今回は、キョーコちゃんサイドのお話です。

こちらも少し怪しいです汗



例え役の上でも・・・ 中編



蓮のマンションを逃げ出した夜から、キョーコは蓮に会う事が怖かった。

ヤキモチを妬いて蓮を責めてしまった事を深く後悔し、謝りたかった。

でも、もしすでに呆れられてしまって、次会った時に彼から別れを切り出されたらと思うと怖くて、電話に出ることはもちろん留守電に入ったたくさんのメッセージすら聞けずにいた。

もちろんメールも開くことはできず、蓮と名前の付くものすべてから、ズルいと思いながらも逃げ回っていた。


それから二週間、辛くて辛くて、とうとう一人では耐え切れなくなってしまったキョーコは今、アキコさんとの飲み会に久しぶりに参加していた。

いくら飲んでも彼の影を消せないキョーコは、今のひと時でもすべてを忘れたくて、浴びるように飲んでいた。


「キョーコ、いい加減にしろ!今晩はちょっとピッチが速すぎる・・・

お前らしくないぞ・・・もしかして、あいつと何かあったのか?」


「別に何もありませんよ~ ただの後輩なんだから、あるわけもありませ~んww

ただアキコさんと久しぶりに飲めて、嬉しいだけで~す。

アキコさ~ん、だ~い好き。」


隣に座るアキコの腕にギュッと絡みつく彼女は、確かにすでに酔っていた。

猫のような甘えた声でトロンした目で見つめる今のキョーコは、普段と違い、ひどく色っぽくて周りをドキドキさせていた。


「今確か、キョーコちゃん、自分をただの後輩って言ってたよな。」

「ああ~・・・ていう事は、彼と別れたのか?」

「チャンスだよな。」


アキコの隣でしな垂れかかりながら、お酒を飲むキョーコの元を囲むようにして男たちは、あわよくばとチャンスを窺いながらキョーコとお酒を酌み交わしていた。


「俺、前からキョーコちゃんの事いいなあと思ってたんだ。」

「俺だってそうだよ!キョーコちゃん可愛いもん。」


「うれし~い。。。ありがとうww ○○さん♡」


「お前、何どさくさまぎれに告ってんだ。俺だってキョーコちゃんの事を!」

「俺も」 「俺も」 「俺だって」


一人が始めた告白は、嵐のように周りの男たちを次々と巻き込み、告白合戦のようになっていた。


しかし当のキョーコは、まるで他人事のようにへらへらと笑って受け流すだけで、

アキコに抱きつき、周りに男たちをはべらせたまま飲み続けていたのだった。


その時、奥の方で飲んでいた雪乃がツカツカとキョーコの前までやって来て、ヒステリックに怒鳴り始めた。


「あんた、いくらアキコさんに目をかけられているからって、ふざけんじゃないわよ!!自分の周りに、男はべらかせて飲んで、アキコさんにゴマ擦って、あなた、何様のつもり!生意気なんだよ!!」


もうすでに酔いが回ってフラフラの雪乃は、普段から思っていた不満も募り、酔いに任せて、持っていたブランデーのボトルをドボドボとキョーコの頭からかけ始め出した。


「キャアアア~~」

「アハハハ・・・・・あ~ら、とってもいい女になったわよ。あんたには、その方がお似合いよ!うふふふ・・・・」


「雪乃!今何やったかわかっているのか!? 悪酔いにも程があるぞ!

キョーコ・・・大丈夫・・・・か?」


ふにゃあとなってソファーの背もたれに手をかけて笑っているキョーコを見て、

アキコはギョッとした。

キョーコは、もうすでに大分酔いが回っていた上に、今アルコール度数の強いお酒を頭からかけられた事で、充満したブランデーの匂いにフラフラになってしまった。


慌てて寄ってきたクラブのママに付き添われるように控室に連れて行かれると、

お酒でぐちゃぐちゃになった服を脱がされ、頭も軽く洗面所で洗い流された。


キョーコは、その間もただただニコニコと笑っていて、世話を焼いているママやホステスのされるがままとなっていた。


「ねえ~ママ、着替えだけどお店のドレスくらいしかないけどいいかしら?」


「そうねえ~・・・まあこの際、仕方ないんじゃないかしら。この濡れた服着てるよりマシでしょ。」


濡れた服を指し示すと、他のホステスの女の子がスーパーの袋に脱いだ服を詰め込んでいた。


「うわあ~くさあ~!これ持ってるだけでも酔いそうよ!クリーニング出しても、匂いとれるかしら?捨てた方がいいんじゃない?」


「う~ん でも人様の持ち物を勝手に捨てるわけにもいかないし、今、キョーコちゃんに聞いても無駄だと思うしね。」


下着の上からタオルを巻かれているキョーコは、相変らず椅子の背に手をついて頭をもたれかけて笑っていた。


「ママ、このドレスでいいかしら?」


持ってきたオフホワイトのドレスは、胸元が大きくV字型に切り込みが入っていて、肩紐にはデコルテビーズがあしらわれていて胸の谷間を強調していた、
ウエストには大きめリボンが高い位置であしらわれていて背中は大きく開き、前のスリットも深く入っていて大人感漂うセクシーなものだった。


「これパッドがついてるし、ブラも脱がしてもいいわよね。どうせこれも濡れちゃってるし。」


ホステスの女性は慣れた手つきでキョーコのブラを外すと、形のいい小ぶりな胸がプルンと姿を現した。


「うわあ~羨ましい。きれいな胸よね。全然形がまだ崩れてないわ。この子、男知ってるのかしら?若いっていいわね。」


「ほら遊んでないで、さっさと着替えさせてあげなさい!」


「は~い」


ドレスに着替えさせたキョーコを見て、ホステスは首を傾げてしまった。


「あら、思ったより似合わないわね?このドレスはまだ早かったかしら・・・

何だかお子様がお母さんのドレスを着ているみたい?

ちょっと、違うもの持ってきて頂戴。この御嬢さんは、仮にも芸能人で、アキコさんが、大層目をかけている子だから、恥ずかしい恰好はさせられないわ。」


「う~ん 確かにそうですね・・・ でも確かこの子・・・『ダークムーン』の打ち上げの日に大化けした子でしょ?メークしたら、また変わるんじゃない?」


「あ~そうかもw ちょっと、試しにやってみようか。」


「これ!お客様を何おもちゃにしているの!」


「だってママ、このまま外に出したら、芸能人なのにあんまりにも花がなくて、逆に可哀相でしょう。それにスッピンで皆の前に出す方が嫌がらせじゃない?。」


「う~~ん・・・まあ、じゃあ少しだけよ。アキコさんを待たせるわけにはいかないわ。」


「は~~い」


ホステスたちは、自分のコスメポーチを持ってくると手早く化粧を始め、髪はセットする間もないので、かつらを被せた。


「嘘・・・この子って・・・本当に信じられないくらい化けるのね。もはや別人よね。」


「うん、この姿じゃあ、銀座NO.1ホステスと言っても通じるわ。さっきと違って、無茶苦茶色っぽい!」


「あら・・・本当にね。芸能人にしておくのが勿体ないくらい。この姿なら、この世界に入ったら、すぐに店一軒持てそうねww」


「ええ~ママ、それ洒落になんないわよ。またライバル出現なのお~」


「うふふふっ・・・誰も、あんたをライバルだと思ってないから大丈夫よ。」


「それどういう意味!酷~い」


「もういい加減になさい。さあ、アキコさんがお待ちかねよ。彼女を連れて行くわ。」


「さあキョーコさん、立ってください。アキコさんの元に戻りますよ。」


こくりと頷き、椅子から立ち上がったキョーコは顎に手をあてて潤んだ瞳でママを見上げた。


「私・・・綺麗になれた?少しは色っぽくなれた---かな---これなら、蓮さんにも嫌われない?」


「ええ~とても綺麗になったわよ。これならどんな男でもあなたの魅力にメロメロよ。自信をお持ちなさい。」


「嬉しい~」


喜んで抱きつこうとする彼女の肩をそっと持って、ママも妖艶に微笑みかけた。


「いい女は、やたらと抱きつかない。男が来たくなるまで、焦らさないと駄目よ。

安売りしてはいけないわ。」


キョーコは、ママの言葉に動きを止め、彼女の仕草をコピーするように妖艶な笑みを浮かべ、手を前に添えると、ゆっくりと歩き出した。


ママに連れて来られてきたキョーコは、軽くお辞儀をすると、アキコへの隣へと腰を下ろした。


「相変らずというか・・・また、化けたなw

まるで、この店のNO.1ホステスみたいじゃないか。」


「そうでしょう!私も噂には聞いていたけど、こうやって目の当たりにすると興奮するわ!是非うちの店にスカウトしたいぐらいよ。彼女なら、すぐにここのNO.1をはれるわよ。」


「あははは・・・だってさ、キョーコ。どうする?いっそここに就職したらどうだ?」


「うふふ・・・それもいいかもしれませんね。」


実は、キョーコはすでに大分酔いが回っている時に、度数の強いアルコールをかけられ、その匂いにすっかり酔ってしまい、理性のタガはすでに外れ、意識も半分朦朧としてほとんど本能のままに動いているのだった。しかし、いかんせん彼女は根っからお酒に強かった為、足取りもしっかりとしていて、まさかそこまで酔っ払っているとは誰も気づいてはいなかった。


「ねえ~、ママ・・・どうすれば私、魅力的な女性になれるんでしょうか?

もっと色っぽくなりたいの・・・」


隠すことなく本音を漏らしたキョーコ。

実は、この前目撃してしまった蓮と相手女優とのキスシーンを非常に気にしていて、心のどこかで色気も華もない子供っぽい自分の魅力不足に原因があると思っていた。

ずっと色気のある女性になりたいと心の片隅で願っていた事が今、酔いで抑制するものもなく、素直になったキョーコの言葉となったのだ。


上目づかいに、甘ったるい声で聞いてくるキョーコは、十分に色っぽかったが、

彼女に興味を持っていたこの店のママは、男性を魅了する様々なテクニックをキョーコに教えていった。 


キョーコは、もう恥じらいを感じる理性はなかったので、ママの教えの通りに周りの男性を魅了して落としていった。

酔っ払いゆえの少し焦点の合わない潤んだ瞳が逆に妖艶さを増し、先ほど着替えさせられたドレスから見える白い透き通るような肌が少し上気して艶を増し彼女に堕ちない男は、此処にはいなかった。


少し他の男性にしなだれかかる時に見える胸の谷間が男達の理性を大きく揺らし、ここにアキコがいなければ皆に襲い掛かられても不思議でないほどの危うさが今この場にはあった。


だが当の本人は、夜の蝶となりきり、男をその気にさせると、また次へ次へと袖にして移動してゆくので、男たちはただ彼女に魅了され、甘い香りを放つ華を目で追うだけの無力な蟻となってしまった。


その時、突如この今の店の雰囲気には似つかわしくない可愛いらしい携帯音が鳴り響いた。


「あれえ~私の携帯が鳴ってる---」


近くに座っていた芸人の太腿に這わせていた手をさっと離すと、ふらふらと自分の置いていた鞄の方に近づき、携帯を取り出して画面を見た。

その名前を確認すると、今までの妖艶さを吹っ飛ばすような一層の艶やかな笑みを浮かべ通話ボタンを押した。

受話器の向こうから流れてくる声に何度か頷き返事を返すと、「今すぐ行きます。」と言って電話を切って荷物を持ち、アキコの方に近づき綺麗なお辞儀をした。


「彼が迎えに来てほしいと連絡がありましたので、今日はこれで帰ります。今夜は、本当に楽しかったです。ありがとうございました。」


言ってることは、非常に全うで礼儀正しい!

でもキョーコが、人前で彼と言うのもおかしければ、その言葉と裏腹に足取りがフラフラの千鳥足となっているのも、酔いが完全に回っている証拠。

その上、このセクシーなドレスに、先ほどレクチャーされた銀座NO.1のホステスのような夜の蝶ぶりと、危うさが増しているにも関わらず、本人は一切の危険感知能力を失っている。

このまま外に出れば、すぐに誰かに連れ去られ犯されてしまうだろう。


さすがに今のキョーコを一人で行かせるのは危険と判断したアキコは、此処のママと一緒について行くと言いだし、そのままキョーコに酔い潰された者とキョーコによって使いものにならなくなった目がハートマークになっている連れ達を置いて、さっさと3人で店を出て行った。


しかしアキコも実はすでに酩酊状態で、正しい判断はできなくなっていたのだが・・・


後編へつづく



やっと、前フリ完了!!

次回は、理性が吹っ飛び、本能のままに行動する酔っ払い二人の可愛くて楽しいお話が書けるよう、頑張ります。


お気に召しましたら、ぽちっとよろしくです。

もしかすると、ピコにやる気を起こさせてくれるボタン?

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