吹き替えには、二種類あります。


「TV放送吹替」=限られた時間内で放送される作品を、視聴者に理解させ楽しんでもらうための吹替
「ソフト用吹替」=オリジナルにできるだけ近い翻訳をめざす吹替
※サイトより抜粋


 わたしは、《月曜ロードショー》《木曜洋画劇場》《金曜ロードショー》《ゴールデン洋画劇場》《日曜洋画劇場》を見まくっていた世代です。色んな作品をTV吹替版で見てきました。
 当然、広川ムーアボンドの007も、アベル様を知ってからは、TV吹替版が放映される度に見まくっていたので、台詞などはそれに慣れていました。


 なので正直、007アルティメット・エディション(以下UE)は、広川さんの声を聴きまくれてかなり嬉しいけど、ちょっと物足りなかったんです。
 字幕ONにして見ると、UEでは言い回しのアレンジも少しはありますが、上記の通りほぼ言語通りのセリフなのです。TV吹替版での時は、例えば『ユア・アイズ・オンリー』なら、

「ステキね」
「ビビ 浮気な娘だな」

と翻訳されているところは、

「なんて素敵なの!」
「愛の安売りはいけないよ」

と、直球じゃなくても意味が伝わる、ウィットに富んだ言い回しにあちこち変えられているんです。こういうのって日本ならではだし、広川ムーアボンドにはすごく合ってて、大好きだったなあ。でもUEにはそれがないんですよ。
 TV吹替版のその時のセリフを覚えていると、「なーんか違うんだよなあ~」ってつい思っちゃって( ´△`)
 本当はUEの方が言語翻訳なのにね。


 例えば、オクトパシーのオープニング。
 小型のグライダーで敵の陣地から逃げ出したボンド。しばらく飛んでいたがふと、計器がガソリンがなくなったことを知らせているのに気づいた。地上を見下ろすとガソリンスタンドを発見する。
 給油のために着陸すると、スタンドには老人の姿が。

「おじいちゃん、満タンにして」

UEでは「満タンで頼む」


 例えば、追っ手から逃げるためトゥクトゥク・タクシーに乗って逃げるボンド。

「悪いけど、さっきの金返せ!」

 追っ手をまくために、その場にいる全員の札束をかき集めると、ごった返す街中に向かって投げつけた。

「そーら!金が降ってきたぁ!」

札束が舞う中、人々が歓喜の声をあげながらそれに群がる。

「(お金は)生きてるうちに使おう」

UEでは「悪銭身に付かずだ」


 これ書いている段階で、オクトパシーのTV吹替版は20年以上見れていません。
 中学生の頃、広川さんのお声だけ録音したテープを何度も聞いてるうちに、特徴的な台詞は自然に頭に染み込んでしまいました。最後に聞いたのがいつだったか忘れたけど、高校の頃はお声を集めるだけで満足してて、テープも聞かなくなってたっけ(笑)。
 でも、今でも広川さんのお声と共に、鮮明に台詞が甦るんです。
 友達にはセリフよく覚えてるねと言われましたが、覚えてるんじゃないの。焼き付いてるの(爆)。


わたしにとっては、
TV吹替版こそが
ULTIMATE EDITION
なのだと言っても過言ではないです。



【余談①】
『死ぬのは奴らだ』での日野由利加さんは、『聖闘士星矢 天界編~序章~』でのアルテミスお姉様とはお声の出し方が違いますねー(*´∀`)
 こちらの日野さんのお声を聴くと、アルテミスお姉様の時は、抑えて冷静な演技をされてたのかな?という印象になりました。


【余談②】
『死ぬのは奴らだ』でボンドがソリテアのタロットカードを触るシーン。

「不愉快です!心得のない者には読めません」
「読めるよ。これなんか“幸運”だ。
 二人は幸運なんだ。“私たちは愛し合う”と出ている」
「・・・そんなの嘘。恋など許されない」

 このシーン、UE版では違う意味で悶絶です(爆)。アベル様、アルテミスお姉様にそんなこと言わないでえぇ!お姉様は処女の誓い立ててるんですから!
 ・・・じゃなくって(笑)。アベル様、アルテミスお姉様に愛を囁かないでえぇ~!!という意味でです。ああもうわたしってば変態すぎる(爆)。