その①は 「はじめに」 でした。
今回は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 上 です。
診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」
聖路加国際病院放射線科 医長 角田 博子先生
画像診断でできること
・乳房になにか症状があるとき
何か触れるようなものがある…
これってしこり?
ブラジャーの乳首の触る部分が汚れる
お乳の先からなにか液体が出てる?
生理の前じゃないのに、もう閉経したのにお乳が痛い
・何も具体的にはないけど、なんとなく心配
40歳もすぎたし、乳癌が増えているって聞いたから検診を受けに行こう!
画像診断でできることは何か。
例えば乳房に何か症状があると 「触れるものがあるがこれってしこりなの?」
「ブラジャーの裏側の乳首の部分がいつも汚れていて、お乳の先から何か液体が出ているのではないか?」
「生理前ではないのに、もう閉経しているのにお乳が痛いのはなぜか?」
などを心配されて当院の外来にいらっしゃる方が多い。
あるいはなにも具体的にはないが沢山の情報があり
「自分も乳癌になるのではないか」と心配であるという方は、病院ではなく検診を受けることになる。
これらの方々に画像診断はどういう役割があるのかという説明をしたい。
画像診断でできること
医師の触診は今でも重要な検査方法ですが・・・
画像診断ではより正確に、
たとえばしこりが悪いものか、良性でほっておいていいか、
あるいは触ることのできない乳癌がないかどうか 調べることができます
病院に行くとまず外科の先生が触って確認するが、それを「触診」という。
触診は今でも重要な検査方法であるが、触れないものはわからない。
そこで重要なものが画像診断になる。
画像診断は触れているしこりが悪いものなのか、良性で放っておいてもいいものなのかがわかるし、
また全く触ることができないものが画像で写ってくることもある。
画像と一口に言っても色々なものがある。
マンモグラフィ、超音波検査、MRI、CT、この4つ以外にも色々な画像診断があるが、
それぞれ得手不得手がある。
今日はよく検診で使われるマンモグラフィを中心に超音波の話もしていきたい。
撮影状況の写真である。
「圧迫板」と呼ばれる透明な板でお乳を挟んで押し広げるような感じで撮影をする。
するとこのような画像が撮れる。
これは正常なマンモグラフィの写真である。
私達放射線科の診断医はこの写真を見てどこかに異常がないかを判断している。
これは横から見たもの。
女性の胸部を横から見るとまず「大胸筋」という筋肉がある。
乳首からは「乳管」という管が木の枝のように分かれている。
その間にミルクを作る工場にあたる「乳腺実質」という構造があって、
このマンモグラフィで白く写っている所が「小葉構造」と呼ばれる乳腺実質である。
黒く見えている所が「脂肪」、右上に白く写っているのは「大胸筋」、こんな感じで写真が撮れる。
Q2. マンモグラフィで乳癌はどのように写りますか
・大きく分けて
腫瘤 (周囲と異なる塊、占拠性病変)
石灰化
その他
の3つに分類して考えられています
マンモグラフィで乳癌はどのように写るのか。
私達は大きく3つに分けている。
・「腫瘤」 塊があるもの。専門用語で周囲と異なる塊、「占拠性病変」というしこり。
・「石灰化」
・「その他」 しこりや石灰化ではないが写ってくるもの。
皆さんがご覧になっても黒い脂肪の背景に白い塊があるのがわかると思うが、
しこりがギザギザになっていて少しいびつな形をしていて比較的白い。
これは典型的な乳癌である。
石灰化は砂の粒をまいたような白い点々の構造である。
拡大するとよくわかると思うが、
白い雲のような乳腺実質の構造の中に粒々の白い砂をまいたような構造がある。
これが石灰化と呼ばれるもの。
注意してもらいたいのはしこりや腫瘤や石灰化が写っていたからといって、
それが全部悪いものかというと決してそうではない。
しこりや石灰化以外の「その他」の1つの、最近多くなってきた「構築の乱れ」という所見である。
丸の部分を拡大したのが右の画像であるが、
ギュッと引きつれている箇所、構造が寄っているような感じがある。
「構築が乱れている」と私達は理解している。
これは乳癌であるが、しこりも石灰化もないので慣れていないと中々診断が難しい分野の1つ。
Q3. 腫瘤や石灰化は即、悪性の所見なのでしょうか
・いいえ
・それぞれに悪性と良性があります
・腫瘤があるからといってすぐに乳癌と決まったわけでもないし、
石灰化=乳癌ではないのです
腫瘤や石灰化は即、悪性なのか。
腫瘤も石灰化も構築の乱れも、それぞれに悪いものと良いものがある。
しこりがあってもすぐに乳癌と決まったわけでもないし、石灰化イコール乳癌でもない。
もし検診を受けて「石灰化がある」といわれたとしても、それがすぐ乳癌ではないということを理解して、
でも乳癌の可能性もあるのでしっかり精密検査を受けてもらいたい。
マンモグラフィガイドライン
カテゴリー分類 病変が悪性である可能性を見極める
カテゴリー1 : 異常なし
カテゴリー2 : 良性
カテゴリー3 : 良性の可能性が高いけれども 悪性も否定することはできない
カテゴリー4 : 悪性の疑い
カテゴリー5 : 悪性
私達が使っているマンモグラフィのガイドラインに「カテゴリー分類」というものがある。
カテゴリー1からカテゴリー5まで分かれているが、
腫瘤や石灰化もそれぞれカテゴリー1から5まで分類されるものが入ってくるので、
決して必要以上に怖がる必要はない。
Q4. マンモグラフィ上の腫瘤はどのように良性、悪性を決めていますか?
・腫瘤の濃度(白黒の強さ)、形、縁の部分の状態などから
良性と悪性を考慮しています
マンモグラフィ上の腫瘤がカテゴリー1から5まであるのなら、どのように良性・悪性を決めているか。
最初に白い濃いしこりを紹介したが腫瘤の濃度、つまり白黒の強さ、
そして形、縁の部分の性状などから良性なのか悪性なのかを決めている。
ガイドラインに決められている診断のフローチャートである。
もちろんこれは原則で、ここから外れてくるものもある。
専門家の経験、あるいはフローチャートからどういうものが外れているのかがわかっているので
それぞれで診断していくが、大まかはこんな感じである。
例えばしこりがあるとして、腫瘤の縁の部分がクリッとしていてツルツルな感じなのか。
あるいは「微細分葉状・境界不明瞭」というちょっとぼやけている感じなのか。
または「スピキュラを伴う」というがトゲがあるようにギザギザだと
典型的な乳癌でカテゴリー5と判断される。
カテゴリー5と判断されるとほとんどの場合で乳癌であるとされる。
これは境界が明瞭でツルツルなしこりだが、
カテゴリー3と分類され、良性の可能性が高いが中には癌の可能性もあるという分類である。
周りの部分に比べて白い部分が強い。
右側が超音波検査だが、今度はマンモグラフィーで白く写っていた部分が真っ黒に写ってくる。
超音波でもツルツルクリクリであることがわかると思う。
これは実際は「のう胞」と呼ばれる典型的な良性のしこりである。
マンモグラフィでかなり大きく見えるが、これは決して癌ではなく、
放っておいて大丈夫で治療の必要はない。
これはスピキュラを有する腫瘤、
カテゴリー5の典型的な乳癌で、ギザギザのある不整形でトゲのあるしこりである。
病理の顕微鏡で覗くと左のように見える。
診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 上は以上です。
次回は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 中 をUP予定です。