そのときのことがあって以来、ユノは彼女ができても、その話を僕にはしなくなった。
彼女ができることを知ったときは、あのときほどでなくてもショックを受けたが、僕はそのことより、ユノとの繋がりをなくすことが辛いと思ったので、ユノが僕に話さないのなら、僕もユノに聞かなくなった。
それに、ユノは時間があればわりと、僕の部屋によく来てくれたし、メールも頻繁にくれた。
弟のように思ってくれてるかも知れないが、その立ち位置にいる限り、ユノと僕の縁が切れることはない。
そう思うことで、僕は僕自身を傷つけることをやめたのだ。
そんな僕だから、例え女性から告白されても断り続ける。
理由はひとつだ。他に好きな人がいる。
僕のこの言葉に、始めはよその学校の子と付き合ってるという根も葉もない噂が流れていたが、それは、僕にとって好都合だった。
「おまえ、他の学校の子と付き合ってるの?」
意外にもその噂はユノの耳にも入った。
「は?」
「もし、そうなら、俺に紹介してくれよ。」
ユノがその噂を知ったことより、ユノが平気でこう聞いてくることちりっと心をつねられるような痛みが走る。
「やだよ。」
そのとき、いないと否定すればよかったのに、何故か僕はこう答えた。
「心配してるんだ。チャンミン、大人しいから。」
「何それ?僕が好きになる相手は性格が悪いとでもいいたいの?」
「違うよ。嫌なことは嫌だって言えなさそうだし。」
「それは、ユノだろう!僕は付き合いたくない相手には付き合いたくないと言えるよ。ユノは相手に流されるまま付き合うから、何人ともつきあってきたし、相手に言われるがまま付き合って、相手の都合でふられてるくせに。」
ユノが相手の強引の押しでつきあうことがあっても、ユノの煮えきらない姿にふられることが多いことを知っていた。
「なんだよ、それ。知ってたの?知ってて、何も聞かなかったのか?ふられて、ばかだなって思ってたの?」
どうしたのだろう。珍しくユノが怒っている。
「アホらしい。」
僕のこの一言に、温厚なユノの顔が変わる。
僕の体をベッドに押し倒して、両手首を押さえられた。
「な、何?」
「こういうことした?」
「は?したって言ったら、僕達のつきあいが変わるの?」
すぐそばでみるユノの瞳は揺れていた。
嘘だとわかって、怒ってるのだろうか?
何故か互いに喧嘩腰。
こんな喧嘩あのとき以来だ。
でも、あのときと違うのは、僕は、手首をつかまれ心臓が壊れそうなほど、どきどきしている。
ユノが怒っているようなのにどうしてだろうか。
ユノが触れているから?
いや、それは、違う。今までもよくあった。
確かに、その都度、頬がわずかに色づくくらいに照れていただろう。
でも、そのときの気持ちとはるかに違う。
ユノの顔が穏やかな顔でないからだろうか。
今までに見たことがない目付き。
「ごめん。」
急にその手を離され、いつも表情に戻る。
「驚いた?」
「え?」
「試すようなことしてごめん。本当に好きな子いるのか、、、。」
いないよ。好きなのはユノだけだ。
そう言えないジレンマにイライラした。
「僕に彼女がいてもいいだろう!ユノだって、いるくせに。どうして、僕が悪いみたいに見つめるんだよ。」
「そんなつもりじゃ、、、いや、そうかな。笑っちゃうよ。チャンミンは俺のものじゃないのに、なんか、寂しく感じるなんて。」
もしかして。
「僕のこと好き?」