直木賞作品と比べると、芥川賞作品と聞くと、純文学指向が強く敬遠しがちになる。ましてやノーベル賞作家の作品ともなると、これはもう、自分なんかでは理解できないだろうと言う気持ちが強く、敬遠どころか、ピッチャーマウンドに立つことすら放棄したくなる。

ところが、このジョゼ・サラマーゴというノーベル賞作家が書いた『白の闇』は、思わず読みふけってしまう作品である。白と闇という全く対照的な色がタイトルのため、思わず読んでみたくなった。

内容はというと、ある日突然、感染症によって一人の男が失明する。失明と言うと普通は、目の前が真っ暗になるのだが、この失明は、目の前が真っ白になるのである。続々と感染者が出る事態を重く見た政府は、感染者を軍が監視する隔離施設に閉じ込めるのだが、そこに一人だけ感染していない人が混じっていることから、話は思わぬ方向に進んでいく・・・というものである。

まず、この作品の特徴と言うと、すぐに思いつくのが、登場人物に名前が無いということと、台詞に対してかぎ括弧が一回も使われないということである。それと、とにかく1頁辺りの文字数が多い。

登場人物の名前と台詞の件に関しては、自分なりに考えがあるのだが、それは読んだ人各自が考えてみると良いと思う。

失明はあくまできっかけに過ぎず、「誰も見ていない、誰も見えない」と思っている時、人はどういう行動をとるのかという問いを通して人間の本性を描こうとしている作品なんだと思うが、これがまた、まぁ、ひどいんだわ。みんな対等な状況においても支配と隷属が生まれたり、人間としての尊厳をどんどん失っていく様を見て、本当に怖くなった。そして、その様子を目の当たりにする唯一感染していない人にとってはまさに、それは地獄絵図なんだろうなと思う.

この本を読んでいると色々と疑問が湧くと思うが、それを自分で考えるのがなかなか面白いし、他人の意見も聞きたくなる。

ちなみに、個人的に疑問だったのは、

1.何故、「白い」失明だったのか?
2.何故、一人だけ感染しなかったのか?
3.後半に出てくる教会の話を何を伝えたかったのか?

などなど。

分量的にも内容的にも重い一冊ではあるが、一読する価値はあるのではないかと思う。

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