2023/06/15 | ペッターの話

ペッターの話

誰も見てないと思いながら書いてる

https://ameblo.jp/piapeto/entry-12812907401.html


※こちらの注意書きを読んでから

読んだ方が良いです。





「まーきー、死んじゃった」

「えっ、なんで!?」

「自殺しちゃった」

朝5時59分、泣き声の母からの電話で

起こされた。

話を続ける事ができない母に代わり

母の彼氏がそのあとを引き継いだが

何を話したかはあまり覚えていない。

時間を聞いたら6時だと言われ

それなら電車も走っていると判断し

「会社休んで今からそっち行くよ」

と電話を切ったことは覚えている。

目覚めの悪い私でも

流石に一発で目が覚めた。

こんな最悪な目覚め、ないよ。


今日のことを一生忘れないように

自分のために記録をしておくのと

正直、文章にでもしないと整理ができない。


真っ先に思ったのは

そうか、ついにか…

という思いだった。

いつかこんな日が来るのではないか

と心配はしていたのだが

私は弟から相談相手として信頼されておらず

聞いても話してはくれなかったので

こちらから無理に聞くこともできなかった。

一応、2〜3ヶ月前にLINEした時も

「何かあったらいつでも言いなよ」

とは伝えていたが

「はいよ」

の一言だけで内容について

話してくれることはなかった。


とりあえず職場の部長へ

しばらく休ませて欲しいとメールを打ち

顔だけ洗って家を出る。

実家までは1時間ほどかかる。

家を出る時に腰が痛いことに気付いた。

呆然として分からなかったが早くも

相当なストレスがかかっていることが

腰痛で判断できた。

音楽を聴いていても何が流れているのか

全く判別ができない。

心臓はずっとドキドキとしていて

しかし涙は出なかった。


途中で、離婚して静岡に住んでる父へ

LINEで連絡をした。

母から弟の自殺を告げられることも辛いが

離れて住む父に弟の自殺を

告げなければならないのも辛かった。

なんて伝えたら良いんだ…と悩んだが

頭がまわらなかった。

17日に一緒に落語へ行く予定だった

藤巻さんにも断りの連絡をした。


弟とは先週と、日曜日にも

LINEで連絡を取っていた。

先週は珍しく弟から連絡してきて

何かと思ったら

昔持っていたクソゲーの

レビュー動画を送ってきた。

日曜日には、今度は私から

「この人知ってる?」

と、若いギタリストの神プレイ動画を送った。

「この手の外人LIVEでも上手いから萎える」

と弟が言うので

「人生3周くらいしてんじゃないのか…

1周目じゃ無理だろそんなん…」

と返したのが最後のやり取り。

私たちにはいつも通りのノリなのだが

これが最後になったのをとても悔やんだ。


こんな具合に直前まで連絡を取ってたので

何故と言う気持ちは確かにある。

何も話してくれなかった、という寂しさも

もっと話を聞くべきだったな、という

後悔もそれなりにある。

ただ、今、思っているのは

まぁ、私には話してくれないだろうな

という納得と

それだけつらかったんだな

という同情と

母への心配が大きい。


7時半過ぎに実家へ着いた。

死因を知らなかったので

現場が部屋だったらどうしよう

と不安があった。

玄関を開けると

正面のリビングに母が力無く横たわり

母の彼氏が無言で座っていた。

思わず真っ先に

「大丈夫?」

と聞いてしまった。


母はすっかり憔悴してしまい

発する言葉も限りなく小さく

2〜3回聞き返さないと聞き取れない程なので

詳しい状況については

母の彼氏が一通り話してくれた。


ここ最近、うつ病の調子が良くなく

家いることが多かったこと。

家族とのトラブルで揉めていたこと。

バンドでも揉めてしまったこと。

紹介してもらった仕事の約束へ

体調不良で行くことができなかったこと。

これらが重なって

人と関わることが嫌になり

昨日の昼間にTwitterやらLINEやら

全てのSNSが削除されていたようだ。


そして昨夜、珍しく母の前で

弟が感情を吐き出したそうだ。

酒を大量に飲んでいたのか

立っていることもできず

しゃがみこんだ状態で泣きながら

「もう生きていても仕方ない」

と言ったそうだ。


弟は私たち家族にそういった弱みを

一切見せない人だった。

普段は悩みを何も話してくれないので

この時点でかなり異常だと感じた。


母と母の彼氏は弟の話を聞いていたが突然

「病気になってない人にはわからない」

と弟に怒られ何も言えなかったそうだ。

弟が部屋に戻ったあと

「病気について勉強しないとだね」

と2人で話していたらしい。


この話を聞いた時に私は愕然とした。

母も母の彼氏もそんなに

理解できない人だったとは。

「何も死ぬことないのに、なんで…」

と呟く母は、自殺を考えたことが

無いのかもしれない。

弟の、この時の絶望を考えると

胸が締め付けられる思いだ。


弟は母達が寝たあと

マンションの最上階から身を投げたそうだ。

推定時刻、午前2時36分。


不穏な連絡を受け取った弟の友人が

警察に安否確認を頼んだため

インターホンが何度も鳴らされた。

そこで母たちは起きれなかった。

弟はインターホンの受話器を外して

それ以上鳴らないようにしたうえで

鍵を持たず裸足で出ていった。

諸々の状況から2時20分過ぎの時点では

まだ弟が生きていたことが分かっている。

ホントに10分程度の短時間で

起きてしまったことだった。


もちろん私にだって弟の苦しみは分からない。

うつ病と診断されたことはないし

一応社会人で一人暮らしをして

自立しているし、健康に過ごしている。


ただ、私も昔、本気で死のうと思って
同じようにマンションの最上階の
まさに弟が身を投げた外階段の踊り場へ
立ったことがある。
最上階まで階段を上がっているうちに
怖さが勝ってしまい、死ねなかった。
あの時の恐怖は今でも忘れられず
脳に焼きついている。
なので、あの柵を飛び越えてしまう
という事の重大さだけは
身をもって体感しているつもりだ。
ちょっと悩んだだけでは
あそこから身を投げることなんて
足がすくんで出来ない。
状況から衝動的なものだったのだろう
と推測されている。
まぁ衝動的じゃなかったら
ホントに越えられないよ、あの柵。
大体、弟は高所恐怖症だったはずだし。

別に私が今、自殺願望があるわけでもない。
ただ、母ほど「何故?」という疑問は
わいてこなかった。
死にたくなるよな、まぁ分からんでもない。

弟は29歳だった。
ギター演奏の腕を活かして
サポートメンバーをやったり
自分でもバンドをいくつかやっていた。
普段は音楽スタジオのアルバイトを
掛け持ちしていた。
年上から可愛がられるタイプで
交友関係は広かったし
高身長で顔も整っていたからモテただろう。
酒も飲めて話も面白くてギターができて
音楽の知識が深いので
どこへ行っても弟は重宝がられた。
私はそんな弟が誇らしくもあり
嫉妬や劣等感もあった。

そして弟は最後にまた
私ができなかったことをやってのけた。
やっぱりすげぇよ。
賞賛されることじゃないし
やってのけて欲しくなかったけど。

よく「自分が代わりに死ねば良かった」と
思ってしまう話を聞くが
まさにそんな気分だ。
弟のようにたくさんの人から愛されて
才能ある若者よりも
コミュニケーションに難があって
大した能力もない自分が代わりに
死んだ方がマシじゃないのか、と
結構真剣に思う。

母と母の彼氏は昼過ぎに
警察へ呼ばれて行った。
その間しばらく1人で留守番をした。
弟の部屋にいるはずのネコ2匹も
まるで気配を消して静かにしている。
あぁ、このネコをどうしよう。
誰も世話ができないし
弟以外の人に慣れていないから
恐らく捕まえることもできない。

SNSを全部消してしまったから
弟の交友関係も分からないが
唯一知っていた所属バンドの
Twitterアカウントへ連絡を入れて
お知らせを発信してもらった。
「バンドメンバーからも
お客さんからも好かれていました。
一緒にバンドできて嬉しかったです」
と連絡をくれた。

バンドの人に弟の勤務先を
教えてもらって連絡をすると
2箇所とも非常に驚いたあと
「最近予約が取れなくて、とは
聞いていたんですけど…」やら
「一昨日から連絡が取れなくなって
心配していたところでした」
と口々に呟いた。
死因は伝えていないが
恐らく察したのだろう。

飼ってる猫のペットショップへ連絡したら
副店長さんが折り返しをくれて
「彼の接客を担当して
インスタもフォローさせてもらってました」
と話をしてくれた。

弟は諸事情で弁護士さんへ
助けを求めていたようだ。
名刺が見つかった弁護士さんへ
母が連絡した時には
弁護士さんも泣いていたという。

色んな人が心配して私の元にも連絡をくれたが
正直なところ憔悴しきった母を前に
私は泣くこともできず帰ってきた。
帰りに送ってもらう車の中で母が弱々しく
「ペッターに責められるかと思った。
なんで2人もいて止められなかったんだって
もっと責められるかと思った」
と言った。

全くその気持ちがないと言ったら嘘になる。

なんで昨夜、弟が泣きながら
「生きていても仕方ない」
と言った時点で気付かなかった。
なんで親友が心配して家の下まで
来てくれていたのにそのまま帰した。
なんで弟がそんな状態になるまで追い詰めた。
思うことはたくさんあるが
母と母の彼氏を責めても弟は戻らない。
それに責める資格が私にはない。
私だって、自分が家を出たら
弟は自宅に居場所が無くなって
死ぬのではないか、と
気付いていたのに
それを分かってて家を出たのだから。
自分が死ねなかった経験から
人はそう簡単には死なない、と
たかをくくっていたのかもしれない。

まだ現実味がないが
これから嫌でも受け入れざるを
得なくなるのだろう。