AD/HDの病態において、従来は実行機能の障害が示唆されていましたが、近年は主に衝動性との関連から、報酬系回路の障害も指摘されています
実行機能とは
実行機能とは、目標のための計画を立て、目標を達成するために自分の行動や思考、気持ちを調整する脳機能のことです
具体的には、
1.優先順位付け
2.計画的な行動
3.作業記憶の保持(ワーキングメモリ―)
4.感情の調整
5.注意の柔軟性
6.適切なコミュニケーション
実行機能の中心を担うのは、脳の前頭前野という部位で『脳の司令塔』と呼ばれています
ワーキングメモリの拠点でもあり、注意力を持続させ、同時に複数の問題をまとめて保持することができます
ここが障害されると、人は作業、順序付け、計画、練習、結果の予測、こうした考えを心に留めておくことが難しくなります
また、重要でない刺激への関心を抑制できず、目の前の刺激に注意を取られるたびに一時記憶が塗り替えられてしまい、元の一時記憶を忘れてしまいます
結果、注意散漫とされるのです
AD/HDの方は、前頭前野の容積が小さい傾向があり、実行機能に障害が出ていることが考えられています
報酬系回路とは
主に脳の側坐核という部分を中心に、大脳辺縁系や大脳基底核という部分がその機能を担っています
喜びや満足の信号を前頭前野に送って、集中するために必要な動機ややる気を生み出しています
「やる気(動機付け)」は、ある行動をやり遂げたら得られるであろう満足感や達成感、すなわち報酬を予測すること(報酬予測)によって生まれてきます
AD/HDの方は報酬系の機能低下により、充足感が不十分で、報酬の強化(報酬を目当てに自分の行動を抑制すること)が十分に出来ないため待つことが苦手になってしまいます
また、長期的な報酬に魅力を感じられず、報酬が小さくても衝動的に目先の報酬を求めてしまう傾向があるため、報酬の効果が持続せず、他の事象に注意が逸れやすくなります
実行機能の回路においても、報酬系の回路においても、ニューロン間の情報伝達物質である神経伝達物質の働きが不可欠ですが、AD/HDの方は神経伝達物質の働きにも異常が認められると言われています
ここで伝えたい大事なことは、
AD/HDの方の行動特性である「衝動性」や「多動性」や「不注意(集中力のなさ)」は、脳の特性であるため自分でもコントロールがうまく出来ないということです💦
出来ないからと言ってやみくもに叱ってしまっては、その子の自己肯定感を下げ、精神疾患などの二次障害に繋がりかねません💦
是非理解を持って周りの方は支援していただきたいと思います✨✨
理学療法士 加門知美