【労働契約制定の背景(2)】

 労働契約法について、労働基準法及び個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律との関係が厚生労働省「労働契約法のあらまし」により次のように述べられています。

 

 労働基準法は、罰則をもって担保する労働条件の基準(最低労働基準)を設定しているものですが、法は、これを前提として、労働条件が定められる労働契約について、合意の原則その他基本的事項を定め、労働契約に関する民事的なルールを明らかにしているものであり、その締結当事者である労働者及び使用者の合理的な行動による円滑な労働条件の決定又は変更を促すものです。

 

 また、労働基準法については労働基準監督官による監督指導及び罰則により最低労働基準の履行が確保されるものですが、法については労働基準監督官による監督指導及び罰則による履行確保は行われず、法の趣旨及び内容の周知により、また、法に規定する事項に関する個別労働関係紛争について、個別労働関係紛争の迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)による総合労働相談コーナーにおける相談、都道府県労働局長による助言及び指導、紛争調整委員会によるあっせん等が行われ、その防止及び早期解決が図られることにより、法の趣旨及び内容に沿った合理的な労働条件の決定又は変更が確保されることを期するものです。(出典:厚生労働省「労働契約法のあらまし」)

 

 特筆すべきは「法(労働契約法)については労働基準監督官による監督指導及び罰則による履行確保は行われず~」からの文言です。行政は法の趣旨を周知しますが労働契約法に反するとしても行政処分や罰則はありません。よって「法の趣旨及び内容に沿った合理的な労働条件の決定又は変更が確保されることを期するものです。」としています。つまり罰則がなくとも労働契約法の趣旨に違反していた場合には司法の判断にゆだねられます。社会通念上相当でなく合理的な労働条件でない場合には、やはり賠償金等の支払い対象となり得ます。

 

 平成30年3月末には法第18条の無期転換申込権に関連した雇止めや法第19条に関する雇止め法理の問題が多発すると考えられます。そうならないためにも今すぐ準備をすべきですね。