ギターと弟と私 | ペッターの話

ペッターの話

延々と1人でブツブツやってる

弟はギターが上手かったことは

前にも書いたが。


その記事を読むと分かる通り

私は弟に抜かされた形になる。

藤岡藤巻を弾ければ満足だった私は

他の曲の練習はしなかったし

藤岡藤巻の曲はコードが簡単な曲が多く

上達には向かなかったし。


で、あっという間に弟に抜かされると

やっぱり私は面白くない。

そこで対抗心を燃やして頑張れるほど

出来た人間でもないし

ギターに対して向上心もなかったので

年に1〜2回藤岡藤巻を弾く程度にしか

触らなくなった。


当然、差はどんどん開く。

私は趣味が他にもたくさんあって

ギターに時間を割くことは無駄と考えて

完全に諦めていたところに

星野源にハマって

あぁやっぱりギター弾けるようになりたい

と思うようになる。


親が働いていた店の周年行事として

ライブを行うことが何度かあった。

店主のご指名で前座は必ず私。

最初は1人で適当にやっていたのだが

何かのキッカケである時から

弟と2人でやることになった。

私がボーカルとアコギ。弟もアコギ。

そこで源さんをやって。

難しかったので、弟に相談しながら

部屋で黙々と練習を重ねた。


弟は面倒くさいと文句を言いながらも

一応付き合ってくれたし

選曲は私に合わせてくれた。

(中島みゆきの糸だけは

弟が選んだような気もする)



その後また挫折して

しばらくギターを諦めたが

坂崎幸之助にハマってまた再燃。

うわー、ギター弾けるようになりたい!

とミーハーが顔を出した。

この時はそこそこ頑張って練習していたが

簿記の資格取得を言い渡されたりと

普通に忙しくなってしまい

そんなに長くは続かなかった。


坂崎さんがギター雑誌に連載を持っていた

ということをネットで知って

弟に持っているか聞いたら、流石、持ってた。



部屋から埃だらけの雑誌を

大量に持ってきてくれて

1冊1冊中を確認して

「これ坂崎さんいる。これもいる」

と渡してくれた。

それらの雑誌は一通り私にくれて

「必要なくなったら処分して良いの?」

と聞いたら

「処分する前に一応聞いて」

と言われた。

まだ実家のクローゼットに全冊ある。


私が少し真面目にギターを練習し始めてから

それまでコード弾きしかできなかったが

もう少しレベルアップしたいと思い

基本テクニックを弟に教えてもらった。

弾きたい曲にハーモニクスが出てきた時も

小指のプリングオフができない時も

ブリッジミュートが理解できない時も

弟に泣きついた。どれもいまだに出来ない。


坂崎さんモデルのラメ之助というギターを

ヤフオクで泣く泣く諦めてから

ずっと後悔して過ごしていた時に

「欲しいなら買うべきだよ」

と言われた。

「でも弾けないのに25万のギターは

宝の持ち腐れじゃない?」

と言うと

「それだけ高い金出して買うと

逆に元を取ろうって

練習せざるを得ないから。

高いからって諦める方がダメ」

と散々言われた。

その翌月、同じく坂崎さんモデルの

星之助というギターと出会って

12万だったけど即決して買った。

弟に見せたら

「だっっっっっっさ」

と笑われたが、全然気にならなかった。

弟も、そんなことを言っておきながら

「ちょっと弾かせて」

とソワソワと私から星之助を受け取り

「小さいけど結構ちゃんと鳴るね」

なんて言いながらしばらくポロポロ弾いた。


平沢進にハマった時に

平沢さんが弾いてるEVOというギターが

どうしても欲しくなった。

これも大体25〜30万くらい。

弟に話すと早速その場で検索して

「うわっめっちゃかたい音がしそう」

と言った。

「そうだね、確かに金属音っぽいかも」

「でしょうね。これボディ何?アルミ!?」

と調べて表示された性能に

いちいち声に出してリアクションした後

「こんなギターは変態しか使わない」

と言った。

ゲラゲラ笑った後に

「でも欲しいんだよー。

いつか絶対お金貯めて買うんだ。

その前にギター弾けるようにならなきゃ」

と話すとヤフオクなどを開き始めて

「中古だったら◯万で買えるよ。

ほら、コレとか安くなってる」

と色々見せて買わせようとしてきた。

平沢さんと同じ色が欲しかったし

一人暮らし資金を貯めてる最中だったので

その手には乗らなかった。


弟が亡くなってから色々考えてて気付いたが

そういえば弟から

私がギター下手なことについて

バカにされたことは無いかもしれない。

一緒にステージに立った時も

基礎テクニックを教わった時も

「練習しな」

とは言われたけど

バカにされたことは無かった。

不相応に星之助を買った時も

デザインは貶したけれど

下手なくせに、とは一度も言われなかった。

平沢進にハマってから

どうしても弾けるようになりたいソロがあり

毎日毎日延々とその4小節だけを

繰り返し練習していた時には

「それだけ短いフレーズを

それだけ毎日練習できるなら

もっと他の曲だって出来るようになる」

みたいなことを言ってくれた。


弟はギターを人に教える機会もあり

年下からも慕われていたことが

亡くなった後に分かった。

確かに教え上手だった気がする。

慕われるのも分かる。


結局、弟のギターに劣等感を抱いて

勝手に腐っていたのは

超ネガティブ思考な自分のせいだった。