月末になると、整形外科でも必ず同じ作業が待っています。銀行から届いた明細を、一行ずつ表計算ソフトに打ち込む作業です。計算そのものが失敗するのではありません。失敗するのは「転記」という工程です。朝いちばん座って、100行、200行の取引を一件ずつ入力します。そこで日付が一桁ずれ、勘定科目のコードを一つずらし、そして締日以降に「数字が合わない」と気づきます。

この工程を減らす方法は、転記を機械に任せることです。ただし、それは「確認」をなくすことではありません。転記と照合は別の仕事です。転記を任せても、照合は人がやらなければなりません。機械に任せる部分と、人が判断する部分を分けて初めて、話はまとまります。

まだ自分の現場で試していない人は、まずは1件だけで確かめてみてください。ブラウザで動く Bank Statement Converter を使うと、明細のPDFやスマホで撮った写真から、Excel・CSV・JSONのファイルを作れます。ひと月分をまとめて処理する前に、書き出しの形が自分のソフトに合っているかを1件だけ確認しておくと、あとで作り直す手間が省けます。

入力の善し悪しで結果が決まる

変換ツールの精度を論じるよりも、入力ファイルの質を見てください。結論の大部分はそちらで決まります。

ネットバンキングからダウンロードしたPDFには文字情報があり、表として構造化されています。これが最も良い素材です。行と列の位置が決まっているので、ツールは推測せずに済みます。

もう一つは、紙の明細をスキャンしたPDFです。文字情報がゼロなので、すべてが文字認識に依存します。認識結果に確信度を表示するツールなら、その数値を目印にしてください。低い値があれば、確認せずに信用してはいけません。

スマホで撮った写真は、その中間です。文字は読めますが、斜め、明暗、折り目によって誤りが発生します。明るい照明の下、机の上に平らに置き、4つの角がすべて枠の中に写る状態で撮ってください。ただし、撮れるかどうかではなく、どちらの材料を使うかを選ぶ問題です。

銀行のポータルから書き出しできるなら、そこから取得してください。写真は、それ以外の手段です。

書き出しの形は、使う側に合わせる

形式は3つに絞れます。Excelは、人が開いて読むためのファイルで、日付が日付のまま保持されます。CSVは、会計ソフトやスクリプトに入れるためのファイルで、読み込みの設定が不要です。JSONは、別のデータと結合するためのファイルで、数値が文字列にならず型を保持します。

切り出しの形も三つです。口座ごとに1件ずつ切り出す、ZIPにまとめる、ひとつにまとめる。口座ごとに照合するなら1件ずつが安全です。ZIPはひと月のものを包み直しますが、口座の境界は失われません。1つにまとめるのは月の要約を作るのに最も早い反面、元の口座が分からなくなるので、元ファイル名を残す列を足してから使ってください。

この選択は、書き出しの前に決めてください。あとで「やっぱりCSVも.ISNeeded」ということになる往往は、そのたびに作り直しになります。

照合に使う列は残しておく

取引日、摘要、出金、入金、残高。この5つは残してください。通貨と口座の識別子も残します。1つのファイルに2つ以上の口座を入れることがよくあります。通貨や口座が混ざった要約は、何もないより危険です。

そして残高の列。残高とは、明細書に印刷された数字と同じです。この列があれば、照合は推測ではなく計算になります。

照合は、計算である

ここが、転記を辞めた手順の心臓部です。ソートしません。整理しません。書き出した行の最後の一行を、明細書に印刷された残高と比べるだけです。一円まで合っていれば、その表はほぼ正しいものとして、残りもすすめて構いません。一円でも違うなら、まずその差を見つけ出してください。

差の原因はだいたい5つです。ひとつめ、明細が2ページにまたがったときの重複です。ページ先頭に列名が繰り返されるため、それを新しい取引として取り違えることがあります。ふたつめ、摘要が2行に折り返したときです。長い店名やメモが折り返すと、1件の取引が2行に割れることがあります。行数が増えて、記録が正しくなっているように見えて実際は 틀れます。みっつめ、通貨換算の行です。現地通貨の金額と基準通貨の金額が並んでいるときに、違う列を取ると合計がずれます。よっつめ、撮影ページでの読み順のずれです。折り目のそばの行は、列の順番が逆に読まれることがあります。ごいつめ、手数料や利子の行が取引表の外、下部のまとめにある場合です。ここはよく落ちます。

これらは可能性のリストです。実際にやるのは数行だけです。金額が最大の行、最初の行、残高に近い行、そして確信度が低い行。残りをすべて追いかけると、数が大きくなって時間を失います。

カテゴリは、まとめて付けない

摘要の表記は、月を通じてそろっていません。同じ店でも、明細書によって「ABC COFFEE」と「Abc Coffee KK」で表記が変わります。店舗名に支店番号が付く場合もあります。

実際の手順はこうです。金額が大きく、明らかに分類できるものから先に処理します。繰り返す規則を覚え、残りへ適用します。そして残ったものを確認します。

汎用カテゴリと、その分野専用のカテゴリは別物です。経理の分類は、その事業の業務そのものに合わせて作られます。汎用リストは飲食店には合いませんし、病院にはもっと合いません。勝手に「食費」に入れてしまうと、あとで戻す手間が増えます。

分類できない行は、そのまま見えたままに置いておきます。分類できない行は情報です。新しい契約、1回限りの費用、銀行の手数料、そして最も可能性が高いのは、コンピューターが読み取れなかった行です。締日前に一度目を通しておくと、そのまま放置せずに済みます。

習慣を先に作る

特定のツールよりも、習慣のほうが効きます。

月1回、全部の口座のファイルを同じ日のうちに処理してください。そして、口座ごとに残高を確かめてから次の口座に行きます。照合が終わっていない口座は「保留」のままにします。「後で」というメモを残しても、月末にはそれが山になります。積み残った例外が、2時間の仕事を半日の仕事に変えるのは、その累積が理由です。

この手順の価値は、数字を出す工程を短くし、少ないに時間を使えることです。工具は転記を担当します。判断は、やむを得ずに済み、そして本当に必要なときに人間が行います。

チェックリスト

  • 銀行ポータルから取得したPDFを優先する
  • 書き出し形式を、使う側に合わせて選ぶ
  • 取引日・摘要・出金・入金・残高・通貨・口座を残す
  • 符号の扱いを、書き出しのときに一度だけ決める
  • 最終行の残高と、印刷された残高を比べる
  • 最大・最初・確信度が低い行を数行だけ現物と照合する
  • 分類の規則を作り、残りを確認する
  • 元の明細を、書き出しファイルと同じフォルダーに残す
  • 解決しなかったファイルは、黙って先送りしない

まずは1件だけで、明細PDFがExcel、CSV、JSONのどれが自分に合うのかを見てください。ここから始める方が、全体を一度に変換して後で作り直すより安く済みます。

数字を出すために使う道具は何でも構いません。ただし「照合は計算である」という一点だけは、変えないでおいてください。