ここまで音楽とことばのワークショップのコンセプトとその同時代的背景についてお話してきました。

しかしながらまだ疑問に感じられていると思います。

クラシック音楽を能動的かつ意識的に聴くという訓練を積み重ねることで学力が向上するならば、それは素晴らしいことであるから是非実践するべきである。

ではそれをどのようにして行ったらいいのだろうか。

そもそもクラシック音楽を能動的かつ意識的に聴くとはどのようなことを意味しているのかと。


私達もその点についてはどうしたらよいのかずいぶんと考えました。

例えば単純にCDの録音をその楽曲のスコアを片手にして聴くというのは一つのやり方としてあるとは思います。

ディープなクラシック音楽のファンであればそのようにしてCDを聴き比べしながらどれがベストの演奏かを検討していくというのはよくある話です。


しかしながら幼少期から特別な音楽教育を受けている訳ではないほとんどの子供達にとって、音楽理論の基礎を踏まえた上でスコアをきちんと読み込むという作業を行うのは現実的には不可能と言っていいと思います。

そして又仮に演奏の音楽的な内容をスコアとの関係で自分なりに理解したとしてもそれだけでは直接的には学力の向上にはつながらないでしょう。


自分が聴き取った演奏についてそのイメージが脳内で再生されたときにそれを言語化する過程がなければ、その内容がどんなに音楽的に優れたものであったとしても感覚的な体験にとどまってしまうからです。

修明学園についてはこちらから
http://www.syumei.co.jp/




教育において音楽を生かそうとするならば、それはことばと結びつかなければならない。

言い換えるならば演奏された音楽についての脳内イメージを文章で表現すること、つまり鑑賞文や批評文を作成することが必要であるというのが私達のたどり着いた共通の結論でした。

クラシック音楽を能動的かつ意識的に聴くとは、このような主観と客観、感性と理性、右脳と左脳の双方による音楽理解を意味しているのです。


ですがこれが極めて困難な作業であることは言うまでもありません。

特に意識したわけではありませんが、実は文科相も小学校や中学校の現行学習指導要領の中で音楽の授業における鑑賞教育の重要性を訴えております。


http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/on.htm
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/on.htm



しかし実際の教育現場ではほとんど機能しているとはいいがたいのではないでしょうか。

内容的に音楽と国語の両方の専門家の力がしかもかなり高度な水準で求められるのにもかかわらず、限られた少ない授業時間しか割り当てられていない音楽の教員に丸投げされているのが実状だからです。


私達は文科相の現行学習指導要領についてその考え方の重要な部分については踏襲しながらも、鑑賞教育においては音楽と国語の比重はより高いレベルで均等であるべきであると考えております。


鑑賞する音楽はできるならばCDよりもプロの音楽家達によるライブの方が望ましいし、又演奏者達から直接に音楽理論的な分析が行えればその方がいいでしょう。

それに加えて楽曲に歌詞があるならばその内容に踏み込んで、例えば歴史的な背景や文章の構造等について解説する方がいいし、何より鑑賞文の書き方や書かれた文章の添削まで行うべきであると思っております。


今回の音楽とことばのワークショップではこのように音楽とことばあるいはことばと音楽が相互に、双方向的に向かい合うことで初めて成立するものです。

実際にワークショップの全体の形式の流れもそれに応じて組み立てられていると言えるでしょう。

それは現在考えているものとしては以下のようなものになります。


音楽とことばのワークショップの流れ(仮)

(1) ことばから音楽へ‐詩の鑑賞・批評
1 歌詞の朗読を聴く
2 歌詞を音読する
3 歌詞の内容について検討する
(2) 音楽からことばへ‐歌曲の鑑賞・批評
1 歌詞の演奏を聴く
2 歌詞に演奏について音楽理論的に解説する
3 歌詞の演奏を聴いて感じたことを思い浮かべる
4 歌詞の演奏を聴く
5 歌詞あるいは歌詞の演奏の歴史的な背景や先行する解釈を説明する
6 歌詞の演奏についての鑑賞文・批評文を書く
(3) 音楽とことばをめぐる自己と他者との協働
1 歌詞の演奏を聴く
2 自分達の書いた鑑賞文や批評文についてグループ・ディスカッションする
3 ディスカッションの結果を発表する
4 最後に必要に応じて自分の鑑賞文や批評文を修正して提出する


このように書き出してみると大変難しいものに見えるもかもしれません。

大学レベルどころか大学院レベルであり、自分の子供達には到底ついていけないのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。

実際に私達もレベルを落とすことなく如何にしてわかりやすくそして面白く実施するのか、そのことについて頭を悩ませておりまだ答えは出ていません。


ですから是非今回のワークショップにはお子様だけでなく保護者の方もご参加いただいて、色々とお知恵を拝借できませんでしょうか。

内容は大人の方も楽しめるものにする予定です。何卒お願い申し上げます。


又鑑賞文や批評文の作成にあたってはそれを補助するためのプリントやワークシートも多々用意しておりますので、文章を書くのがあまり得意ではないとお感じの方もその点についてはご安心いただければと思います。


ワークショップの内容の具体的な詳細やプリント、ワークシートについては、別の機会にブログでその一部をお見せしていくつもりでおりますの次回以降のメールを楽しみにお待ちください。


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