これは面白い!








日本の古き良き歌たち。日本人の深く奥床しく、繊細かつ豊かな感性の素晴らしさを再確認。
規則正しいリズムを規範とした美を持つ西洋音楽から見たら、日本古来の唄も現代音楽も理解不能、そりゃ当たり前です。

日本人特有の歌い回し・節回しは、現代の私たちにだってちゃんと遺伝子レベルで受け継がれている。
日本人にしか感じ得ない日本人ならではの歌心・・・本当に美しい。
この「美」への独特な感覚・・・本当に大切に、次世代へ残していかなければなりません。


かつては西洋音楽を一挙にごっそりと輸入した身である日本人だけど、歌うときも、楽器を演奏するときも、西洋の音楽をやってるからって、なにも媚びた演奏をする(日本人の気質を封じたような演奏をする)必要はない と思うと同時に、
あちらで生まれたあちらの音楽の譜面を見ている以上、自分の中に元々無い物を即席でこしらえたような?着こなせていない借りてきた服のような?仕上がりになってしまうことだけは避けたい。

その危険性と常に背中合わせであることは、私たち日本人奏者の宿命なのかな?

しかしながら・・・
島国根性に、どちらかというと否定的だった私は、この本を読んで一変してしまいました。
そして自分の音楽に対する概念に新たな新風と課題を大いに与えてくれました。

それと、
西洋人の日本の音楽に対するトンチンカンなところ、日本人の西洋音楽に対するトンチンカンなところ などもまた、大いに笑わせてもらいました。





当たり前に身体に流れている日本人の音楽の血(とくに歌唱)を、徹底的に探り解明するところから、どんどん読み手を惹きつけていく石井宏さん著者。
あとがきを読むと、一見どちらかというと左寄りではあるが、いやいや、視野の広さがそう思わせるのであって、実際は至ってリベラル的ではないかと思う。
自分も素人ながら細々と物を書いているという面では勉強にもなる。こちらの興味をいかにも誘うような文章は決して出てくることなく 淡々と分析されたご本人の頭の中を汲まなく丁寧にリアルに開示してくれていて、だけど「それ、あるある!」「あー、なんか分かるわぁ〜・・・」な感情が勝手に頻繁に湧き出てくるから、不思議だ。
こういう終始普遍的な内容の物に、どうしても寄って行ってしまう私。いやいや、私だって至ってリベラル主義。そんでもってお宝いっぱいの、ミニマル図書館派 笑。

しかし、稀にこういう読書を味わってしまうと(まぁ興味の問題ですが)、次のヒットが難しい。。。
かたや哲学書となると頭悪すぎて挫折ばかりだし。


本はいつも図書館で発掘して、お返ししたくない気持ちになって初めて自分で購入するのだが、
それでも中古本を探す。もちろん安いからだけど、なによりも味が出てる感がいい。


いろんな人の懐を渡り歩いてきた本が 好き。