水底に沈む深い深い闇は

掬(すく)っても掬っても

それは漂う煙(けむ)のようで

なくなりはしない

人を形作るものは底知れない

秘められたその畏怖にも似た何かが

私達を個々に分けているのだとしたら

なんて曖昧で未知数で突拍子もない世界

空を切る一羽の鳥も

それを照らす太陽も月も

通り過ぎた記憶にも

あの日自分だけが知りえた虚像が現実のものとなり

全てを纏ってあなたはそこにいる

名前が生まれ時代が生まれ流れが生まれ

深い深い闇はいつしか光のような存在と化す

そこに眠るあらゆる可能性は誰も見たことはないし

いつ花開くかも永遠を彷徨うことになるのかも

それを知るすべはない