1〜2月は、インフル流行時期と宣伝されています。そこで、タミフルと転落事故に関して、温故知新してみましょうか。


下記を読むと、お国柄がある程度分かります。当時日本は、現場主義・判断主義の傾向。


ウイルスに殺されるか薬に殺されるか、究極の2択ならどちらを選びますか?


ところで現在は(当時も?)、人工ウイルスや人工細菌がありますので、どちらにせよ自然に殺されるのではなく、人為的に殺される世の中を生きています。


コピペ

2000年代に入り、強毒性の鳥インフルエンザが新型インフルエンザに変身し、世界大流行を引き起こすのではないかとの恐れが世界中に広まり。新型インフルエンザ対策として、ワクチンの開発とともに、特効薬と考えられているタミフル(一般名:オセルタミビル)の備蓄が世界的に進められていた、そのような中にあって、わが国発のタミフル副作用問題”が一時、世界を震撼させた、しかしながら、FDAの冷静かつ科学的な判断により、副作用である可能性は否定され、わが国の副作用判断の甘さが世界中に知れ渡ってしまった。■タミフルの精神・神経症状は副作用か厚生労働省は2004年5月、タミフルを服用した患者に精神・神経症状(意識障害、異常行動、せん妄、幻覚、程攣等)の副作用があらわれたとの報告を受けて、これを「夕ミフルの副作用」と断定して添付文書の改定を指示した。しかしながら2005年11月、FDAは、日本でタミフルの副作用の疑いありとして報告された14歳以下の子供12 人の死亡例について、諮問委員会で因果関係を評価し、因果関係を否定し、精神・神経症状の副作用を使用上の注意に表示する必要はないと結論した、その直後、EUの EMEAも精神・神経症状とタミフルの因果関係を否定した。欧米においては、ある有害事象が副作用か否かの判断には通常、問題となった薬を服用した群と、服用していない群を比較するというやり方を用いており、この方法は、先進国では新薬の有効性や安全性を評価する場合に、科学的常識として用いられる方法である。FDAの諮問委員会における判断には、開発段階を含むタミフル服用群と対照群との有害事象の発生率データの読計的な比較が厳密に行われ、その結果は公表されている。 しかし、2004年5月に厚生労働省が判断を行った時には、 比較データが存在したにもかかわらず、なぜかそのような科学的な判断が行われた形跡はなく、疑問が残る。■副作用と判定し、添付文書記載まで欧米では、服薬時に見つかった「有害事象」を幅広く収集し、解析し、背景因子などを考慮して判定し、副作用と確定した情報が添付文書に記載されている、その判断過程には、審査の過程と同じような手続きが踏まれており、 FDAが一方的に判断して、企業に添付文書の変更などを命じるのではなく、まずは企業に考えさせて、企業が副作用である可能性を否定できる論拠を提出した場合には、それも含めて、審査官も参加して副作用なのかどうかを科学的に判定していると言われている。一方、わが国は「有害事象」ではなく、「副作用または副作用の疑い」と現場の医師が判断したものを収集して、一定数が集まれば「副作用」として、専門家の意見を開いて。 その可能性が否定されなければ副作用として添付文書に記載させている。一見すると同じように見えるプロセスであるが、実は大きな違いがある。副作用の可能性が否定されなければ副作用として添付文書に書かせるわが国のやり方と、副作用であると判断されたものを添付文書に書かせるFDAのやり方の違いが、正反対の判定の原因である。インフルエンザには重篤な脳症や神経症状が一定の頻度で起きることは良く知られており、タミフルを服用した患者に脳症や神経症状が起きたからといって、直ちにタミフルの副作用だと断定できない難しさがある、わが国では、 因果関係が否定できないのだから副作用だと判断されていたわけである。インフルエンザ脳症については既に、非ステロイド系消炎鎮痛剤が、原疾患であるインフルエンザにより引き起こされる脳症の発症率を高めることが知られており、添付文書に記載されている、この場合、インフルエンザによる脳症なのか。非ステロイド系消炎鎮痛剤による脳症なのかは極めて判別困難であるが、薬剤疫学的な手法により、服用群で脳症の発生率が有意に高まることが明らかになり、 添付文書に記載された。すなわち、副作用の判定にはバックグラウンドとなるデータの集積が必須であり、それなしに、職人芸的に判定するやり方は、昔の「薬を使った、効いた、だからこの薬は有効だ」といった非科学的な有効性判断の時代ならいざ知らず、現代においては、なかなか国際的には通用しないといえる。■わが国におけるタミフル服用時の対応その後、2006年10月には、厚生労働省が組織した研究班が、タミフル服用群とタミフルを服用していない患者群のデータを比較した結果、小児においてはその精神・神経症状の発生率に差がないことが明らかになり、「小児についてはタミフルと異常行動には関連が無い」と結論付けている。更に2007年2月、厚生労働省は「インフルエンザ治療に携わる医療関係者の皆様へ」と題する文書を出して、現在のところタミフルと異常行動による死亡との関係については否定的とされているがが、インフルエンザウイルスに感染した場合、タミフルが承認され販売が開始される前においても、異常行動の発現が認められており、また、まれに脳炎・脳症を来たすことがあるとの報告がなされている。 したがって、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、特に小児・未成年者については、インフルエンザと診断され、治療が開始された後は、タミフルの処方の有無を問わず、異常行動発現の恐れがあることから、自宅において療養を行う場合には、①異常行動の発現の恐れについて説明すること。(2)少なくとも2日間、保護者等は、小児・未成年者が1人にならないよう配慮すること、を患者や家族に説明するよう。医療関係者に求めていた、しかしながら、厚生労働省は同年3月に、いきなり判断を変えた、すなわち、「タミフル服用後の異常行動について」 と題する深夜の報道発表は、2月に出した、インフルエンザと異常行動の注意文書にもかかわらず、タミフル服用後に10代の患者が異常行動で事故を起した例が続いたことから、10代の患者にはタミフルの使用を原則禁止するというものである。発表文では、タミフル服用後に発現したという事実が確認されたことから、タミフルの添付文書を改訂するとともに、「緊急安全性情報」を医療機関等に配布し、タミフル服用後の異常行動について、更に医療関係者の注意を喚起するよう関係企業に指示したとしている。そして、添付文書の改訂では、「10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、原則としてタミフルの使用を差し控えること」としている。開発・審査段階における有効性・安全性の評価に比べると、市販後段階における安全性の評価は限られた情報の中で判断しなければならないという困難さはある、タミフルの副作用問題(騒動)は、従来型の職人的・感覚的な副作用評価の限界を示すとともに、欧米のような科学的な安全対策への転換を厚生労働省に促すきっかけとなった。


【土井條:医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団理事長)