キョーコが恥ずかしいと思っていたシャチフロートは
昨夜の酔いが抜けないサンドラのいいベッドとなっていた。
誰よりも張り切っていたクーですら
さすがに今朝はおとなしく
それほど振り回される事はなかった。

皆静かに、午前中の海にまったりと浮かんでいる。

その姿はさながら
沖に打ち上げられたあざらしのようにも見えたが
それなりに優雅でカッコよく映ったのは
それぞれが放つオーラのせいだったのかもしれない。

唯一の例外は、
ここぞとばかりにゴマすり
否、家族サービスに精を出すチャックと
その子供達だけだった。

しかしそれでも
ホテルのテラスで休んでいると言いだす者もおらず
当たり前のように海にやって来たのは
ただキョーコを思いやっての事であり
キョーコもまた皆の優しさをよくわかっていたから
目一杯はしゃいでたくさん笑う事で
皆の気持ちに応えようとしていた。


セカンド・ラブ 32-5 ーバカンスー


「男どもはいくつになっても馬鹿ねぇ~」

昼下がり強い日差しを避けようと
プライベートビーチに設置された青いビーチパラソルの下
サングラスをかけた3人の美女は並んで
お揃いの椅子に寝そべっていた。

すでに体力を回復させたクーと久遠とルイは
ホテルで昼食をとった後
疲れのとれないキョーコ達と別れて
ウェイクボードを楽しんでいたのだ。
彼等の姿が見える場所でゆったりと休んでいたジュリ達だったが
サンドラの声かけで3人とも起き上がる。

「さぁ、私たちはスパに行くわよ。」
「ああ、もうそんな時間なのね。やだ~まだ暑いじゃない!
キョーコ、早く室内に入りましょう。」
「はい!」

立ち上がって、ジュリ達に続こうとしたキョーコだったが
海の方で一段と大きく沸いた歓声に動きが止まる。

勢いよく飛び上がった久遠の身体がくるりと一回転して
大きな水しぶきを上げて着水を決めたのだ。

「ふ、ふわぁぁ……」

浮かせたお尻をまた椅子に戻し
海の方へと目が釘付けになる。

とびっきりのイケメン3人が海を滑走すれば
いくら遠目で誰かわからないとはいえ
仕草の一つ一つがカッコよく決まっているとなれば
自然と周囲の注目を集めてしまうのは当然の事だった。

ずっとその姿を見ていたいと思うキョーコだったが
スパの予約時間が近づいているので
そういう訳にもいかない。

「キョーコ?」
「サンドラママ、ごめんなさい。もう少しだけ先生たちを見ていたいので、少し遅れてもいいですか?」

見ていたかったのは久遠だったけど、
さすがにそれを口にするのは恥ずかしくて
先生たちと言って誤魔化した。

「しょうがないわねぇ。」
「ふふ、久遠は何しても格好良いから、見ていたいわよねぇ。
まぁ、クーには劣るけどっ。」
「あら、ルイだって負けてないわ。彼が一番素敵よ。」
「はい、皆さんすごくカッコイイです!」
「クスッ、まぁ、あんないい男3人があんな風にカッコよく決めちゃったらずっと見ていたくもなるわねぇ~
わかったわ。私たちだけで先に行きましょ。」
「すみません。」
「キョーコ、それならここで、久遠が戻るのを待つのよ。危ないから、決して一人で移動してはダメ。」
「はい。」
「あっそれと、もう一度日焼け止めも塗り直しなさい。地中海の紫外線をなめてたら大変な事になるわ。」
「はい、ジュリママ。」
「もぉ~,日陰から出ると結構まだ日差しがキツイわねぇ。」

一旦キョーコを立ち上がらせ
さっきまで座っていた椅子をパラソルの方に引っ張って
影に入るように置きなおすと、もう一度座らせた。

「ありがとう、サンドラママ。」
「それじゃあ、先に行ってるわよ。」

二人が立ち去ると、キョーコは言われた通りに日焼け止めを塗り直す為、テーブルに置いてあったバッグに手を伸ばした。

その時また、大きな歓声が上がる。

水上から飛び上がった久遠が、ボードを持ってクルクルと回って着水したのだ。

何をやっても
やっぱり久遠は様になる……カッコいいな///

日焼け止めを塗りながらも
久遠たちが気になってしょうがないキョーコだった。

湧き上がる女の子達の歓声に応えるかのように
また一回転して着水する久遠と入れ替わりに
ルイが高く飛んで見せて、また歓声を浴びる。

負けじとクーがプロ並のスーパテクニックを披露すると
大きな歓声と拍手が沸き起こった。

この素晴らしい水上ショーをうっとりと見つめ
夢の世界へと旅立った意識を呼び戻すかのように
携帯の着信音が鳴り響いた。

つづく


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