---- サンタクロース、三番目の弟子 -----
「あいつ、もう出掛けたのか?」
「ええ、今日は卒論の提出日だからって早く出てったわ」
「そか・・・」
「どうかしたの?」
「いや・・・」
「どうしたのよ」
「あぁ・・・あいつ、最近、変わったなって、ちょっと思ってさ・・・」
「そうね」
「あいつさ、もう大丈夫なのかな」
「洋介君のこと?」
「うん」
「そうね。小学校以来ずぅっと親友だったからね。それがあんな事故で・・・しかもXmasの夜・・・」
「自転車メチャクチャだったよな・・・」
「ええ、あれからもう一年。あの子、あんなに大好きだった自転車も乗らなくなって…ずいぶん苦しんでたわ。でも、二週間ぐらい前かしら。あの子、ふとつぶやいたの」
「なんて?」
「あいつ、サンタの弟子になれたかなって・・・ポツリと言ったのよ」
「サンタの弟子?」
「そう、サンタの弟子。子どもの頃の洋介君の夢だったらしいの。大きくなったらサンタクロースの弟子になって一緒に世界中の子どもたちにプレゼント配るんだって。そのこと思い出したらしいの」
「・・・」
「でね、そのあとこう言ったの。「Xmasの日、サンタと一緒にあいつやってくるかな、その時こんなオレ見たらなんて言うかな」って・・・」
「・・・」
「それからよ。物置から自転車持ち出してきて磨き始めたの」
「・・・」
「だからあの子、もう大丈夫だと思うわ」
( 間 )
「そうか、今夜はXmasかぁ・・・なぁ、自転車っていくらぐらいするんだ?」
「フフフ、あなたサンタさんの三番目の弟子になる気ね」