QPフレア回復システム -2ページ目

 

「今日はテレビ制作をしましょう。

マネーの虎のパロディーです」

 

「是非やりましょう」

 

なぜかこの日は不思議と一体感があった。

 

それぞれ役を決め、見切り発車で始まった。

 

 

「ノーマネーでフィニッシュです」

 

吉田D作が言った。

 

それを受けて、チャレンジャーの佐川さんが言った。

 

「ド畜生!来た意味ねぇ!!もう知らん!

右の社長から順番に思いっきりビンタしていく!!!」

 

バチコン!!!!!

 

「痛ぇ!想像してた四倍くらい痛ぇ」

 

バチコン!!!!!

 

「エグ!!!ここまで痛いとは!脳震とうをギリまぬがれている!!!」

 

右から三番目のジョセフ崎社長が言った。

「ちょっと待て!いくらだっけ?

あんなビンタ喰らいたくない!560万だっけ!?

出す!出す!ほらほらマネー成立!!!」

 

佐川さんが言う。

「始めからポンと出せや!エラソーに雰囲気醸しだして、

それっぽいこと言って、もったいぶりやがって!!!

なんだよ!始めからこうしてりゃよかったよ!

三ヶ月寝ずに考えてきたおれの計画はなんだったんだ!!!

畜生!なんか空しいぜ!!!」

 

佐川さんが560万円を手に、会場を出ようとした時、

吉田D作が言い放った。

「あなたがその560万を受け取り、ここを出、何に遣おうと構わない。

しかし、あなたの言葉は聞きずてならない。

来た意味がないだの、三ヶ月のおれの計画はなんだったんだなどと。

まだビンタを喰らってない左側の虎たちは、心底あなたにお金を出さなくて良かったと思っているでしょう。

あなたは最終的に560万円を掴んだ。

暴力で。腕力でねじ伏せた。

ビンタで掴み取った560万。

プレゼンで掴み取る560万。

ーーーーーーーーーー。

何か違和感を感じませんか。

それとも、こんな話は聞きたくないですか?

それならどうぞ、そのドアから御退場下さい。

 

佐川さんの足が止まった。

 

「D・・・作・・・さんーーーーーーー」

 

彼の目からはウロコという一粒の涙がーーーーー。

 

さらに吉田D作はつづける。

「その雫はやがて誰かの頭の天辺へと届き、

虹に変わり、その人の何かを変えるでしょう。

ぼくはそれを『虹色パルス』と呼びます」

 

小坂沢社長が言う。

「D作さん、なんて呼ぶかどうかは、今どうでもいいじゃないですか」

 

吉田D作が言う。

「どうしても、言いたかったんです。

前から考えてて、いつか言えるチャンスが来たら絶対言おうと思っていました。

それが、今来たのです」

 

佐川さんが言う。

「ぼくはD作さんから、この言葉を貰い、虹色へ変わる雫を流すために、三ヶ月、頑張って来たんだ。きっとそうだ。

絶対そうだ。

なんだこの、マネー成立以上の充実感は???」

 

虚無が充実へと変貌した瞬間だった。

 

虎たちは全員心を撃たれ、起立し、拍手とエールを送った。

 

「若者よ!未来ある若者よ!!!

虹色パルスの伝達者として、世界へはばたいてゆけ!!!!!」

 

「ありがとうございました!!!!!」

 

本当の感謝の気持ちを社長たちに伝え、

涙を拭い、560万円をしっかりと胸に抱きしめ、

会場をあとにする佐川さんであった。

 

吉田D作が興奮気味に言った。

 

「この番組の司会者でよかった!!!」

 

 

カンガエ・スギオが言った。

 

「なんだこの茶番劇は?

誰のために何のためにやっているんだ!?

近づいてるのか遠ざかってるのかわからない。

進化してるのか退化してるのかわからない。

途中だとしたら?

途中だとしたら、まあ進化かな。。。

まあでも、みんなが愉しいかどうかも大事だよな。

バランスだな。

愉しいだけじゃ、うーんとなるし、何かしら意味を得たいし、

意味を求めすぎると、浅ましくなったり、ウソっぽくなるしなあ」

 

カンケイ・ナキオが言った。

「関係ないぜ! 何でもいいじゃねえか!

みんな夢中で頑張ったんだからいいじゃねぇか!」

 

 

その様子をテレビで観ていたカートコバーンは、

うわのそらで呟いた。

 

おれたち、何ものにも代え難い、かけがえのない存在。

 

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つづく

 

 

 

 

 

キッチンからコンドリア博士が戻ってきて言った。

 

「分からない液体と、分からない色んな物を混ぜ合わせて、

紫色の謎のジュースを作ったので、誰か飲んでみたいという猛者はいませんか?」

 

みんなが言う。

「勘弁してちょうよ」

 

オリ・ハルコンさんが言う。

「せっかくだから、ルーレットで決めましょう」

 

みんな、気が乗らないまま

オリ・ハルコンさんがルーレットを回した。

 

「ピンチくんに決定!」

 

「おれかー。 マジかよ」

 

みんな固唾を飲んで見守る。

 

「飲むよ」

 

ドキドキドキ。

 

ゴクゴクゴク。

 

「ど、どう」

 

「あれ? 味はなんかパイナップルみたいで美味しい。

飲みやすい」

 

「マジ?」

 

「あれ? ちょっと待って、なんか変な声聞こえる。おじいちゃんみたいな人が耳元で、

なんかずっと『ヘロス トヘロス トヘロス ヘロス』って言ってる」

 

「ええ!?」

 

「おじいちゃんと、もうひとりのおじいちゃんが話してる感じ。口論というか、喧嘩みたいな。

時々普通に戻ったり。なんか話してるんだけど、おれには全部、ヘロス トヘロス トヘロス ヘロスって聞こえる」

 

「まあ!大丈夫!?」

 

「ダイジョバナイ!ダイジョバナイ!

全然大丈夫ではないよ!

みんなの顔が、なんかドクロみたいに見える。

しかも色とりどり。一人一人色が違う!

全員ドクロだから、誰が誰だかさっぱりわからない!」

 

「落ち着いて!声と服装で見分けられるよ!」

 

「2人のおじいちゃんのヘロス トヘロスが段々大きくなって、鳴り止まないんだ!なんなんだこれ!」

 

ピンチくんは頭を抱えて、その場に崩れ落ちた。

 

ナース・レイナが言った。

「わたしの出番がようやく来たわ。

とりあえず布団に入りなさい。

今冷たい水とかでなんとかするわ!」

 

誰かが言った。

「頼もしい! 一安心」

 

 

「おれも飲んでみたい」

 

デンジャラスくんが唐突に言った。

 

みんな我が耳を疑った。

 

「今の見てたでしょ?」

 

「わいは好奇心旺盛なんや」

 

ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク!!!!!

 

「ホントだ。パイナップルみたいで美味しい」

 

「なにか聞こえる?」

 

「ちょっと待って。???????

女の人の声でシュワシュワシュワシュワシュワシュワシュシュワルって聞こえる。

最後のシュシュワルがなんか語呂が悪くて、イントネーションもおかしくて、

凄くキモチワルイ。

どうせならシュワシュワで終わって欲しい。

耳と脳みそが溶けていってる錯覚に陥る」

 

「視界は?」

 

「あれ? おかしい! 変だ!

みんなの左肩の上にカタカナみたいなのが一文字浮かんでる。

でも、なんか違うんだ。「ア」ぽいけど「ア」じゃないんだ。

なんていうか、なんか「ア」じゃないんだ。

キットンくんは「タ」みたいなヤツ、桃色ピンクちゃんは「ポ」みたいなヤツ。

オリ・ハルコンさんは「ミ」みたいなヤツ。

でもなんか、絶対的に「タ」でも「ポ」でも「ミ」でもないんだ。

誰かに見てもらいたい。

この感じ。見れば絶対おれの気持ちが分かるよ!

カタカナみたいだけど、絶対カタカナじゃないってしか言いようがないんだ!

なんかの暗号か?

意味なんてないのか!???

変だ!凄く変だ!」

 

コンドリア博士が言った。

「こうなるのかー。あぶねー。味見しなくてよかった!助かったー」

 

かつて銃で撃たれて棺桶に入れられていた、トランポリン北澤が言った。

「今、生き返ったよ!」

 

「なぬ!?」

 

みんな目をまるくした。

 

フレイクくんが言った。

 

「なんか、なんとなく、この紫のジュースを、口から流し込んでみたんだ。そしたら生き返った」

 

黒柳大佐が言った。

「じゃあ、死んだ人全員に飲ませりゃいいじゃん!!!

ヤッター! またみんなで最初からやり直せる!

ヤッター! マジで嬉しい! 夢みたい」

 

筋肉ムキムキのイカツイ人が言った。

「コンドリア博士。

さっきは殺してやろうと思ったけど、今は何かしらの賞を与えたい気持ちで一杯です」

 

コンドリア博士は内心思った。

「あぶねー。たまたまだー。殺されてもおかしくなかった。マジであぶなかった。

しかも何かしらの賞も貰えるのかー。マジで良かった。助かった。ホッ。セーフセーフ、結果オーライ」

 

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つづく