大分前に、Anderson & Roe という、ピアノデュオの演奏を、ユーチューブで偶然見つけた。
その映像では、ピアソラの「リベル・タンゴ」を弾いていて、若い奏者が自分達で連弾用に編曲したものらしい、極めてユニークな演奏だった。
プロモーション・ビデオという感じで、それも自作だったのかも知れない。
まず、男性ピアニストが一人で演奏を始めるのだが、相手の女性ピアニストは立ったまま、伴奏の音が出てくる部分の弦を、手のひらで押さえている。
その為、その部分の弦だけからは余韻の殆どない響きが出てくるので、あたかもチェンバロか何か、他の楽器と合奏しているかの様に聴こえてくるのだ。
そのうち、女性が左手は弦を押さえながら、右手で低音や高音を弾き加えてゆき、次第に連弾らしい音の厚みが出来上がっていく。
最初は、意表をつく奏法で驚かせるのだが、本来の姿勢に戻って弾き始めたその演奏は、更に意表をつく素晴らしい技術力で、たちまち惹きこまれた。
ネットで検索してみたら、ジュリアード音楽院で学んだ若い二人の様だったが、既に来日経験もあるらしい・・。
その後、暫くは忘れていたのだが、最近キリ・テ・カナワ繋がりで、二人の演奏する「ヴォカリーズ」の映像に出会った。
「リベル・タンゴ」の頃に比べて、二人とも年齢を少し重ねているし、その演奏姿も、正統的な素晴らしいデュオ奏者に変貌していた。
ゼルキンの演奏に比べて、やや遅めのテンポで始まって、それは悲哀のこもった、実に美しい演奏だった。
この演奏でも、上のパートが男性で、旋律を繊細に繊細に、まるですすり泣くかの様に優しくかなでている。
一方の女性の響きは、母なる大地といった風なスケールの大きな間の取り方で、豊かな音色の低音や、中声部のメロディも、ゆったりと聴こえてくる。
ジュリアード仕込みの二人のタッチは、切れも素晴らしい。
ユーチューブならばこその、貴重な出会いであった。