叩けよ さらば開かれん -4ページ目

叩けよ さらば開かれん

Yahoo!ブログからの引っ越しです


その①は 「はじめに」 
その②は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 上
その③は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 中
その④は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 下
その⑤は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 上
その⑥は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 中
その⑦は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 下
その⑧は 外科編 「外科的治療の進歩-小さく見つけて、小さく治す-」 上
その⑨は 外科編 「外科的治療の進歩-小さく見つけて、小さく治す-」 下
その⑩は 内科編 「一人一人の治療を考えよう-オーダーメイド治療へのご案内-」 上
その⑪は 内科編 「一人一人の治療を考えよう-オーダーメイド治療へのご案内-」 下
その⑫は 診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なの?-」 上
その⑬は 診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なの?-」 下
その⑭は 「パネルディスカッション」 上
でした。

今回は 「パネルディスカッション」 中 です。

Q
・非浸潤癌は正しく治療すれば転移や再発の心配はありませんか。

・浸潤癌と非浸潤癌の違いについて教えてください。
土屋先生 非浸潤癌は正しく治療すれば転移や再発の心配はない。
       先程電車で説明したが、乳管というお乳の管の中に留まっているのが非浸潤癌
       乳管の壁・管を破って外に出てきたものが浸潤癌で 
       電車を乗り換え血管に入り 遠隔転移をおこす可能性がある。
       電車は基底膜という板によって囲まれているので癌細胞が基底膜を破った時が浸潤である。

渡辺先生 浸潤というのは電車から降りた先でタンポポの種のように風に吹かれて遠くの土地に飛ぶ事。
       リンパや血液の流れに乗り他の場所に移ってゆくが、どこに飛ぶかは手術の時点ではみえない。
       つまり翌年花が咲いて初めてタンポポの種がこんな所まで飛んだと判るのと同じで
       浸潤していない非浸潤癌なら種が飛ぶ可能性は極めて低いので心配ないが
       浸潤していたら種が飛んでいる対応として、全身的なお薬の治療を考る必要がある。

Q
・乳がんの疑いで細胞診という検査を受けたら良性との事でした。
 本当に良性なのか心配です。

・検査の結果についてセカンドオピニオンをと思っていますが、
 どのようにして探したらよいのでしょうか。
坂元先生 癌があっても癌細胞に針が当たっていなければ『良性』となる。
       細胞診も針生検も癌が出たら癌だが、出なくても癌でないという保証はない。
       細胞診は小さな細い針をさして細胞を取ってくるもので 針生検は組織を取ってくるもの。
       量が多い方が何の組織かも判るのでどちらかというと針生検の方が良い。
       土屋先生は細胞診のセカンドオピニオンはされていますか?

土屋先生 取ってガラスにのったものを私が良性が悪性だという事が何度かあった。
       取る人にもよるが特に細胞診は非常に細胞が少ないので
       注意はしているが診断精度は針生検と差がある。
       ところが簡便性・費用が安い・開業医の先生はマンモトーム等大きな機械は使えないなど
       すぐにできる細胞診は減っていない。
       針生検は増えているが、細胞診が病理医の目に触れる機会はこれからも少なくはならないと思う。

Q
・乳房温存手術で、小さく部分切除しても変形に悩んでいる人が少なくないと聞きます。

・温存手術でも、手術するからには多少の変形は仕方がない事なのでしょうか。
中村先生 乳房を残すとしても切除範囲が広いとどうしてもボリュームが足りなくなり
       左右のバランスが崩れることがあり 場所によっては補えない事もある。
       今は再建手術が普及してきているので、部分的に取って自分の乳房を残した方が良いのか
       再建手術でよりきれいな形でバランスのとれた乳房となった方が良いのか
       その選択に関しては主治医とじっくり相談した方が良いと思う。
       温存手術といっても色々な方法があり、なるべく傷が目立たない、
       あるいはボリュームが損なわれても回りの組織を使って形をつくる技術が
       徐々にでてくるので、それも含めて主治医と相談してほしい。

Q
・手術後の写真を見せてもらい、参考になったという話を聴いた事があるが?
中村先生 傷がどのような形で残るかは絵より写真の方が判りやすい。
       再建手術でどのように復元できるかも写真の方が判りやすいと思うが
       乳癌の位置やご自身の乳房の大きさや形で違ってくるので よく聞いて理解してほしい。

Q
・半年前に温存手術をうけましたが、
 手術をした方の乳房が少し吊れているようにみえて気になります。

・山田さんは乳房の美容整形を考えた事はありましたか?

・ご主人さまはどうおっしゃっていますか?
山田さん 私の癌は3つあり、右は上を切って上に縫い縮め、左は下を切り下に縫い縮めた。
       右はうまく上にキュッと上がったが 左は下に下がりトップの位置がずれた。
       幸いな事に全部小さなものだったので温存の中でも綺麗にしていただいたと思うが
       自分で手術の前の胸を知っているので 比べるとメッチャクチャだなぁという感じ。
       「もういいです。オッパイはいらないのでザッパリ切ってください」と頼んだくらいだが
       元気になるにつけ ああ残念だと思ってしまう。
       でも術後2年経って今私が考えるのはここまでである。
       もっとこの先いやだなぁという思いが募れば美容整形を考えようと思う。
       5年、10年後はわからないが ゆっくりと自分のオッパイと付き合っていきたい。
       主人は案外これで良いと思っているようである。

Q
・乳癌と診断され 術後にはホルモン療法と抗がん剤治療をする事になっていますが、
 副作用で髪が抜けてしまうのが嫌でたまりません。

・髪が抜けない抗がん剤はないでしょうか。
渡辺先生 何の為にホルモン療法や抗がん剤治療をするか正しく理解してほしい。
       浸潤癌はタンポポの種のように全身に転移が広がっている可能性があり
       種を撲滅するのが術後のお薬の治療である。
       種が少なければあるいは必要ないが
       沢山飛んでいたら叩いておかなければ 再発したら完全に治すのは難しい。
       勝負するとすれば、その必要があれば今しかないという事になる。
       ホルモン療法が効くタイプならホルモン療法だけでよい。
       少しは効くがあまり効かない場合は補う形で抗がん剤治療が必要になる。

       抗がん剤治療の種類には12週で終わるが髪が抜けるACという治療がある。
       3週に1度4回だが、最初に点滴してから15日くらいでビックリする程髪が抜ける。
       ただ半年くらいでポチポチ生えてきて1年くらいでボーイッシュな感じになり、元に戻っていく。
       それでも嫌だとなれば2年間の飲み薬、UFTがある。
       これは髪は抜けないが2年間毎日毎日飲まなければならず、
       最初肝臓に影響が出たり気分が悪くなったりするが1ヶ月も経てば副作用は減る。
       短期間で済むが髪が抜けるか2年間薬を飲み続けるか、自分で考え主治医とよく相談してほしい。

Q
・髪が抜けると予想される患者さんに対して ウィッグや生活の工夫等の紹介はありますか?
渡辺先生 先程紹介した患者さんのためのガイドラインに どこで入手できるか等具体的に書いてある。
       素敵なかつらで思い切ったお化粧をしてみようとか、帽子やスカーフを楽しもうとか
       発想を変え逆手にとり 楽しみに変えて乗り切る事もひとつの方法だと思う。

Q
・マンモグラフィー、エコー、CT、ペット等の検査で乳房にしこりが見つからないのに
 乳癌が脇の下のリンパ節に転移する事もありますか? (友人がそうでした)
坂元先生 実際にあるが非常に稀で 癌研で2万例くらい乳癌をみたが6例程しかなかった。
       最近は画像診断が発達しているので昔よりみつからなくなっている。
       リンパ節転移かと思ったら脇の下まで乳腺が伸びている副乳で、それ自体が乳癌という事もある。
       副乳だとそこが原発巣になる。
       癌研で6例あった時は10年以上前の話だがそちら側の乳房を全部とり
       切って調べてみると画像では写らないような癌があった。
       HER2が3+というどちらかというと性質の悪い癌では1、2mmでもパッと転移し
       原発巣が消えてしまう事も多いので最近はとらずに様子をみて、ハーセプチンをする例もあった。
       また普通は標本は5mm間隔で切るので、2、3mmの癌だとみえない場合もある。

中村先生 後の治療にも関係するので色々調べる必要がある。
       特に脇の下にあるという事は その後全身の予防をしなければならない。

      https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/3c/8c/pi0830pipikapi/folder/1622272/img_1622272_31239507_1?1201412803.jpg

「パネルディスカッション」 中 は以上です。

次回は 「パネルディスカッション」 下  をUP予定です。

その①は 「はじめに」 
その②は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 上
その③は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 中
その④は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 下
その⑤は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 上
その⑥は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 中
その⑦は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 下
その⑧は 外科編 「外科的治療の進歩-小さく見つけて、小さく治す-」 上
その⑨は 外科編 「外科的治療の進歩-小さく見つけて、小さく治す-」 下
その⑩は 内科編 「一人一人の治療を考えよう-オーダーメイド治療へのご案内-」 上
その⑪は 内科編 「一人一人の治療を考えよう-オーダーメイド治療へのご案内-」 下
その⑫は 診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なの?-」 上
その⑬は 診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なの?-」 下
でした。

今回は 「パネルディスカッション」 上 です。


司   会   中村 清吾先生 / 岡﨑 明子(朝日新聞社)
パネリスト   角田 博子先生 / 土屋 眞一先生 / 渡辺 亨先生 
         坂元 吾偉先生 / タレント 山田 邦子さん

Q
・あるクリニックでマンモグラフィを受けたところ、石灰化が見られるので、
 半年後に再度マンモグラフィを受けるように言われました。

・石灰化とはどのような状態でしょうか。 今後必ず悪化するのでしょうか。
 このような場合、マンモグラフィはどのくらいの間隔で受けるべきでしょうか。
 マンモグラフィの放射線の身体への影響についても教えてください。
     まず理解していただきたいこと

 ・有機基質にリン酸カルシウムがアパタイト結晶として沈着する現象
 ・検診で検出される石灰化のかなりの部分が良性石灰化であるということです
 ・石灰化のみで、ほかに所見がない場合、
  たとえ乳癌であっても非常に初期の場合も少なくないので、適切な治療で治療が可能です
角田先生 石灰化はカルシウムの沈着である。石灰化といっても良悪性の両方がある。
       石灰化の他に大きな所見が無い場合は、例え乳癌でも非常に早期の場合が少なくないので
       きちんと治療して早く元気になりましょう。

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角田先生 これは良性の石灰化の典型像である。
       沢山あるように見えるが 良性である。

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角田先生 このフローチャートに基づいて良悪性を決めて診断をしている。
       怪しいとなったものは針をさして病理医に診ていただく。 

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角田先生 これは沢山あるが良性で 針を刺す必要が無い。

イメージ 4

角田先生 これは悪性の疑いがかなり高いので 針をさし組織をとり診断することになる。

     石灰化のみの病変は多くの場合触知できません
     ではどうやってアプローチしているのでしょう

 ・超音波で見えた場合には、超音波で見ながらアプローチする
 ・マンモトームで石灰化を採取する
 ・マンモグラフィを半年ごとに撮影して、石灰化が変らないかどうかをチェックする
角田先生 石灰化の経過観察はどのくらいの間隔でするのがよいかということだが
       まずマンモグラフィで石灰化が見えたときは別のモダリティ、超音波をやってみる。
       先程の講演でどちらも得意・不得意があると説明したが
       超音波で何かみえたときも超音波でみながら針をさせる。
       まず両方からアプローチすることが大切である。
       もし超音波でみえない・非常にみにくい時はマンモトームという手法でとることもできる。
       ただ悪性の可能性がかなり低い石灰化にも皆針をさしていては傷だらけになってしまうし
       早く発見しても生命予後には関係ないというのも結構沢山ある。
       その時には大体6ヶ月様子をみて 石灰化が変らないかどうかをみている。

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角田先生 矢印の先のところに石灰化がある。
       この方は6ヶ月ごとに2年間拝見して全く変らず、ここまでくればまず良性である。
       石灰化があったからといって、即針をさすことは万能ではない。
       よく診断して経過観察で十分なものも沢山ある。
       万一途中で増えたり悪性かもしれないと思った時点で針をさしても間に合うので
       まず針をささねば・マンモトームを受けなければとは思わないでほしい。
       どういう診断・治療が1番適切なのかは その石灰化によってかなり違うのである。

     マンモグラフィってX線撮影のことですよね、被爆は大丈夫でしょうか?

 ・大丈夫、私たちが普段知らないで浴びている被爆と比較しても小さいものです
 ・30歳から毎年検診でマンモグラフィを撮影したとしても
  (現厚生労働省では40歳以上が検診の対象です)リスクより利益の方が高いという統計もあります。
角田先生 マンモグラフィはX線なので 大丈夫だろうかという疑問は当然出てくると思う。
       しかし私達が普段知らない間に浴びているX線もかなりある。
       検診の対象は40歳以上だが 仮に30歳から毎年80歳まで受けていても
       リスクより利益の方が大きいという厚労省のデータもある。

     マンモグラフィの被爆

 ・マンモグラフィで乳房があびる放射線線量 : 吸収線量 1-3(2)mGy
 ・たとえば、不妊の原因となる放射線線量
     一時的無精子症        250mGy
     長期の不妊          5000mGy
角田先生 マンモグラフィで受ける被爆量は1から3ミリグレイという吸収線量だが
       以前集めたデータでは日本は2ミリグレイくらいで収まっているところがほとんどである。
       例えば不妊の原因となるような放射線量と比べると全然小さく、まず心配はない。

     マンモグラフィの被爆

 ・自然放射線(大地から、宇宙線などの合計)
    実効線量  2.40mSv/年
      地域差も大きい
         岐阜           0.78mSv
         神奈川          0.42mSv
 ・飛行機旅行による増加
    東京 - サンフランシスコ   0.04mSv
 ・マンモグラフィ(組織加重係数)  0.05 - 0.15mSv
角田先生 私達が生活しているだけで受ける大地や宇宙線からの被爆を自然放射線というが
       1年間に2.4ミリシーベルトで これは地域差が大きい。
       岐阜で0.78ミリシーベルト、神奈川で0.42ミリシーベルト、住んでいる所だけでこれだけ違う。
       また飛行機で東京からサンフランシスコに行くと片道で0.04ミリシーベルトくらい浴びる。
       マンモグラフィは1枚撮ると0.05ミリシーベルトといわれている。
       岐阜と神奈川と住んでいる場所が違うだけで年間で0.3ミリシーベルト差がでるので
       これくらい心配ないと思ってほしい。

     マンモグラフィの被爆

 ・被爆は 0 じゃありません
 ・不必要な被爆は避けるべきですが、必要以上に怖がることもないのです
 ・妊娠されているときには、必ずその旨をおっしゃってください
角田先生 でも被爆は0ではないので、必要がなければ受けない方が良いのは確かである。
       必要十分に検査をすることが大事で 不必要に恐れることはないと頭に入れていただきたい。
       妊娠中に撮っても大丈夫な場合もある。
       妊娠中に検診を受ける必要はないが、しこりがある時などは病院に行き必ずその旨を伝えてほしい。

       マンモグラフィは40歳以上は2年に1回、
       また石灰化などのフォローアップで6ヶ月に1度となっても 
       被爆が多くて心配することはない。

      https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/3c/8c/pi0830pipikapi/folder/1622272/img_1622272_31239507_1?1201412803.jpg

「パネルディスカッション」 上は以上です。

次回は 「パネルディスカッション」 中  をUP予定です。
  

その①は 「はじめに」 
その②は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 上
その③は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 中
その④は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 下
その⑤は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 上
その⑥は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 中
その⑦は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 下
その⑧は 外科編 「外科的治療の進歩-小さく見つけて、小さく治す-」 上
その⑨は 外科編 「外科的治療の進歩-小さく見つけて、小さく治す-」 下
その⑩は 内科編 「一人一人の治療を考えよう-オーダーメイド治療へのご案内-」 上
その⑪は 内科編 「一人一人の治療を考えよう-オーダーメイド治療へのご案内-」 下
その⑫は 診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なの?-」 上
でした。

今回は 診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なの?-」 下 です。


     乳腺病理診断科
   坂元記念クリニック・乳腺病理アカデミーの設立の基本理念

  1) 精度の高い乳腺病理診断を提供する
  2) 病理医の地位向上
坂元記念クリニック・乳腺病理アカデミーは乳腺病理診断のみである。
今までは病理診断は標榜することができなかったが2008年から乳腺外科や病理も出来るようになった。
臓器名もつけてよいので保健所に『乳腺病理診断科』を届け出て
日本で唯一の乳腺病理診断科を標榜している。
病理診断科を標榜しているところは何件かあるが『乳腺』病理診断科を標榜しているのはここだけである。

     乳腺病理に特化した理由

   乳腺腫瘍の病理診断は難しい
    (例) 乳頭状病変の良悪性診断

   わが国には乳腺病理の専門家は殆どいない
私は40年ほど癌研にいて2006年に定年退職し坂元記念クリニック・乳腺病理アカデミーを開院した。
その目的の一番は精度の高い乳腺病理診断をすることにある。
何故他の病理ではなく乳腺病理に特化したのかというと
乳腺以外はケバケバしたものが癌であり、まず良悪性を間違えることはなく、ほとんどはみればすぐに判る。
乳腺はそこが違うので非常に難しい。
特に乳頭状病変のような乳管内の病変の良悪性が難しい。

今でこそ乳癌は女性に1番多い癌になったが
8700人会員がいて 今回5300人が来た乳癌学術総会も、以前は乳癌研究会であった。
乳癌研究会の頃は会員は100人しかいない時代もあり、昔から乳腺の専門家はあまりいない。

     坂元記念クリニック・乳腺病理アカデミー
   ① 生検の良悪性診断
   ② 病理診断のコンサルテーション
   ③ 病理標本のセカンドオピニオン
私の病院には一般の病院でされた針生検などの良悪性の診断がくる。
病院の先生方も困っていて 本当に癌かと思いながらも、病理が癌といったのでオペをしていたり
あるいは病理の先生もわからないで困っているものをみるという病理診断のコンサルティングをしている。

病理標本のセカンドオピニオンとは、病理診断が正しいかどうかを患者さんが主治医に頼み
主治医から私のところに標本を送り、私が診断後、結果は患者さんではなく主治医にお返し、
答えは主治医から聞くというもの。
患者さんが私の病院に来ることはない。

     精度の高い病理診断提供の目的

   患者さんは: 適切な治療を受けられる
   臨床医には: 安心しての診療を行える
   病理医には: セーフティネットとなる
   社会的には: 無駄な医療費を削減する
精度の高い病理診断の目的とは、患者さんが適切な治療を受けられる、
臨床医はきちっとした診断で安心して診療を行える、病理医にはセーフティネットとなる、
社会的には、良性を癌と診断し治療すると私の試算では年間600億くらい医療費が無駄になるので
これが削減できる。

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これはSt.Gallen Conference 2007のリスクカテゴリーだが
初期の乳癌はそのリスクによって分かれる。
その上で ER、PgRなどのホルモンレセプターが陽性なら内分泌治療をしようとか
HER2が陽性ならハーセプチンが効くなどで主治医が治療をするが
実はこの7つのことは 年齢以外は全部検査の上病理医が診断している。

ところが現在のSt.Gallen Conference 2009のリスクカテゴリーからは『年齢』が消えてしまった。
臨床の先生がわかることはひとつもなくなり、全て病理医が診断したものにより治療をする。
ここを間違えると化学療法をやらなくてよい人にやってしまったり、必要な人に治療がされなかったりする。
しかし病理医は癌だけを診ているわけではない。

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外科医の数は日本は23000人くらい、アメリカは35000人。
アメリカの人口は日本の倍くらいなので、比率で考えると15000人相当で日本の方が多くなる。
ところが病理医はアメリカが20000人に対して日本は1900人しかいない。
しかもその1900人は歳をとった人、60・50歳代が多い。
今日本で20歳代の病理医は100人もいない。

アメリカでドクターと言えば皆から尊敬されるが、特に病理医はドクターの中でも尊敬を集めている。
しかし日本では皆さんも病理医のことはよく判らない。
私の娘は小学校のとき病理医がなんだか判らず、病院で料理を作っていると思っていたくらいである。

なぜ日本で病理医が少ないかというと一人前になるまでに時間がかかるからである。
10年はかかるが、アルバイトも出来ず、その間臨床の先生とは違いご飯を食べていくことができない。

病理医がどんどん年々減っていけば、やがて皆さんの手術・治療に大きな影響を及ぼす。
従ってこれは保護していかなければならない。

絶滅寸前のトキと一緒で、病理医を保護して育てていって
乳癌の診断が出来るようになる… そういうことを目指しているのである。

      https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/3c/8c/pi0830pipikapi/folder/1622272/img_1622272_31239507_1?1201412803.jpg

診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なのか?-」 下は以上です。

次回は 「パネルディスカッション」 上  をUP予定です。
  
           
      先日の基地祭でのYS-11の編隊飛行です。
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      私的には最後の撮影かな(滂沱)

ぴぃのブログにようこそ♪

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                                                      アクセス解析

その①は 「はじめに」 
その②は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 上
その③は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 中
その④は 診断編 「知っておきたい乳癌の画像診断」 下
その⑤は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 上
その⑥は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 中
その⑦は 病理編 「乳癌をみてみよう-ミクロの世界へのご案内-」 下
その⑧は 外科編 「外科的治療の進歩-小さく見つけて、小さく治す-」 上
その⑨は 外科編 「外科的治療の進歩-小さく見つけて、小さく治す-」 下
その⑩は 内科編 「一人一人の治療を考えよう-オーダーメイド治療へのご案内-」 上
その⑪は 内科編 「一人一人の治療を考えよう-オーダーメイド治療へのご案内-」 下
でした。

今回は 診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なの?-」 上 です。

診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なの?-」

                            坂元記念クリニック・乳腺病理アカデミー院長 坂元 吾偉先生

病理診断について土屋先生が話されたが また別の観点からみてみたい。
   患者さんは「乳癌です」と言われると
          ↓
   まず「どこの病院でどんな治療を受けるか」を考え 検討する
          ↑
   でも、その前に本当に乳癌なのかどうかを 確認することが重要である
病院に行き 画像診断や生検など色々な検査を受け
外来の先生に「乳癌です」と言われた患者さんがどうするかというと
パソコンでホームページをみてどこの病院でどんな治療を受けようかと懸命に調べる。
ところがその前に「乳癌です」と言われたこと自体が本当なのかとは確認しない。
もし乳癌でなければ調べることなど全然必要ではない。
アメリカの女性は必ず「本当に乳癌なのか」を確認する。

   癌の確定診断は生検による病理診断で行われる
          ↓
   乳腺疾患の良悪性診断は難しい
          ↓
   良性と悪性を間違えると 患者の人生の「天と地がひっくり返る」
本当に癌であるかの確定診断は画像診断ではなく
病理において針生検や摘出生検などで「本当に癌細胞がある」となって 初めて癌である。
それまでは臨床診断上の癌であって 本物の癌は病理診断でわかる。

乳腺の良性・悪性は非常に難しい。
もし良性なのに癌と言われたら乳房を取られ放射線をかけられ薬を5年10年飲み再発の心配までつく。
癌の手術や治療を受けた方の1番の悩みは再発である。
良性を悪性と間違えると天地がひっくり返る。
また本当は悪性なのに良性とされ そのまま放って置くと、浸潤して転移をおこし命がなくなる。

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乳頭状病変は良悪性の鑑別が難しい。
悪性の場合は乳管内癌といい、電車の中に癌が止まっている非浸潤性乳管癌だが
電車の中にある細胞が本当に悪性なのか良性なのかの診断は非常に難しい。

例えば乳管内癌と似たもので乳管内乳頭腫という良性のものがある。
これは臨床上はしこりをふれる、あるいは乳首からなにか液がでてくる異常乳頭分泌など症状は同じである。
検査をし細胞を取ってくると左のように見える。
左上が非浸潤性乳管癌いわゆる乳管内癌であり 左下が良性の乳管内乳頭腫である。
病理医だから、顕微鏡でみるからすぐ判るだろうと思うかもしれないが 必ずしもそうとはいかない。

   乳腺の病理診断が難しい理由
     1) 経験不足
     2) 細胞異型の尺度の違い
     3) 検体の微小化
     4) 新しい疾患概念
     5) 病変の多彩さ
なぜ病理が難しいかというと経験不足ということ、細胞異型の尺度の違い、
それから微小化、新しい疾患概念、病変の多彩さがある。

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経験不足・・・例えば乳管内癌というのは1980年くらいまでは乳癌が100例あっても3例しかない。
癌研は乳癌の多い病院だったので1年に乳癌の手術が100例あったが
1年に20しか手術のない病院だと100例になるのに5年かかり、
そのうち3例しか乳管内癌がないとなると みたことがある人がいない状態である。
外科の先生は手術が出来るからと いきなり経験のない心臓の手術をやれといっても無理である。
経験して経験を重ねてやっと出来るようになるものである。
病理医も「これを診断して」と乳腺をみせられても、みたことがなければ出来ない。

昔は乳管内癌は3%だったが 今は診断が発達してきて14%になってきている。
なぜこの乳管内癌に注目しているかというと、この時点で癌細胞を全て取れば100%治るからである。
早く見つけて早く手術すれば治る癌なのである。
アメリカでは乳管内癌が増えたので、全体の発生率は上がっても死亡率は下がったと言われてもいる。

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細胞異型の尺度の違い。
左上が癌であって、左下が良性である。
病理医は姿かたちをみて悪性・良性を判別している。
胃癌も大腸癌もどの臓器の癌も、教科書では形の悪いものが癌で形の良いものが良性となっている。
ところがこの乳管内癌に限っては形の整っているものが癌で、整っていないものが良性である。
見た目と中身が違うので経験していないと診断が非常に難しい。

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核が丸くて一様で、きちんとした身なりの女性が実は悪いことをする。
きれいな人なので良い人かと思うとすごく悪かったりする。

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一見ケバケバして悪く見える人が本当は良い人であることもある。
しかしケバケバしている人が皆良い人かと良いかというと そうでない癌もある。 
経験がないと絶対に見分けがつかない、それが乳腺の病理の1番難しいところである。

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検体の微小化。
昔はこのくらい取ってきていた。それを切って良悪性を判断していた。

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針生検は直径が1mmくらい、長さが1.5cmほどである。
大きなものでも難しいのに、まして鉛筆の芯のようなもので診断しなければならない。
元々難しいのに検体が微小になってきている。

     新しい疾患概念
   Ductal adenoma (乳管腺腫)

  Azzopardi JG,Salm R:
  Ductal adenoma of the breast(乳腺の乳管腺腫)
  - a lesion which canmimic carcinoma(癌に似た病変)
  J Pathol 144:14-23, 1984

  乳管腺腫は良性病変であるが画像・細胞・組織像とも悪性所見に似る。
  1984年に発表された新しい疾患概念で、
  この乳管腺腫の疾患概念を知らないと、臨床・病理とも悪性と診断するおそれがある。
1984年にAzzopardiが乳管腺腫は良性疾患であると新しい概念を発表した。
しかし病理の先生は頭のてっぺんから足の先まで診断しなければならず、
乳腺だけの勉強をしている時間が無い。
1年間に300ほど乳癌の手術をする大学病院で「うちでは乳管腺腫はないがどうしてか」と聞かれたが
癌と診断している可能性がある。
3%あるのだから10例くらいはあるはず。
日本では4万例手術があるので1200例ほど切られているのではと思われる。

     病変の多彩さ

乳腺腫瘍は組織型だけでも39型あり、
さらに一つの組織型が多くの亜型や部分症(病変)よりなるため乳腺腫瘍の病変はきわめて多彩である。
組織型やその亜型などをあわせると100以上になる。
繰り返しになるが病理の先生は乳腺ばかりをみているだけではなく
脳も100、目も100、口も大腸も食道も、もの凄く多く、全てを覚えきれるわけではない。
乳管線種をしらなくても当然である。
外科や内科は「消化器外科、消化器内科」などと分かれているが
病理だけは頭のてっぺんから足の先まで全てとなり 分かれていない。
全部を把握しているのは難しい。


      https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/3c/8c/pi0830pipikapi/folder/1622272/img_1622272_31239507_1?1201412803.jpg

診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なのか?-」 上は以上です。

次回は 診療の問題点 「乳癌の確定診断-本当に乳癌なのか?-」 下 をUP予定です。