「レイモンド・カーヴァー傑作選」 | ちっぴのブログ☆CHIPILOG

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美しい大人を目指す私の日々

レイモンド・カーヴァー傑作選「CARVER'S DOZEN」

レイモンド・カーヴァー 著  村上春樹 編・訳



村上春樹お気に入りの小説十篇に、詩とエッセイをひとつずつ加えて、全部で1ダースとなる、レイモンド・カーヴァー入門編。


村上春樹が好きだし、本のタイトルもお洒落だし、最近は日本の作家のものばかり読んでいたので、久々に外国の空気を感じたくて、選んだ一冊。



1ダースの心温まるストーリーを期待して読み始めたが、どうも、私のなかにすとんと入ってこない話ばかりが続く。それは、「私には、想像力が欠如している」、「私は、感受性が豊かじゃない」、と落ち込むほど。言葉の羅列が響かない。何かを、しかと汲み取れない。


全篇を通じて、もの悲しく、浮かんでくるのは、単に色のイメージ。霜降りグレー。淡々としていて、ハッピーからは程遠い。カバー表紙の写真の作者が書いたということは、十分に頷ける。なぜか、グレー。



十篇も短編があると、なにがどんな話だったか忘れてしまうけど、昨日の悲しい知らせを思い返して、「読んでよかった」と思い出すのは、

「ささやかだけれど、役に立つこと-A Small, Good thing」


母親が、8歳になる息子の誕生日ケーキをパン屋に予約した。しかし、誕生日の当日に息子は車にはねられてしまう。二日間の昏睡の間、父親と母親が交代で家に帰ると、何度も電話が鳴る。こんなことになっているとは知らないパン屋が、ケーキを取りに来いと言う。母親は、そんな電話でヒステリックになる。そして、車にはねられてから、三日目に子供は息をひきとり、家に帰るのだが、その日の夜に、また電話が鳴る。パン屋だ。夫婦はパン屋へ出向き、思いのたけを直接ぶつける。すると、パン屋は事情を知って、素直に謝り、夫婦を椅子に座らせて、コーヒーとパンをすすめる。

「よかったら、あたしが焼いた温かいロールパンを食べて下さい。ちゃんと食べて、頑張って生きていかなきゃならんのだから。こんなときには、ものを食べることです。それはささやかなことですが、助けになります。」

「何かを食べるって、いいことなんです。」


この話が、頭に浮かんだ。

美しい友人が、亡くなった。何があったか分からない。詮索するのもやめにしよう。ただ、10月4日、確かに彼女は、私の料理を「おいしい、おいしい」とたくさん食べてくれたのだ。あのとき、とても楽しかったのだ。私の料理で、彼女は喜んでくれたんだ。それは事実で、それでいいんだ。


食べることは、いいこと。大事なこと。


これからもっと、おいしい料理をつくりたい。