パシフィックフィルハーモニア東京 第150回定期演奏会、おかげさまで無事終わりました
プログラムは
ワーグナー:歌劇「トリスタンとイゾルデ」より 前奏曲と愛の死
ベルク:抒情組曲より3つの小品(弦楽オーケストラ編)
ツェムリンスキー:抒情交響曲 作品18
指揮は音楽監督の飯森範親マエストロ、ソプラノの森谷真理さんとバリトン大西宇宙さん
今回のプログラム全体を連ねるテーマは『愛』
『トリスタンとイゾルデ』のように死を持って永遠になるものから、ツェムリンスキーの抒情交響曲のタゴールの詩のように、多角的で受け手の人生経験や想像力によって如何様にも解釈できる深みのある愛など、音楽も人生一筋縄ではいかないことを語っているかのようです
ベルクも道ならぬ恋愛中、この抒情組曲をツェムリンスキーの抒情交響曲に感銘を受けて引用して作曲した楽章もあるそうですし、ツェムリンスキーの作曲のお弟子さんの元カノはマーラーと結婚し、マーラーの『大地の歌』をオマージュとして作風を踏襲して(そっくりに思えるところも!)抒情交響曲を作っており…
天才は一人では生まれず、必ず刺激し合う仲間たちとの交流があり、その中には魅力ある女性も絡んでいることをこの場面でも思わずにはいられません。
マーラーの『大地の歌』は中国の詩を用いていましたが、ツェムリンスキーの抒情交響曲はインドのノーベル賞受賞者タゴールの詩を用いて、愛が成就していくのではなく別れていくように詩の順番を組み直して作曲したとのこと。
音楽も調性が飽和して愛情も幸せな出口を見出せず決壊していくかのよう。
ロマン派がメルヘンや自然を題材にしていたものから、オリエンタルな別の現実世界に繰り出して行ったように時代は動き、そこに19世紀末から20世紀初頭のクリムトやエゴン・シーレの絵のようなウィーンのその時代の空気を感じる今回のプログラムでした。
演奏する方としては譜読みも大変でしたが、演奏し終えても深い余韻を味わうことができました
毎回ではありますが、全力渾身のプログラムです✨
このような紹介ブログをいつもコンサートの前に書きたいと思うのですが、時間、体力、気力が毎日精一杯で過ごしているので、コンサートの宣伝にならないのがいつも無念に思っています
毎回終わってもっとたくさんの方々に聴いて頂きたかったと思うので、あまり知らない曲のプログラムでも、『PPT(パシフィックフィルハーモニア東京)の定期演奏会は何か感動を感じることができる』と期待してお越し頂けたら幸いです✨
ちなみにまだc シリーズの定期会員も発売中です✨
しかし、ツェムリンスキーはフルートは吹かなかっただろうと思うのは、無理難題を書いていること。
フルートを吹く人だったら低音のd♭とe♭をトリルさせるなんて、小指を左右にスライドさせなくてはならないので書かないと思います。(私だったらせめてd♭でフラッタータンギングさせるかな)
ですが、楽譜はレンタル譜なので、前にやった人が、テープでd♭のキーを押さえた状態で止めるように書いていました
そして1stと3rdフルートには低音のb♭の音が出てきます😅
これには紙を筒状にしたものやホースなどを突っ込んで管の長さを足してb♭の音を出すことはできます。
首席フルートの荒川さんはb♭の継ぎ管を持っていらっしゃいましたさすが
ツェムリンスキーはこういう奥の手ができることを知って書いたのでしょうか
そうやって現在に至るのだなぁと思ったりしました