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「選ばなかった道」を教えてくれたのは貴方でした。それからの旅立はグランドピアノと薔薇を運んできた驚くほど古い記憶の音楽家の夢のような時間を思い出させるのでした……。

 

笛とペン

 

言葉は笑った

 

失敗と敗北と

焼け跡の住家の前で

広がる大地に

稲の穂が美しく輝く

時間は前向きに戦っている

永遠は無いけれど

生命は止まることはなかった

冬の稲妻や乾いた時間を

知っているに過ぎない

変えていくことが道だった

 

唯一無二の優れた

ひとりでは無いけれど

肩書きのない身軽さで

神が選ぶものを見つめる

海辺の丘に十字架のお墓がある

はるばると旅をして来た人々が眠る

嵐が訪れ荒野の谷間は

機嫌の悪い夜だった

ひどい悲しみを纏った

かがり火が夜通し焚かれ

門を幽霊と荘厳で守った

 

稲穂を刈る音が

劍の時間を消すまで

葦を抜き文字を織る

愚かな悲しみを振り払い

喜びと威厳の布を籏印にして

野獣が荒らした道を

あなたの命が行く

傷ついた翼と

潮風と春に選ばれて

生き残った言葉は

暖かかった

こんなに傷つけ合って

戦いの勝敗を

誰も愛さなかった

 

 

 

 君の愛

 

今日を生きる名も無き君

君の愛は大きな力はないけれど

今を守っている

 

汚れている悲しみに

傷つき胸が痛む

そんな時君の優しさに救われる

 

向かい風の強さに

名も無き君の愛は 勇敢だ

華やかな舞台でも

誰も居ない場所でも

大地に立ち向かう

 

 月へ贈る

 

月の光が白い夜の底を

幻想的に映している

 

暖かい湧き水の不凍湖

夜空を地上に写し湖面に 星が降りて来る

 

水の上を 風が歩いて来た

七色の光が水面を奏でる

 湖に舟を 浮かべよう

暖かな眠りはニジマスを大きくする

 

月が輝く 夜空の

大熊座から湖に 星が降って

ニジマスは紅く色付いた

森小屋のスープに添える豊な恵

クリームシチュウに浮かぶニジマス

何という暖かな味

 

連れ去られた子供たちが

大人になる時

大熊座の母熊が森で歌う

子熊との出会いが幸せでありますように

別れの理由はニジマスが食べてしまったと

 

オーロラと出会う深夜

湖に落ちた星が ニジマスの中で輝いた

涙のように輝いた

 

湖に浮舟

別れの歌を 北斗七星の柄杓に入れ

黄金の国大和から 月へ歌を贈る