私は、落合博満という人物を高く評価している。

それは次の二つの話を聞いたことからである。
ここから書くことは記憶に基づいているので、
間違いもあるやも知れぬ。
この拙文の中でその本質を読み取っていただればありがたい。

一つ目は、確定申告の時の話である。

監督にもなり、チームの事を考えると眠れなくなり睡眠誘導剤を就寝前に服用していたという。
これは、監督と言うような重責を担えば誰しもあることだ。
公式戦に向けて一番忙しかったはずの時に、税理士から代理確定申告しますのでご確認くださいと自宅にやって来た。そして、落合監督は忙しいにかかわらず目を通す…そして、
「ここの数字、間違ってませんか?」と…
慌てた税理士は確認すると、確かに計算ミスがあった。
「申し訳ありません。すぐ、訂正してまいります」と平身低頭になったであろうことは想像に難くない。余り知られていないことではあるが、落合一家は非常に常識人だから、「きっとお忙しい処すみませんがもう一度お願いします。」と苦労を労ったことだろう。

私が凄いなと思ったのは、落合監督が「自分自身の眼でちゃんと確認して、自分の頭で計算もした。」ということだ。

元々数学が大好きと言ってたくらいだから好きなことをしただけと質問すればそう答えただろうが、選手時代に前人未到の成績を残した大選手であるのに、こんな小さなことも大切にする。なかなかできないことだ。

二つ目は練習についてである。

現役選手時代、新聞では余り練習しないように言われていた。またバッティングもアッパースイングと決め付けられ、「あれでは絶対打てない」と時の監督(往年の大投手)に言われた。しかし全く気にはしなかった。往年の大打者がバッティングコーチに内角をえぐるシュートを打つ技術を教えられたが、当時は全く解からずできなかった。しかし後年になってその意味がやっと解かって来たそうである。又、松井秀喜選手は巨人時代、逆に大浴場とかで一緒に風呂に入った時の落合選手の語る言葉が理解できなかったそうだが、引退間近になってようやく理解できるようになったそうである。
落合選手がよくやった練習がある。投手と正対する。自分の中心線に向かって投げてもらう。それを体の軸を回転させて横に払う。これはYoutubeで動画を観ることが出来ので是非見て頂きたい。他の名選手も真似したそうだができたという話は聞かない。無理も無い。バッティングの常識はボールは概ね直線で移動してくるから、それに対してできるだけ直角にバットを振れば当たりもしやすいし、良く飛ぶ。そしてプロの選手はバットの芯と呼ばれる点に当てる。正対しているピッチャーから投げられるボールが一番タイミングが取りづらいのは当然だ。落合は選手時代そういう練習を延々と納得できるまで続けた。
またロッテ時代、本拠地の川崎球場は狭いのでホームランが出にくくなるようにとフェンスが非常に高くライナーでは最高の当りをしてもホームランにはならない。そのためボールの芯の少し下を打つことで打球にバックスピンをかけ、打球を上げる練習を始めたのである。一年間毎日続けても成果が出なかったそうだが、会得したらいきなり50本打ってレベルの高い三冠王を取ったのである。バッティング練習の基本は素振りだ。落合がロッテ時代夜遅くまで素振りをしている選手がいた。落合の真剣な様子に稲尾監督(先に書いた大投手とは違うがやはり往年の大投手の一人)は邪魔してはいけないと柱の陰からずっと見ていた。ついに指が痙攣してバットから外せなくなってしまい、稲尾監督がその指を外してやった。そして落合GMの稲尾さんに対する尊敬の念は大変なものになったのである。

落合は「必要だと信じた練習はできるようになるまで何時間でも練習した。」のである。

それをメディアは知らず、野球の勉強が足りぬ記者達の頓珍漢な質問に対して、秋田弁で受け答えたていたのだがそれが鷹揚に聞こえたらしく次第に叩かれるようになる。しかし、野球人として落合博満の本質を知る人の中で悪く言う人はいないのではないかと推測する。

安倍首相が前の選挙で「美しい日本を取り戻す」とスローガンを掲げたが、落合博満GMのような物事に対して真摯な日本人がたくさんいる日本を美しいと思ってもらえていただけているのなら嬉しいと思う。外国からの日本の信用というものはそういう真摯な部分にあると思う。そうなれば日本の経済復興は間違いない。

★★★★★★
「テキストを自分自身の眼で読み、自分の耳で語学番組をきちんと聞き、自分の舌を使って発音してみる。」
「これは自分で言いたい良い表現だと思ったら、色々単語を変えながらテキストを見なくてもすらすらと言えるようになるまで練習する。」

これを一年間続けたら必ず、日常会話レベルには必ず到達できるでありましょう。