隙間ですしっぽフリフリ

僕の始まりの場所が 本当に無くなった

親父も母も 逃げるように去って行った

自分たちで設計した 天井が高い 吹き抜けの玄関

いつでも 星が見えるように作った 子供部屋の大きな窓

目をつぶっても どこに なにがあるのか なんでもわかる

昨日

僕が 最後の ドアのカギを閉めた

隙間よりカチンコカチンコカチンコカチンコカチンコカチンコ

カチンコカチンコ心の隙間

          口笛

金網をよじ登っていた 建築中のマンションに入っていた

明かりもない 屋上の給水塔で 東京の空を見てた

星座も 何もしらない 空を見て 僕が笑ってた

口笛を吹きながら   

友達と夢を語ってた

覚えたての 口笛を吹きながら 

終電電車の優しい光を見てた



警備員が追っかけてきた 取り付け前の消火器の下で隠れていた

真っ暗な階段を星の光だけをたよりに 二段降りで笑って逃げていた

右左も 知らない エントランスを見て  警備員があきらめていた

口笛を吹きながら

寒い駐車場で焚き火をしてた

覚えたての 口笛を吹きながら

現実の星のない夜空を見あげていた


                     詩:隙間