10年ほど前の話


結婚適齢期の私は当時付き合っていた人と一緒に住むことを選んだ。

付き合って半年くらいかな。

1人暮らしが長かった私とずっと実家暮らしだった彼氏。(A男)

同棲開始すぐくらいに

A男から

「なんで玄関の真ん中で靴脱ぐん?一緒に住んでんねんから端とかに靴置いてや」

と軽く文句を言われた。

(まぁ一理あるか)

と思い靴の脱ぎ場所に注意を払っていた。

数週間後

私の靴は端っこ。A男の靴は真ん中に置かれるようになった。

それに気づいた時、無性にイラっとした。

真ん中にある時は無言で足で移動させておいた。

他にも色々言われたけど忘れた…

一々言われるたびに

「1人暮らしの癖が抜けてない」

って言われていた。


ある日

日勤が終わりクタクタで帰宅。

お風呂を洗って沸かして入る。

病院で働いてたし満員電車やしいろんなウィルスや細菌が気になる。

すぐお風呂に入りたいタイプ。

1人暮らしの時は風呂場は狭くてシャワーしかできなかったので帰宅後すぐにシャワーを浴びていた。

引っ越して風呂場が広くなりお湯を貯めて浸かれるようになった。

早速、お風呂に入る。

入り終わりさっぱりしたところでご飯の準備。

以前にも買いたと思うけどご飯を作り終えてA男が帰宅する前にA男のワイシャツやハンカチをアイロンしておく。

(思い出しただけで吐きそう)


全て終わりソファ(2人掛け用)でゆったりしていると帰るライン。

到着前にご飯ができるようにしておく。

帰宅してきた。


ご飯食べてA男が入浴。

やたら長い。

上がってきた時に

「風呂先に入ったやろ。冷めてたし。風呂入るのはいいけどぬるくなるから2人が続けて入れるようにしたいんやけど。」

「追い焚きしたらいいやん。それか一緒に入りたいってことなん?」

A男

「追い焚きとかもったいないやん。風呂は1人で入るのがいいねん」

「いや。無理。病院と電車で細菌とかウィルスまみれやし。仕事終わりはすぐ入る」

A男

「はぁー(ため息)なら休みの日は俺が先やから」

なんかめっちゃイラっとしたのでつい言うてしまった

「A男の後の風呂は入りたくない。」

A男

「なんで?」

「前も言うたけどA男さ、風呂浸かる前にシャワーで身体流したりしてないやろ?毛が数本浮いてるのは仕方ないけど服の繊維とか身体に付いた汚れがめっちゃ浮いてるねん。そんなん浮いてるのが見えてる風呂には入りたくない」

A男

「……わかった。先入ってもいいわ」

「……」

そう言うこと言うてるんとちゃうんやけどな…

別れる日までシャワーで身体を流してから入ってくれることはなかった…

そんな汚れがプカプカ浮いてる風呂には入りたくなかったのでA男が入ったあとはシャワーだけになった。シャワーしてる間にお湯を落として浴槽掃除。

お湯が浴槽からなくなると浴槽のフチに汚れがサボったリングみたいに汚れが付いてる。

(思い出しただけで吐きそう)


続きます




メンバー2が気まずそうに持ってきた。

やたら派手色なチマチョゴリ…

あれは多分チマチョゴリ

当時韓国ドラマが流行っていてテレビで見たことがあった。

韓国ブームやったけど全く興味なかったのでやたら派手な色の服持ってきたなーと思っていた。

折りたたんでいるのを広げていくうちに

(これなんや?どうやって着せていくんや?)

とポカン顔に…


「これなに?」

メンバー1

「詳しくはわからんけどチマチョゴリやと思う」

「え?チマ?え?なに?」

メンバー1

「韓国の服かな?全然わからん」

メンバー2を呼び聞いてみるも全然わからないという反応。

「家族さんにこれじゃないとあかんか聞いてみてくれん?」

とメンバー2にお願い。


メンバー2

「自分たちは着せ方わからんし本人(患者さん)の希望やったから着せてくれって言われました」

私とメンバー1

「えぇー‼︎自分ら(家族さん)らもわからんのかい‼︎」

「ネットで調べよか…その前に家族さんに説明してくる。こっちも初めてやから間違ってる部分があるけど了承してくれるか聞いてくる。」

メンバー2

「調べてくる」

メンバー1

「身体拭いとくわ」


死後処置用のエプロンなどを脱ぎ説明にいく。

「失礼します。持って来られた衣装なんですけど私たちも初めてなので通常より時間もかかってしまうし本場の着せ方とは異なると思いますがよろしいですか?」

家族さん

「全然いいでー。なんか着たくて用意してたみたいやけど着方わからんくて死んだら着せて言うてただけやしなーギャハハ」

「…わかりました。あと院内で飲酒はやめてください」

家族さん

「バレたかー。タバコはどこで吸えるん?」

「院内全館禁煙です。失礼します」


イライラが募ってきた


「着せてくれって。あと酒飲んでたから注意しといた」

メンバー1と2

「え?」

「飲み会開かれてた。あと2は着せ方載ってた?」

2

「まぁなんとなくできるような気もするかな程度やね」

「なんせ始めよかー。なら1と2交代する?1疲れてるやろし。ちょっと座ったり巡視でお願い」

1

「オッケー」

私と2でネットを見ながら時間かかりすぎながらどうにか着付け終了

ネットやと生きてる人が動いて着付けてたけどこっちは死人相手やからめっちゃ体力使うし背中とかあんまうまくできなかった。


着付けして化粧を軽くして身辺整理をして終わったのがだいたい1時間くらい、

2人で汗だくだった。


家族を呼びにいく


「失礼します。ここは宴会場ではありません。ゴミは必ず持って帰ってください。あとこちらの準備ができたので見てあげてください。」

部屋に案内する。

家族さん

「遅かったなー。ギャハハ」

2

「他の患者さんは寝てるので静かにお願いします」

疲れてイライラ溜まってた。

1がやってきて

「今から事務員との話があるので事務に行ってください」

家族さん

「1階のとこね」

「そうです」

夫みたいな人が事務に行った。

「一応軽くは荷物まとめたんですが不要な物があれば捨てますので声かけてください」

娘さんみたいな人

「これほとんどいらんでなー。捨てといて」

「一応確認お願いします」

「はいはい」

めんどくさそうにわけていく。

私はすごくイライラしてました。

話すたび酒臭いしタバコ臭い。

コロナが始まるもっと前の出来事なので患者さんや家族さんはほとんどマスクつけてません。


しばらくすると霊安室の準備が整ったので来てーと電話があった。

私と1で患者さんを運び家族さんには着いてきてもらう。

エレベーターに乗るんやけど本気で酒とタバコの臭いが充満していた。

霊安室に行き葬儀屋さんと共にベッドへ移す。

チマチョゴリで葬儀屋さんびっくりしてた。


あとは出棺を待つだけなので病棟に戻る。

ベッド周囲やベッドや待合室の掃除は助手さんがしてくれていた。

助手さんから

「これ待合室に捨てられてました」

と渡された。

ビール缶数本とワンカップ酒2本

ワンカップ酒の中にタバコの吸い殻いっぱい

おつまみ系の袋が数個


めちゃくちゃ腹立ったので事務員さん呼び出して

惨状を見てもらいゴミをまとめて手渡した。

「これを家族さんに返してください。何回言うてもやめへん‼︎ゴミくらい持って帰ってもらってください」

事務員さん

「ぼ…ぼくバイトなんで…」

「バイトなんですね。頑張ってください。」

と言いグイグイ手渡した。

ごめんね…


結構な時間が経ち出棺の連絡がきた。

私と1と当直医と事務員でお見送り。

だいたい家族さんは葬儀社の車に乗る人が多いんやけど乗車前に私たちの方を振り向いてあたま下げてから乗車する方が多い。

今回はなんも振り返られずスタスタ乗車していった。姿が見えなくなるまでお見送りをする。


見えへんなーくらいの感じでポソっと

当直医から

「なんかゴミっぽいの持ってたな」

「待合室で宴会してたんですよ。そのゴミを置いていこうとするから事務員さんに頼んで持って帰ってもらいました。事務員さんありがとうございます。」

事務員さん

「あっ…いえ…」

小走りで去って行かれた笑


1

「先生ぇ‼︎おつかれー‼︎当直終わったら休みなん?」

当直医

「せやなー。珍しく休みや」

1

「なら夜勤メンバーでどっかいこや。おつかれ会したいわー」

「ビール飲みたいー」

1

「飲みたいー。先生どっかいいとこ探しといて」

当直医

「オッケー」


このあとの夜勤で緊急入院が2件きました。

ヘトヘトな私とメンバーと当直医


仕事終わりは当直医のオススメ店へ

色々あって楽しかったなー。


おわり

現役で看護師をしていた頃


夜勤始まってすぐ急変が起こった。

その患者さんは高齢者で心臓マッサージと酸素投与と昇圧剤(血圧を上げる点滴)を希望していた。


酸素投与と昇圧剤を開始。

同じ夜勤メンバーにも報告して家族へ連絡。


「○○病院の△病棟の看護師のプーです。○○さん(患者さん)の息が弱ってきてます。すぐ病院に来れますか?」

分かりやすく短めに伝えるようにしていた。

だいたいの家族さんが

「すぐ向かいます」

など言われてすぐに来てくれる。

時々

「死んでから連絡ください」や「なんで死んだあとに連絡せんのや」や「葬儀屋に送ったら連絡して」など言われる。

だいたい到着時間を聞いて電話を切る。

今回は違った。

家族さん

「えぇ‼︎今から?ご飯食べようとしてたのに‼︎」

「お食事前に失礼します。だいたい到着までにどのくらいかかりますか?」

家族さん

「あー。30分くらいかな」

「気をつけてお越しください。」

と言い電話を切ろうとした。

家族さん

「こっからちょい遠いし車もないし親戚も呼びたいんやけどどうしたらいい?」

と言われた。

「ちょっと遠いし車もないし親戚も呼びたいと?」

気づいたら復唱してた。

周りにいた夜勤メンバーは首をかしげていた。

家族さん

「そうや。」

「親戚の方に連絡して迎えにきてもらうか電車やタクシーで来ていただくしかないですね…」

咄嗟によく出た発言やと思う。

家族さん

「電車まで遠いねん。親戚も車とかないしなー。看護婦さん良かったら迎えにきてや」

「迎えには行けませんね。」

家族さん

「ならタクシーよこしてや。親戚迎えにきてもらって行くから」

「こちらからはタクシー会社に連絡できません。親戚さんに連絡してもらってどうにかお越しください」

少しずつイライラしてきた。

隣で夜勤メンバーは笑いをこらえている。

家族さん

「まあ行きますから」

「気をつけてお越しください」

と言い電話を切った。

電話を切った瞬間

「あの家族何言うてのか意味わからんかったわ…迎えに来させようとしてたで…タクシー呼べとか…」

夜勤メンバー1

「素直にちゃんと来るかなー…。」

「ご飯食べるとこ言うてたから来やんかもな…カルテには30分くらいで来れるって書いてるけどな」

夜勤メンバー2

「ややこい文句言われるかもしれんから注意やな」

などと話していた。

当直医にも報告し家族のことも伝えておいた。


家族に電話してだいたい30分くらい経過した頃に心停止間際。

当直医もいたので交代で心臓マッサージを開始。

夜勤メンバーに家族に連絡してもらうが繋がらず。

夜勤の看護師は3人。

他の患者さんもいるので3人で交代はできないので2人と当直医1人で心臓マッサージと気道確保を行う。

残り看護師1人に他の患者さんの状態を確認してもらいつつ家族さんにも連絡を取りつつ到着を待っていた。


3人とも心臓マッサージで汗だく。

完全に動かない心臓。

「先生、もう動かないですよ…」

ゼェゼェしながら当直医にすがる。

夜勤メンバー1

「まだ連絡つかんのー?」

ゼェゼェしている。

夜勤メンバー2

「全然繋がりません」

当直医

「何分心マしてる?」

ゼェゼェ。

「もう少しで1時間ですね」

ゼェゼェ。

それでもやり続ける心臓マッサージ。

私たち3人は汗だく。

「夜勤メンバー1と2と変わって1は少し休憩しといて。巡視しながらになるけどごめんやで」

夜勤メンバー1

「わかりました。交代してきます。」

汗だくで交代してもらった。

メンバー2

「なかなか電話繋がらないんです。心マ交代します。」

医者

「回復の見込みないな…」

「そう思います」

医者

「ちょっと止めよう。」

「止めてどうします?」

医者

「時々マッサージ再開する」

「時々になったからメンバー1と2はちょっとだけになるけど休んでもらって通常業務してくれん?うちの患者さんも見に行ってほしい。」

メンバー1と2

「はい。全部やっとくわ。ちょっと時間的に早くてもいいよね?笑」

「いいよ。ありがとうね。」

この時点で2時間は経っていた。

心臓マッサージと気道確保を医者と2人で行うことに。

腰と手がプルプルしてくる。


メンバー2

「やっと家族来られました」

部屋案内して

私とメンバー1と医者で心臓マッサージと気道確保開始。


医者

「心臓マッサージ続けてたんですが1時間ほど前に完全に停止状態になりました。」

家族さん

「えぇー。そんなんしてくれてたんー?ギャハハ。もういいのにー。ギャハハ。」

医者がみるみるうちに不機嫌に。

医者から

「何度も連絡したんですが」

家族さん

「気づかんかったわーギャハハ。」

医者

「何時何分死亡確認しました。」


「今から患者さんのお体の管抜いたり拭いたりしますので別室でお待ちください」

と言いメンバー2に案内をしてもらった。

私がメンバー2に

「着せたい服とかあるか聞いて」

と頼んだ。失敗だった。


続きます