ロビンソンという個性を生かす、どうでしょう班のリーダーシップを感じた。

先週末、注文していた『水曜どうでしょう 激闘!西表島』のDVDがHTBから届いた。当然全てのタスクを後回しにして、といいつつ飽きれば何か別の事をこなしながら見ているが、まぁ今回の企画は凄い。そもそも次回作は『パンブローナの牛追いに行こう』という話だったが、蓋を明けると一文字違いの『むし追い』を西表島でやろう、という企画。企画段階で、もうびっくりするくらい緩い。

とりあえず、釣りバカ対決のように虫を探して、見つけたらポイントを与える方法でタレント陣がただただ虫を探すという企画になったんだろう。その心持ちで見ていると、西表島現地に到着早々、現地コーディネーターであるロビンソン小屋という会社のオジさん(通称ロビンソン)の『虫とりなんてつまんないよ。いないもん。』という一言で企画全てが白紙に戻される。そこからは、ロビンソンのお薦めするまま、クマノミを探したり、ヤシガニを探したり、特に判断基準もなく『じゃあそれを取りに行こう』という即決の元にどうでしょう班は移動してゆく。

最後には徹夜の夜釣りをすることになったが、またもロビンソンの『ライト付けると魚来ないよ』の一言で、テレビであるにも関わらずライトを消したまま、真っ暗の中をただただ釣りをするという前代未聞の画が延々続くのである。賛否両論はあろう。すくなくとも、どうでしょう史上ダントツのいい加減な企画である事は間違いない。


さて、このロビンソン、テレビ番組、だけでなく今ではDVDを出す度に数十万コピーを売る大型企画に対して
何故これ程の影響力を行使出来るのか?シリーズの後半だけを見ると、さぞ著名な自然保護家か地元の湯力者かと思うかも知れないが、実はただの現地ガイドのオジさんである。番組との関わりも無く、番組制作スタッフのコネがある訳でも無く、企画に必要な為に雇ったガイドさん。その彼に、番組企画進行の全権を委ねる。そこにこそ、どうでしょう班のリーダーシップがある。

ロビンソンも、最初は『いかに西表島の良さを伝えようか』しか考えていなかっただろう。ガイドさんである。番組の仕上がりにも、上がってくる画にも、全く責任が無ければ興味も無い。そんな彼が全権を委ねられ、途中からは番組の成功に如何に貢献出来るか、彼なりに真剣に考え、助言し、自ら率先して行動する。彼はもちろん空回りし、撮れるか撮れないか分からない画の為にどうでしょう班を真夜中まで引きづり廻すことにはなる。ただ、それでもどうでしょう班は愚痴をいいつつも、彼の行動を一切否定しない。そして、わずか2日の間に、彼は番組にとってかけがえの無いメンバーへと成長するのである。大うなぎの餌を探すが失敗し、まだまだ探すと言う彼をメンバーの一員としてなだめ、『ライト当てるから魚が逃げちゃうんだよ』という彼の苛立ち(テレビなんだから仕方ないんだが)も真摯に受け止め、チームメンバーを盛り立てる。最後にロビンソンは、どうでしょう班の誰よりも積極的なメンバーとなる。

どうでしょう班は、優秀なマネージャーの集団ではない。言っては失礼だが、どこか人間として欠ける所を持つ、どこにも共通点の無い4人組である。彼らは現地でオイしいキャラ探しをしている訳でもない。そんな彼らが、素晴らしいキャラを発掘し、番組を作り上げ、そのキャラを自分達のメンバーとして育て上げるのである。彼らの、ロビンソンへの権限委譲、そして彼への信頼が成せる技だと心から思う。ここにこそ、リーダーシップの神髄がある。

私は意外と『激闘!西表島』が好きだ。怠い企画ながら、チームの育成を垣間みれ、そしてロビンソンという個人の魅力を最大限引き出すマジックがそこにある。本気で、我々が学べる事は多い。


餌が見つからなかった時のロビンソンのその悔しそうな顔が、何とも愛らしい。
そして、大うなぎは捕まるのである。
大うなぎに対して、ロビンソンが与えたポイントは100ポイント。(もう彼がポイントも決めている)
それを宣告する時のロビンソンの顔は映らなかったが、さぞ満足な顔をしていたんだろうと思う。
みんながこんな風に楽しんで、こんな顔をして、結果も出せたら、その会社は間違いなく成功していると言っていい。


はし