QPフレア回復システム

 

トランポリン北澤がいつになく神妙な面持ちで言った。

 

「おれ、みんなの話聞いてて思ったんだけどさ。。。

おれはみんな程ストレス感じるタイプでもないし、

みんなそこまでキツイのかーって思ってたんだ。

特に印象に残ってるのが、

『良いことあったとしても、地獄へのフリにしか思えない』みたいなこと誰かが言ってたと思うんだけど、

今おれさ、チョコレートパフェ食べてるじゃん?

今、おれ、このチョコレートパフェ、凄く美味しいんだ。

幸せなんだ、今この瞬間。

でさ、明日地球に隕石が落ちてきて、みんな死んじゃったとしてもさ、

今、このチョコレートパフェが美味しいってことは揺るぎようがないし、

幸せだったことも確かじゃん?

だから、良いことは良いことじゃん」

 

水色くんが言った。

「その話したのおれなんだけどさ、

おれが言ってるのって因果関係なんだ。

今の話で言うと、チョコレートパフェと隕石は関係ないから、

『あー、昨日のチョコレートパフェ美味しかったなー』って思いながら死ねる。

それはたしかに、そう。

おれが言ってるのはさ、そのチョコレートパフェに毒が盛られてたら、とか

そういうことでさ、、、、、

だとしたら話が変わってくるだろ?

その瞬間は美味しいけど、それによって死ぬわけだから、天国から地獄じゃん。

美味しいものに目が眩んで死んでしまったってことだからさ」

 

「あー」

 

里崎くんが言った。

「でもさあ、この世にこんな美味しいチョコレートパフェがあるのか、こんなに美味しいんだったら死んでも構わない。

おれの命以上の価値を宿している。

ってくらいのチョコレートパフェだったら、またそれも変わってこない?」

 

それを受けて、トランポリン北澤が言う。

「あー、まー、たしかに。

そんなにも美味しいチョコレートパフェだったらさ、

ひと口食べた瞬間、美味しすぎて死ぬんじゃない?

どっちにしろ死ぬってことじゃない?」

 

水色くんが言う。

「あー、たしかに。そうかもな。

だとしたら、毒もクソもないな。

毒入りチョコレートなのに、

毒がまわる前に、美味すぎて死ぬってことになるよな」

 

里崎くんが言う。

「毒関係なくなるね。

毒が入っていようが入っていまいが、

美味しすぎて死ぬんだから」

 

「毒でも死ぬし、美味しすぎても死ぬってことか」

 

ライチくんが言った。

「今の話聞いてて、ふと思ったんだけどさ。。。

好きな音楽ってあるじゃん?

おれさ、好きすぎて、聴きたくなくなるんだよね。

たまにしか聴く気にならない。好きすぎて。

なんでなんだって思ってたんだけど、

今の、美味しすぎて死んでしまう感じになんか似てるのかなって思って」

 

 

テルミンくんが言った。

「じゃあ、これは? 

テレビとかYoutubeとか観てる時、

面白いことを誰かが言ったら、笑うの通り越して、

『カッケーーー!!!』ってなるんだ。

これも、チョコレートパフェが美味すぎて死ぬ感覚に近くない?」

 

 

「追い越していってる感じかな」

 

 

トランポリン北澤が言う。

「こういう感じの現象を、『チョコレートフレア』。。。

イヤ、『チョコレートパルス』。。。

イヤ、『フレアパフェ現象』こういう感じで呼ぼうか」

 

木田さんが言った。

「なんて呼ぶかは、今はどうでもいいじゃないですか」

 

 

「エーーーーーーーーー!!!???

そのためにみんな集まってんじゃないの???

じゃあコレ何の会なんだよ。

なんでココにいるんだよ」

 

 

クレオパトラ尾関が言った。

「たしかに、たしかに。

トランポリン北澤くんの言う通りだ。

というか北澤くんの発言に寄り、鬼ストレス解放祭りにとりあえずは終止符を打てた。

まだ言いたそうな顔をしている人もいるが、

あのまま言ってもネガティブがエスカレートし、みんなさらに暴走し、混沌としていくだけだと思っていたんだ。

その空気を緩和してくれた。だいぶラクになった。

少なくとも私は救われた」

 

トリムネ肉ゴンゾウが言った。

「たしかに今日は、トランポリン北澤くんに救われた。

ぼくはキミを初日からずっと、なんとなく、

ホントになんとなくなんだけど、なんか本能的に、

みくびっていた。

キミは軽率な発言をし、早い段階で銃で撃たれた。

しかし、コンドリア博士の紫色のジュースで生き返ったり、

なんとなく場を和ませ、ほんわかさせてくれる。

居てくれるだけでなんか、ホッとさせてくれる存在だ。

キミにそんな気はないのだろうけど、いい活躍をしている。

そして、これからも、いい活躍をしてくれそうな気がする。

思い切って、キミを副キャプテンに任命しよう!」

 

トランポリン北澤が言う。

「光栄です。

多少荷が重いですが、任命されたからには、

みんなが安心して任せてもらえるように、全力を注ぎます」

具体的に何をすれば良いんでしょうか?」

 

「特に今までと変わらないよ。

ただ、副キャプテンってだけだよ」

 

「え、まとめ役のオリ・ハルコンさんが風邪など引いた時の代打とかですか?」

 

「全然そういうのじゃないよ。変な解釈しないでくれ。

ただ、副キャプテンなんだ」

 

「今までどおり、変わらず、トランポリン北澤でいてくれ」

 

「キミは今から、ただただ、副キャプテンだ」

 

「副キャプテン北澤の誕生だ!!!

今日は食べて、飲んで、音楽聴いて、唄って踊って、楽しみましょう!」

 

「キミをフレア北澤か、パルス北澤と呼びたいくらい祝福したい気持ちでいっぱいだ」

 

「キミこそ真の副キャプテンだ!!!」

 

「キミこそ相応しい。これ以上副キャプテンに適任な人はトランポリン北澤以外あり得ない」

 

筋肉ムキムキのイカつい人が言った。

「とりあえず、胴上げじゃーーーーーーー!!!!!」

 

「トランポリン!トランポリン!

 トランポリン!トランポリン!」

 

 

鬼ストレス解放祭りから一転 、

トランポリン北澤 副キャプテン任命パーティーへ。

宴は朝まで続いた。

 

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つづく

 

 

 

 

 

 

 

「おれ、本当はさ、毎秒気分が滅入ってて気分が悪くて、立ち上がることさえ、ギリなんだ。

全く笑う気になんてならないし、どっちかというと、なにやっても全体的にアホらしいんだ」

 

「マジでヤダわ、生きることはあまりに辛い」

 

「おれはこのまま醜態を晒して、恥の上塗りをして、

なんか違うよな、なにもかも違うよな、

と思いながらも、でも黙って座ってるのも苦痛だから、

何かやってしまって、ただそれを繰り返していくだけなんだ」

 

「希望なんかあるわけねぇ。良い事あったとしても、ぬか喜びで、地獄へのフリにしか思えないんだ」

 

「面白いとか、笑うどころじゃないんだ。

悲しみ、憂鬱、切なさ、やり切れなさ、疎外感、嘘っぽい空気、納得いかない感覚。

わからない不安感。わからない恐怖心。なにかが怖い。

何もかも怖い。人が怖い。自分も怖い。

ちょっとおかしなテンションになって、あれ、なんか大丈夫かもって眠りについて、

気分が悪くて目が覚めるんだ。

寝てる間に何かが起こってるんだ」

 

「なんの自信も確信もねぇ、常に手探り。自信満々のヤツにたまに出くわすと、吐き気すら覚えるわ。なんか、そういう宗教か、自己催眠、自分で洗脳してんのかって思うわ。

そういうヤツは自分が的外れにも関わらず、自分を疑わず、刺さらない言葉だけを吐き出して、

嫌悪感こそ感じるが、魅力を感じたことは一切ないな。

だせぇな。必死か。

違和感とか罪悪感とか感じないんだろうか。

子供や動物、昆虫の方がよっぽど立派だよな。

誰かの粗探しをしてダメ出しして、

おれの方が凄いって、中身空っぽのハッタリをかます。

ビッグマウス。口だけ大将。

実力と言葉が合ってなさすぎるわ。

お前ごときがなにほざいてんだ。

口もぎてぇわ。誰が誰に言ってんだ。

Mr.的外れ。アホらしい。クソだな。やってられん」

 

「あー、おめーらいいな。楽しそうで、

おめーらいいな、勘違いの解釈して、

楽しんだもん勝ちとか、アホみたいな浮わついたセリフ吐いて、はしゃいで、

自分よりだせぇヤツが見てたら余計はしゃいで、

自分よりはしゃいでるヤツがいたら競り合って、

冷めきったヤツが見てたら萎縮して」

 

 

「おれは悪くない、おれは間違ってない。そんなん知らん、どうでもいいって、

半分切れ気味で強引に消化して。

逆に面白いわ。滑稽。間抜け。

空っぽ。ハハハ」

 

「どんな解釈してるんだろうな」

 

「とにかく生きてても面白くねぇ。

これはそういう面白くねぇじゃなくて、

なんか、腹立つ、フェアじゃねぇ、納得いかねぇ、とかそういう言う意味のやつな!!!

みんな死ねカスども!!!」

 

「おれの場合は、なんつーか、圧力で押し通してくるやつが特に嫌いだな。

で、やり合うのもめんどくさいから、弱者のフリして、

あ、すんませんってやるんだ。

でも、あとあと思い出して、腹立ってきて、ぶち殺すって、眠れなくなるんだ。

ジャイアンとジャイ子に殺されるわ」

 

「押し付けがましいヤツも嫌いだわ」

 

「あと無神経に、引くわー、とか言って自分を守ってディフェンスしてるだけのヤツとかもな」

 

「あと偽善とか、しょうもない駆け引きとか、どっちもたいして変わらんだろって。

どっちもしょうもねぇ』

 

「まあ世の中の全部だな。居心地悪いわ」

 

「いわゆるリア充とか、うまくいってるヤツって、

なんかノーテンキでアホみたいだよな。

なんか嘘くせぇ。胡散くせぇ。

本質からもっとも遠い気がする。

ダメなヤツを反面教師にしてほくそ笑む。

賢いのかもしれんが、黒々しい笑顔を時々浮かべる。

で、おれは賢くて悪魔でしたたかだからいいんだ、ってその時だけ自分に都合良くやり過ごす。

おれはお前らより優れているからいいんだ。何が悪い?と。別に誰も悪いって言ってねぇし、なに顔赤らめ気味で強引に自己肯定してんだ? 必死か。

誰かの上に立たなきゃ死んでしまう病気なのか?

ダメなヤツと比べて安心というか、

対比として自信を高めてるというか。

まあ俗に言う優越感というやつか、

アホらしいわ。マジで」

 

「なにやっても気持ち良くねぇ。

なに言っても気持ち良くねぇ。

ピンとこねぇ。ピントが合わねぇ。

しっくりこねぇ。

だから迷うんだ。決断出来ない、後悔する、躊躇するのは、どれを選んでもアウトだからだ。

がんじがらめじゃねえか、クソ!」

 

「なんか、あずましくねぇ。

おれの縄張りを侵そうとするカス。

おれのテリトリーに土足で入って来ようとするヤツ。

バレバレの偽善者丸出し。

たかが知れてる必死の偽悪者。

怯えながらディフェンスしてるやからども。

引き笑いしてんじゃねーよ。

カウンターぶち込んで、再起不能にしてやるわ」

 

「あと、ひねくれ過ぎて、おかしい解釈して、逆ギレしてくるヤツとかな」

 

「あと人を疑いすぎるヤツも嫌いだな。そういうヤツってほとんど的外れだもんな。

自分にそういう部分があるからなんだろうな。

事実を捻じ曲げる。

ムダに疑われた本人の気持ちになれや!

どんだけ気分悪いか。

正直でいるのがアホらしくなるわ」

 

「あと、なんかあった時非を認めず開き直って、

面白くないのに、的外れに笑うヤツとかな。

なに誤魔化そうとしてんだ。ありえねっつーの。

死ね、クソみたいな笑い皺、汚らしい笑顔。

面白くねーって気づいてるんだろ?

猿みてぇだな。猿に失礼か。

今の場合は猿に罪はない。かたじけない、お猿さん。

猿の笑い方、みたいな笑い方よ。

まあ、ムカつく猿もいるだろうけどな、

今の話とは関係ない」

 

オリ・ハルコンさんが言った。

「みんな、相当ストレス感じながら生きてるのね」

 

「すべてがフラストレーションです」

 

「鬼ストレスです」

 

「鬼フラストレーションです」

 

今野さんが言った。

「そう、あまりにも面白くないから、この会で面白いことあればって、参加したんです。

面白くないのはぼくにとっては死活問題なんです。

退屈しのぎではないんです。

退屈なんてあり得ないんです。

常に苦痛で、存在してるのが苦痛で、和らげるために、

なにか良いこと、楽しいこと、安心できること、好きなこと、トキメキ、癒し、充実、面白いことが必要不可欠なんです。じゃなきゃ、呼吸するのも困難で、さらにまいってしまう。滅入ってしまう。死んでしまう」

 

「本末転倒でも構わない。不発でも構わない。

逆に面白くなくなり、今以上不快になったって構わない。

ド畜生。ぶち殺してやる。ぶち壊してやる。

どちらにしろアウトなら、どうやっても面白くならないのなら、やってやる。息の根止めてやる。

長い時間かけてじわじわ内側から崩壊じゃ」

 

「もともと死んでんだ。もともと終わってるんだ。

もともと地獄から始まってるんだ。畜生、やってやる。

今以上大怪我してやろうじゃねぇか、今以上大惨事になってやろうじゃじぇねぇか」

 

 

オリ・ハルコンさんが言った。

「今日は、なにも考えないで、日頃のストレスぶち撒けましょう。ネガティブ、タブー、本音、何でもありの日にしましょう。ってことで始めてみたけど、どんどん出て来るわね。まだまだ出て来そうね」

 

 

「あたりめーよ、すべてがヤダわ。

ヤじゃないように努力しても良くなってる気がしなくて、余計アホらしいわ。

でも何もしないのも苦痛過ぎるしな、気分が悪くて目覚めるから眠るのもこえぇし」

 

「『逆フレア』『逆パルス』とかでもないのかもな、

言葉考えるのもダリィわ。

じゃあ何でここに居るんだって、ガチの本末転倒だが、

それすら知らん。関係ねえ」

 

「ストレートにイヤでイヤで仕方ない。

  めんどくせぇよ、もう」

 

オリ・ハルコンさんが言った。

「そんなことないよ。そんなこと言わないで。

とか、今日は言わないわ。

だって現にそうだし、そんなことばかりだもんね」

 

トランポリン北澤が言った。

「でも、良いこともあるよ」

 

それを受けて誰かが言った。

「お前今までの聞いてたか!?わざと言ってるのか!?

そんなことわがってるじゃ!

アホか、イヤなことと比べたらそんなの皆無に等しいだろ。

取るに足らねぇよ。不毛だわ!

変なこと言うなよ。余計虚しいわ。

クソが!ぶち壊す!破壊あるのみ!」

 

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つづく