キッシュマンの小さなともだち | 写真家 青木 弘 オフィシャルブログ

写真家 青木 弘 オフィシャルブログ

『アフリカを愛し、アフリカに愛された写真家』
アフリカの内戦を15年以上にわたり取材中。
国内外での個展、写真集などで作品を発表。
一つの国の戦争を終結へ向けて、アフリカ平和プロジェクト「PEACEis___(ブランク)」を発足。
http://www.peaceis.space

ここブダの街では、キリスト教徒とイスラム教徒が共存している。

内戦勃発の直後こそ、人々はそれぞれ自分たちのエリアから一歩も出ることが出来ない状態だったらしいが、3年経った現在は、国内では相変わらず内戦状態で戦闘が続いているにもかかわらず、ここブダでは共存が成立している。

 

キッシュマンの提案でイスラム地区に向かう。この街のイスラム地区の人々に会ってほしいという。

うちらが向かったのはイスラム地区の奥に位置する難民キャンプだった。

ここでも難民キャンプにはイスラム教徒しか存在しなかった。

 

車から降りると、いきなりすごい数の子供たちに囲まれる。

ワーワーキャーキャーと眼をキラキラと輝かせた子供たちにもみくちゃにされた。

そんな彼らの中に誰よりも活発に動き回る元気な男の子がいた。

元気に走り回る彼を目で追いかけていると、ふと他の子供たちと違うことに気がついた。その瞬間、自らの目を疑った。

みんなと同じように走り回る彼の右足はなかった。

 

「アーマットと言うんだ。私の一番小さなともだちなんだよ」

 

キッシュマンが笑顔で教えてくれた。

アーマット(9歳)は3年前に起こった戦闘で右足を失った。

なんとか一命を取り留めたが銃撃された彼の右足が戻ることはなかった。

アーマットの家に立ち寄らせてもらい、何も無い家の中で彼の写真を撮らせてもらった。

 

 

ここには現在約4000人の難民が暮らしている。

彼らは皆、イスラム教徒だ。

全てを見て回ることは出来なかったが、時間の許す限り各家族に会った。そこから垣間見えた彼らの生活は、厳しい中央アフリカの生活の中でも間違いなく最下層の暮らしぶりだった。

かつてはアメリカなどを含め、国際NGOが積極的にここの難民キャンプへ支援を続けていたが現在は全く途絶えてしまっていた。

 

「興味がなくなったからだよ」

 

ガガの医師の言葉を思い出す。