セカンド・ラブ 33-1 ー火種ー

次の日、私は先生と二人で待ち合わせの場所へと向かっていた。
なぜ久遠ではなく先生だったかというと、急に仕事で呼び出された久遠の代わりにボディガードをしてくれると自ら買って出てくれたからだ。

「先生は、一体私をいくつだと思ってるんですか?」
「ん?いきなり何を言い出すんだ。」
「だって私は立派な大人ですよ。人さらいにあうとか、迷子になるとか、ありえません!」
「ははは・・・・まださっきの事を根に持っているのか。」
「だって・・・・・」

そう、久遠が出かけた後に、ジュリママたちとひと悶着があったのだ。
皆、私に対して心配しすぎ!
ニースへ来てから一度も私は一人で外出させて貰えないし
近くに移動するだけでも、いつも誰かがついてくる。

確かにNYにいた頃もジェフやダンがいたから、あまり一人で外出することはなかったが、それでも近場なら一人で行動していた。
パパラッチのかわし方だって、多少はわかっている。
もう少し私を信用してくれてもいいのに・・・

「先生も、ジュリママも、私を甘やかしすぎです。」
「そうか?これが普通だと思うが?」
「そんなことありません!だって久遠には送り迎えなんてしてないじゃないですか!」
「だって、あいつは大人の男だぞ。今更、親がのこのこついて行ったら気持ち悪いだろ?」
「私だって大人の女です!」
「だから心配なんだよ・・・・・」
「はい?」
「こんな可愛くて、綺麗で、性格のいい子が他所の馬の骨にかどわかされたりしないかと思うと心配で心配で・・・・・・」

(いや、そこまで心配するほどの魅力的な女じゃないし・・・・・・それに見た目だけで性格はわかりませんけど・・・・・)

「私、そこまで無防備じゃないと思うんですが・・・・・」
「いや、キョーコが悪いと言ってるんじゃない!可愛すぎるお前が悪いんだ。」

(どこが違うんだろ?)

「その上あいつは、肝心の時にヘタレだし・・・・・・俺の子なのに、一体何やってるんだか・・・・・これで他の男にキョーコを獲られでもしたら俺は、一生ジュリに口聞いてもらえない・・・・・・」

「先生?何一人でブツブツ言ってるんですか?」
「はっ、いや、何でもない。」

「あっ、もうここでいいです。先生はジュリママたちが待っている店に行ってください。ここからなら近いでしょ。」
「いやお店の前まで送って行く。そうしないと、ジュリと久遠に叱られるからね。」
「もぉ~先生も、ジュリママも過保護すぎます!」

ぷくっと膨れる目の前の女の子はレディーと言うには程遠くて
クーもついつい頬が緩む。

「さっ、急ごう。約束の時間に遅れるぞ。」

キョーコの手をとり、自分の腕に絡めるとまた歩き出す。

「先生?」
「こうやって娘が父親の腕を組んで街を歩くのは定番だろ。」
「『お父さん、大好き!』って、やつですね。」
「そうそう、こういうのは、久遠がいると、邪魔されて少しもやらせて貰えないからな・・・・鬼の居ぬ間の洗濯ってやつだ。」
「フフフ・・・・・・先生ったら」

腕を絡ませたまま、キョーコはクーの顔を見上げた。
ニコニコと嬉しそうにしている先生を見るとこっちまで嬉しくなってくる。

「あっ、でもパパラッチにでも撮られたら面倒な事になりませんか?」
「別に気にしないさ。」
「キョーコを実の娘のように可愛がっているのは、周知の事実だから問題ない。それに、こんな可愛い女の子と噂になるのもやぶさかではないしな。」

得意げに笑うクーにつられてキョーコも笑ってしまう。

そういえば昔
先生のことをお父さんって呼んでいた事があったな・・・・・
あの頃は恥ずかしくて、役に入らないと上手く呼べなかったけど
今は違う。

「先生?」
「ん、なんだ?」

腕にギュッとしがみついて顔を見上げる。

「お父さん・・・・・だぁ~い好きっ!」

一瞬、足が止まり無表情になるクーだったが
みるみる表情は緩み、蕩けるような破顔でキョーコを見る。

あっ、神々しい笑顔、それもトップグレード!
さすが親子ね、そっくり・・・・DNAを強く感じるわ。
久遠に見つめられてるみたい・・・・・・

頬に熱が集まって来るのを感じながらもキョーコは目を逸らさなかった。

「初めてお父さんっと呼んでくれたね・・・・・・・ウウウ・・・・」
「やだっ先生、こんな所で泣かないでください。」

焦るキョーコをクーは軽く睨みつけた。

「また先生に戻ってるむかっ
「あっ・・・・すみません。」
「まぁ、いい。慣れるまで何度呼んでも構わないからな。」
「はい、お父さん。」

私って、本当に幸せな女の子だ。
こんなに素敵で、格好良い父が二人もできるなんて・・・・・・

ニヤニヤする顔を抑えられないまま
先生と腕を組んでメインストリートをまた歩きだす。

「そういえばこれから行く所は、お父さんの大好きな和食の店なんですよ。よかったら少し食べて行きますか?」
「いや、遠慮しとくよ。キョーコ達の分がなくなったら大変だからね。」
「先生ったら、どれだけ食べるおつもりですかw」
「お父さんだろむかっ
「はっ!」

しまったと口を押さえるキョーコを、目を細めてクーは見つめる。

「今夜会う友達は、NY時代の子かい?」
「はい、ブロードウェイで同じ研究生でした。」
「何人ぐらいが集まるんだ?」
「それがよくわからないんです・・・・・ケイトは、こっちに来ている仲間を呼ぶと言ってましたが、まだ詳しくは何も知らされてないもので・・・・・」
「そんなんで大丈夫なのか?なんなら久遠が合流するまで、私がついててやろうか?」
「そ、それだけは止めてください!先・・・あっ、お父さんが隣にいたら皆、萎縮して騒げなくなっちゃいますもの。」
「そんなものか・・・・・」
「そうです。クー・ヒズリは私たちにとって憧れの大スターですから。」
「わかったよ。だが、ちょっとでも危ないと思ったら、すぐに連絡しなさい。迎えに行くからね。」
「はい、わかりました。でもね、ケイトがいるから心配はありませんよ。」
「いい子なのか?」
「はい!いつも私を心配して、叱ってくれる大切な友人です!」
「そうか、なら安心だ。じゃあ、楽しんでおいで。」
「はいっ!」
「さぁ、着いたぞ。」
「送ってくださりありがとうございました。」

深く頭を下げ別れた二人はまだ知らなかった。

クーが危惧したことが現実になろうとは・・・・・・


つづく


引っ張ってます( ´艸`)

いつか書きたいと思ってた、クーとキョーコの父娘会話ドキドキ
やっと書く事ができました~


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