米ビッグ3、経営陣報酬カットへ 支援狙い「自己犠牲」(日経)

アメリカでは、世論が『ビッグ3は見捨てるべきではないか?』と感じるようになってきている。『うちは大きいから、潰れたらみんな困る。まぁ助けてくれる だろう。』という甘い意識だったが、Economistをはじめとした経済新聞等では、そもそもこれら企業は競争力が無い事が問題と指摘され、また世論 もその意見に賛同しつつある。そこに、『いや、我々も我慢するから、そこを何とか・・・』と言われても、世論として好意的に取るはずがない。

Saving Detroit (The Economist)

ポールソン(とバーナンキ)の判断基準は明確だと思う。AIGは金融市場全体への影響を考えて救済したが、リーマンは見捨てた。もちろんリーマンの破綻に よって経済に大きな影響は与えたが、助けなければ金融恐慌へと進展しかねないAIGの場合とは事情が違う。『これまで金融工学を駆使して大儲けしていた彼 らを、上手くいかなくなったからからと税金で助けるのか?』という道徳的な問いに対しては、NOと答えた。実はリーマンはグレーゾーン。リーマンとAIG のケースにに根本的な違いは無い。あくまで影響の『度合い』とプラクティスにおけるリスクテイクの『度合い』の違いでしかない。そのグレーゾーンも『ク ロ』と判断したのである。連邦の判断ではビッグ3は『クロ』になる。

一方、連邦は金勘定もしなければならない。デトロイトが必要としているのは500億ドル。政府としてその20倍の救済措置を取っている中、1/20の資金 注入で数十万人分の雇用が守られ、その資金より遥かに大きい損害を回避出来る。数字だけ見れば、ビッグ3を見捨てる事は重大なダメージとなる。助けた方が はるかに安上がり。

ただ、判断基準は厳格である必要がある。GMを助けたとして、FedExは?IBMは?GEは?経済的影響が大きい企業が対象となるのであれば、大企業は 軒並み対象となるのか?被害が大きいからという理由で救済していては、少なくともいくら資金を注入したところで足りない。財政援助の規模もいつまでたって も見えない。さらに、自動車産業はこの金融危機が始まるずっと前から財政難に陥っていた。その企業に金融危機がさらなる追い打ちをかけた事は事実として、 助けても自力で回復できなければならない。その競争力がビッグ3に残っているかに悲観的な意見が多い。


救済はすべきと思う。
まず、影響。GMやクライスラー(合併の話もあったが)規模の企業が倒産すると、直接的に影響を受ける雇用者だけでも、子会社を含め相当数に達する。次期政権も、そもそも雇用創出に向けて動き出していたのである。道理が違うからと見捨てる必要は無い。あらたに創出せずとも、数十万の雇用を救えるのである。意味はある。

次に、タイミング。大きなコストがかかるとしても、他産業への労働力の異動、他業界への影響、その他もろもろの変化が一気に起こるには、状況が不安定すぎる。ビッグ3を見捨てることによる影響は、実はさほど見えてはいない。蓋を開けたところ、ありとあらゆる産業へ飛び火し、これらの鎮火に奔走する愚は避けたい。

最後に、確かに企業規模が大きいからこそビッグ3を救うが、大きければ全て救う訳でもない。金融企業が別格扱いするのと同様に、ビッグ3もその規模、影響度において別格である。


確かに特別扱いするようで気持ちの良いものではないが、
背に腹は代えられない。
ここは、救済で乗り切るのが良と思う。


はし