各指間の拡張練習の大切さ | ピアニスト 清水信守 Nobumori Shimizu

ピアニスト 清水信守 Nobumori Shimizu

埼玉県川口市在住のピアニスト、清水信守のブログです。
埼玉県川口市の清水ピアノスクール(https://shimizu-piano-school.com/)主宰
1児の父です。

ピアノを弾く際に、指と指の間がよく広がることに越したことはないと思います。

 

手が大きくなく指がそれほど長くなかったとしても、それぞれの指と指の間がよく広がれば、9度や10度のオクターブを弾くことも可能です。

 

ちなみに指と指の間が広がるか広がらないかは、手の内部の腱と筋肉が伸びるかどうかが重要な要素の一つなので、ピアノの練習前に、または日々の日課としてストレッチを行っている方も多いと思います。

 

Youtube等で検索をすると手のストレッチに関してはいくつか出てきますので、ストレッチの詳細はそちらに譲りますが、私としてはストレッチだけでなく「各指間の拡張練習」もオススメしたいと思います。

 

この「各指間の拡張練習」というのは私がフランスで習ったものですが、鍵盤上で行うストレッチの応用版のようなもので、4つ、または5つ等音数の多い和音を掴む際に絶大な効果を発揮します。

 

具体的にはまず右手で親指から「ドミソシド」の和音を弾き鍵盤を押さえます。

 

 

一度に弾くのではなくアルペジオのように順に弾いても大丈夫ですが、鍵盤を押さえたら指先のみに意識を集中して脱力します。

 

そして10秒ほどの間に指先への意識を保ったまま、ゆっくりと手首を上下します。

 

その後手を鍵盤から離し、他の「ミソドレミ」等の和音や左手でも同様のことを行いますが、椅子はかなり低くした方がやりやすいかもしれません。

 

通常のストレッチだけだと単なる手の広がりのみですが、この拡張練習は実際に鍵盤を手で押さえるため、より実践的に曲中の和音を押さえるための指や手の動きも鍛えられます。

 

もちろん最初は厳しかったら「ドミソシド」でなく音程を狭めても大丈夫ですし、逆に「ドミソシド」以上に幅の広い和音にチャレンジするのも良いと思います。

 

私自身は元々指はそれほど長くはありませんが、これらに取り組んだおかげで和音を弾くのがかなり楽になり、今では「ソシ♭ミ♭ソシ♭」や「ファラ♭シレラ♭」のような和音も一度に掴めるようになりましたし、シューマンのトッカータのような指の広がりを求められるような曲も弾けるようになりました。

 

 

 

(もちろん実際に曲中で出てきた場合はアルペジオで弾くと思いますが・・・)

 

 

 

(自分の演奏で恐縮ですが・・・)

 

スペインの巨匠ピアニストの「アリシア・デ・ラローチャ」も、幼少期から毎日の練習の前に日課としてこういった拡張練習を必ず行い、おかげで10度が届くようになったそうです。(本人談)

 

アリシア・デ・ラローチャはアルベニス、グラナドスやファリャ等のスペイン音楽のスペシャリストとして知られていますが、非常に小柄で手もかなり小さいことが演奏動画から分かります。

 

しかしその圧倒的な演奏からはそういったハンデをものともせず弾く様子が伝わってきますし、あのラフマニノフのピアノ協奏曲3番においても素晴らしい名演を残しています。

 

まさに日々の鍵盤上での拡張練習の賜物だと思います。

 


そしてこの拡張練習ですが、取り組むことによって腱鞘炎の予防にもなりますし、和音やオクターブを弾く際の脱力にも効果を発揮します。

 

日本人はどうしても欧米の方たちと比較すると小柄で、ピアノを弾く際に肉体的なハンデがある場合もありますが、こういったことに日々取り組むことでハンデを克服し、将来的に難曲にも挑戦できると思っています。