果となるかを箇条書きで記述します。確認内容欄の記述どおりの結果となればテストはOKとなります。


次にこのテスト仕様書の「テストケース仕様書」の一例を以下に示します。


多種類テストケース生成ツール MTG (Multi type Test case Generation tool)-テストケース仕様書


このテストケース仕様書(チェックシート)には67件のテストケースのあることが左上の集計欄から分かります。この例ではテスト技法に「要因組み合わせテスト」を採用しており、このワークシート(1-1)のテストケースはMTGが生成したものです。そのMTGのワークシートは「要因1-1」というワークシート名のシートです。8行目には10個のパラメータ欄があり、列 L、M、N には、そのテストケースで使用した端末、回線など、リソースの具体的な番号を記入します。その右側に、合否欄、確認者名欄、日付欄、テストに使用したソフトウェアのバージョンを記入するバージョン欄、障害が検出された場合に、発行した障害票の発行番号を記入する障害票欄があります。


次にこのテストケースを生成したPictMsterのワークシートを以下に示します。


多種類テストケース生成ツール MTG (Multi type Test case Generation tool)-組み合わせモデル


このワークシート(要因1-1)で、左上の「D-01 個別保留・転送」が大項目名であり、大項目No. が中項目の番号、小項目No. が小項目の番号に相当します。


以上のようにExcelベースでテスト仕様書を作成することにより、MTGのワークシートも含めてテスト設計仕様書とテストケース仕様書をまとめて1つのファイルで管理することが可能となります


さらにはすべてのテスト仕様書についてExcelの関数を駆使することで、1つのテスト進捗状況管理用のファイルで大項目ごとの進捗状況を把握することが可能となります。あとは工夫次第で1日ごとのテストケース消化件数、テスト担当者別の消化件数など、さまざまな情報を収集し、グラフ化してビジュアルに表示することも可能です。


VBAが使える人ならさらに自由にカスタマイズが可能となります。テスト仕様書をExcelで作成することでテストプロジェクトにカスタマイズした使いやすい管理ツールを比較的容易に作成することができます。