プロ野球の新球団設立バトルは、結局、地元の期待を裏切りつつも大方の予想通りの決着となったようだ。私としては、来期からの野球の試合の行方よりも、楽天がインターネットを駆使したベースボールサービスを展開したとして、一体どれだけ利益を出せるのか、という所にあるのだが、まあそれは今回の話題ではないので略。

プロ野球界から参加資格無しと判定されたライブドアの堀江社長が、その後の記者会見で、プロ野球の発展を草葉の陰から祈る、というようなことを言ったらしい。

「らしい」というのは、実際にTVで会見現場を見た訳ではないのだが、多数のニュースサイトがそのように報道しているので、多分そうなのだろ、程度の意味である。この「草葉の陰」という表現が面白い。私はあまり使わない表現なのだが、めぞん一刻というコミックの中で、響子さんの(義理の?)親父さんが使っていたような気がする。亡夫が墓の中で見守っている、というような状況だったと思う。

そして、この表現に対する世間のリアクションが、もっと面白い。最も旬な話題だけに、この記者会見に対する感想は、多数のブログで見ることができる。面白いというのは、「草葉の陰」という言葉の使い方がヘンというか、間違っているのでは、という主張が意外とあるということである。

典型的なパターンはこんな感じだ。草葉の陰というのは墓という意味だから、生きている堀江氏が使うのはおかしい、東大文学部に行ってたのに言葉も知らんのか。とかいう。

そういえば、昔、パソコン通信全盛期だった頃、あるネットに文章だか画像が転載されたことがあった。転載した人が、日頃から著作権に厳しく言う人だったので、これに対して「いつもは著作権について厳しいことを言うくせに、自分は著作権を侵害して無断転載してもいいのか」と非難された、という感じのことがあったのを記憶している。

確かに、著作権に詳しくない人が無断でコピーすることがあるかもしれない。詳しい人でも、故意に権利侵害する人いそうだ。ただ、そのような人が、ネットのような公の場で著作権を守れなんてことを、普通言うだろうか?

と冷静に考えてみれば誰でも分かる。この人の論理は破綻しているのだ。

・この人は著作権を守れと主張している。
・この人が著作物を転載した。

という2つの条件から簡単に出てくる結論は一つしかない。この人は、著作権者の承諾を得て、合法的に著作物を転載したのである。実際、その通りだった。しかし、非難した人は、勝手に頭の中でこういう条件を追加してしまった。

・この人は普段は著作権を守れと主張しているが、自分は他人の著作権を守らない。

この条件は最初の条件と矛盾する。だから、この人の行動は一貫していない、と言いたいらしい。しかし、矛盾するような条件を追加したら、全体として一貫しなくなるのは当たり前だ

堀江氏の発言に対するリアクションも同じロジックになっている。

・東大文学部に行くほどの文章表現力がある。
・「草葉の陰」という表現を使った。

この2つの条件から単純に出せる結論は、堀江氏が「草葉の陰」の意味を正しく知っていて、その意味で使った、ということになる。ちなみに、私の解釈は、俺は既に死んでいる、もうプロ野球には手を出すことはない、といったところだ。もちろん、私と同様の解釈を行ったブログも存在する。

(つづく)