ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ | 飲・水・思・源・2

ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ

 

 渋谷の文化村シネマで「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」を観ました。20世紀建築の巨匠であるル・コルビュジエと、インテリアや家具のデザイナーとして有名なアイリーン・グレイ。2人の関係はこれまで様々な誤解を生んできましたが、この映画を観ることで(これが真実だとするなら)大分クリアなものになりました。

 

誤解1)コルビュジェとアイリーンは師弟関係であったか

 師弟関係ではありませんでした。アイリーン(1878-1976)はコルビュジェ(1887-1965)よりも9才年上であり、若くして注目を浴び30代前半でパリにショールーム(1920)や自身のインテリアデザイン事務所(1923)を構えていました。コルビュジェの事務所で働き彼の家具デザインを担当したシャルロット・ペリアン(1903-1999)のことが頭にあると、混同してしまうのでしょう。ちなみにペリアンも映画にはちょっとだけ出ていました。

 

誤解2)コルビュジェとアイリーンは恋人同士であったか

 二人は恋人同士だったと私も誤解していましたが、これも違いました。映画では、アイリーンの恋人の建築家であり建築ジャーナリストのジャン・バドヴィッチがコルビュジェと友人で、その関係でコルビュジェとアイリーンの友人付合いがあったという描かれ方をしていました。

 

誤解3)「E.1027」という住宅の設計者は誰だったか

 アイリーン・グレイの設計です。南フランスのカップ・マルタンに建てられた「E.1027」という住宅は、コルビュジェが提唱した近代建築の五原則に則った設計であったことから、またコルビュジェが晩年婦人と二人で過ごすために作った「カップマルタンの休暇小屋」がそのすぐ近くに建てられていたことから、そしてコルビュジェがこの住宅に壁画を描いていたことから、長らくコルビュジェの設計だと考えられてきました。

 

 映画自体は二人の確執を描いていることもあり、物語としては幾分暗い趣なので苦手な方にはお勧めしませんが、ロケを実際のE.1027で行ったそうで実物の映像を見れる貴重な機会という意味で、建築やインテリア好きな方は必見です!

 

黒川哲志建築設計事務所HP:https://www.kurokawadesign.com