おもしろすぎる!。すごすぎる!。勘三郎さん。野田秀樹さん。 ~NODA・MAP番外公演「表に出ろ | ぴあらーのコラム

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なんか気になるなぁと思うことを、つれづれと綴る…予定。

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今でも、このお芝居のことを思い浮かべると、ついつい笑いが出てしまう。

これはお芝居だったのか?。

いや、コントだ!。延々80分に渡る、歌舞伎界と演劇界の両巨頭が作り上げた、壮大なコントだ!。

しかし、ずーっと笑いっぱなしだったぁ…。


9月5日~28日に、東京芸術劇場小ホール1で行われていた、NODA・MAP番外公演 「表に出ろいっ!」に足を運んだ。
ただ足を運んだだけじゃない。最前列で拝見させていただいた。

僕自身、野田秀樹さんの作品、NODA・MAP の作品は、実は特段好きなわけではない。

おもしろい!と、おっしゃる方の話をうかがうと、確かにおもしろそうなのだが、実際に自分が足を運んだ作品だけで言えば、やたら大げさなテーマと、やたら多い台詞数。
お芝居を観ている時には、その勢いで「ほーっ。」と思ったりするのだが、実は冷静に思い返してみれば、殊更に重厚なわけでもなく、特に凄いわけでもないと思っていて、だから、たとえ二ヶ月のロングラン公演であっても、チケットが即日どころか、一瞬で完売になる、そんなNODA・MAPのことを、「なにをそんなに、みんなありがたがって、観はるんかなぁ。」と思っていたりもするのである。


では、そこまで言い放っておきながら、何故、今回は劇場まで行ってしまおうと思ったのか。
それは、歌舞伎界の超大物、中村勘三郎さんの登場に、ほかならない!。

これまた別に、普段は歌舞伎を観るわけでもないんだけど、勘三郎さんが現代劇の劇場の芝居に出る。しかも、誉高き野田秀樹作品。これは事件だ!。

しかも、野田秀樹さんと娘役の方との三人芝居。
そして、劇場のキャパは、300人にも満たないというのだから、これは観ないわけにはいかないでしょう!、ということで、劇場に足を運んだわけだ。


今回も、いつものとおり、ずいぶんと大げさなテーマが掲げられていた。
東京芸術劇場のホームページより、かいつまむと、こんな感じである。

「信じるとは何なのか?。これは一夜にして崩壊する家族の物語。
人間の存在理由を思索する哲学という学問が廃れてしまった。けれども、人間は何かしら生きる意味を見出ださないと、生き難い。その空白を埋めるために、自らの趣味嗜好に過剰な価値を置く。
換言すれば、偏愛。その歪みにも気づかない。疑うことすらしない。ただの趣味嗜好なのに。
アミューズメントパークを偏愛する父、アイドル系を偏愛する母、ファーストフードを偏愛する娘。そんな3つの偏愛が混在する、バラバラな家族の物語である。」


ただの趣味嗜好に過剰な価値を置くんだってさ。

これをまともに演劇にされてしまうと、実はわたくしは耳が痛くなるんじゃないかと思ってですね、劇場に行ってみたわけです(笑)。

ところが、いざ幕を開けてみれば、「存在理由の思索」とか「哲学の退廃」とか、そんなんどこ行ったん?。今年55才の二人の男性による、「おばかなお芝居80分!」だったというわけですよ。

娘役の存在は、ちょっと傍らに置かせていただいて、(でも勘三郎さんと野田秀樹さんに臆せず、堂々とした演技とアドリブでした。)、父と母に絞って話を進めると…。

「東京ディスティネーションランド」という、どこかで聞いたことのあるようなテーマパークを偏愛する、勘三郎扮する能楽師の父。
一方、「ジャパニーズ」という、これまたどこかで聞いたことのある、アイドル集団を偏愛する、野田秀樹扮する母。

「東京ディスティネーションランド」「ジャパニーズ」、お互い、どれだけそれを愛しているかを語る一方で、お互いに相手方の価値観は全く受け入れない。
双方に見え隠れする「うさんくささ」を徹底的に攻撃しまくり、ののしりまくるのだ。

この「ののしりまくり」が、最高におもしろかった!。野田秀樹の圧倒的な言葉数、そして言葉世界が炸裂しまくりだった!。

最高のなかでも、特に気に入ってしまったのが、ジャパニーズが歌っているという「世界に3つや4つの花」。

この曲のオリジナル?となっている曲が、個人的には大嫌い(笑)。
何が、オンリーワンだか知らないけれど、僕が勝手に名づけている「負け組開き直りオンリーワン症候群」という、大っ嫌いな発想の元凶となっている曲だ。
大晦日の紅白歌合戦で、平和な世界を祈って、みなさん一緒に歌いましょう!、だなんて、恥ずかしいと思わないのかね。何が「特別なオンリーワン」なんだろうね。笑っちゃうよね。
あっ、口調が本谷有希子のお芝居になってしまってますが(笑)、これは僕がオリジナルだと思ってる曲は…、という話ですよ(笑)。

話を戻して、この「世界に3つや4つの花」をはじめとして、「ジャパニーズ」こばかにしまくりワールド炸裂だった。


一方の「東京ディスティネーションランド」のメインキャラクターは、鼻がやたらと高いねずみ。名前は確か、マッキーといったような…(笑)。
まぁ、勘三郎さんにねずみの耳をつけさせたり、マッキーだったかなぁ、キャラクターTシャツを着せては、脱がして、派手に破りまくって、投げ捨てるとか、もうやりたい放題。

そして、能楽師ということになっている勘三郎さんに舞わせてみたり、勘三郎・野田秀樹の二人揃っての階段落ちなどなど、芝居としては必要なん?、でも、やりたかったからやりました的な要素満載!。


最後の10分は、もう息も絶え絶えで、やっておられましたが、そらそうですよ。それまでの70分間、落ち着く間もなく、ずーっと高いテンションなままで、やっていらっしゃったわけですから(笑)。


もう本当に笑いっぱなしの80分。
この徹底した「ばか芝居」は、野田秀樹の言語感覚と、勘三郎・野田秀樹の好奇心と向上心が見事にはまって、観てから一ヶ月は経っているのに、いまだに笑えるほど、強烈なものだった(笑)。


最後に真面目な話。
このお芝居を自分に跳ね返してみると、様々な価値観を許容しながら、趣味嗜好に、いや自分にとっては仕事だと思っているが、これからも、いいと思ったものには過剰に走ろう!と。
そして、人生の大先輩である55才のお二人が、「自分のやりたいこと」を体当たりで表現して、懸命に走っている姿を、目の当たりにさせていただいた。
自分が55才になった時、そんな自分でいられるために、今の自分は何をするのか。
野田秀樹さんは「廃れてしまった」と言っていたけれど、「自らの存在理由を思索する哲学」に、ふけってみたりすることも悪くないと思う、今日この頃である。