出逢い、という物が無かったかのように産まれた時から僕の人生にはあなたが居ました。
僕なんかが語れるような人では無いと思いますが、少しだけ今の気持ちを綴らせて下さい。
未だに遺骨となってお兄様の手に抱えられるあなたを見ても受け入れる事が出来ていません。
ここに綴りたい事は山ほどあるのにまず最初に思い浮かんだのはこんな話です。
僕は中学生でした。
当時は高校入試の為の面接練習という物があり、応接室のような部屋で教師が数名と校長?も居たのかもしれません、そんな授業がありました。
グループ面接での練習なので、廊下で順番待ちをしているのは僕を含めた3〜4人です。
その3〜4人はそれぞれが違うクラスなので、普段はあまり接点のないメンバーです。
その当時僕は、教師が真剣に怒っている姿を見ると何故か笑ってしまうタチでした。
それを見られ更に怒鳴られ殴られたものです。
当時は未だ体罰等がそんなに問題視されていなかったのです。
面接練習の本番を廊下で控えていた僕達は、中学生なりにシュミレーションをしていたのです。
今考えればおかしな話ですよね。
練習の練習をしているのですから。
そこで、僕は真っ先に言いました。
『尊敬している人は誰ですか?って質問されたら俺は志村けんって答えるから笑うなよ』。
他のメンバーはその志村けんというワードだけで大爆笑です。
皆んな多少緊張しているせいか、何を言っても吹き出してしまうような空気の中、更に僕がそんな事を言ったのだから、もう大変です。
『そんなこと言われたら絶対笑っちゃうから言わないでくれ』なんて言われたのかもしれません。
『まぁその質問は滅多に聞かれないだろう』なんてメンバーの誰かは言っていました。
僕らの前で面接練習をしている応接室に耳をすますと、この高校を志望したきっかけは?なんて質問をされていて、それを聞いていた僕らはそれぞれが脳をフル回転させ、どんな答えがいかに賢そうに見られるかを必死に考えていました。
そしていよいよ僕らの出番が来ます。
『失礼します』と言って一人ずつ部屋に入って行きます。
僕は最後に入ったので部屋に入る時も、戸を閉める時は前を見ずしっかり後ろを向いて閉めろと指導されていたのでそうしました。
最後に入ったという事は、他の人の答えを聞いてから答えられると心の中で少し安心していました。
いざ、部屋に入ると先生方は勿論真剣に取り組んでいるので緊張感が漂っています。
僕らも着席し、練習の練習をしたりしてふざけていた僕らもその緊張の空気に呑まれていました。
そしていよいよ最初の質問です。
校長のような1番のお偉いさんが開口一番こう言いました。
『尊敬している人は誰ですか?』
僕らは堪え切れずいっせいに吹き出しました。
その瞬間、武闘派の生活指導の先生に怒鳴られました。
『何ふざけてんだお前ら!』
僕ではない最初に答えなければならない生徒が僕の方を見て、『○○(本名)君の尊敬する人が楽しい人なのでつい‥』
全員の視線が僕に集まります。
一度ツボに入ってしまった僕らはもうその笑いを止める事は不可能です。
僕は必死に笑いを堪え、吹き出しつつ『志村けんさんです。』と答え、その理由も本当に必死に笑いを堪えながら説明しました。
その後、そんな状態では勿論練習にはならず『出て行け!』と言われ、放課後大説教をされたのは言うまでもありません。
何故かこんなエピソードをふと思い出しました。
このエピソード一つを取っても、誰もがあなたの事を面白い人だと知っています。
おそらく誰しもが、あなたと出会う事なくあなたは皆んなの人生に存在していたのだと思います。
なので、あなたが存在しない世界を知りません。
僕はこの世界に入り、いつか必ずあなたと共演したいと思っていた1人です。
対面出来た時にはこう言おうとまで考えていました。
今でも僕があなたに挨拶をしている所を客観的に自分が見ている、そんな夢を見ます。
『僕は志村さんを見て育ちました!共演出来て本当にこの世界に入って良かったなと思っています!』
そんな僕に対して本当に優しい笑顔であなたがこう言ってくれるのです。
『へぇ、そうなんだ。ありがとう。』