猿の戦闘力は、人間のざっと10倍。

もうこれはスカウターがぶっ壊れるレベルです。

特に、木に登って生きていくため、握力なんかは桁違いです。

小指でも掴まれようものなら、小学生がセイタカアワダチソウを引き抜くような気軽さで、カタギではいられないカラダにされてしまいます。


そんな恐ろしい生き物の、成体が、目の前に、僕の方を見て、確かにそこにいるのです。



落ち着け。


こんな時こそ、自転車乗りの誇りを思い出せ。


無事に帰ること。 それが最低のルールじゃないか。




僕は、かじっていたビーフジャーキーをそっと脇に放り、ゆっくりした動作で自転車に跨りました。


猿がビーフジャーキーに視線を写した瞬間、膝も砕けよとばかりに、その日一番のスプリント!




膝は痛い。

でも猿と戦うよりは、膝の痛みと戦った方が何倍もマシです。




そうして猿を振り切って、僕は気がつきました。

膝の痛みを無視して激こぎして、自分の意思とは無関係にペダルが回らなくなったら休む方式に切り替えれば、膝が痛くても走れるのではないかと。

膝の痛みを乗り越えるための、【勇気】と【力】に、【知恵】が合わさった頭脳ライド完成の瞬間であった。










作戦は功を奏し、無事に走りきることができました。


走行距離:288.7km
所要時間:19:39:03