無印良品の理由展 トークイベント採録 原研哉氏 | 飲・水・思・源・2

無印良品の理由展 トークイベント採録 原研哉氏

 

 無印良品のサイトに、無印のアドバイザリーボードでありグラフィックデザイナーの原研哉氏の講演が掲載されています。独自の「エンプティネス(Emptiness)」という概念から、生活や文化を捉え直すことから無印良品の社会的な位置付け、そしてこれからの企業としての在り方について、非常に分かりやすく語られています。
 ちなみに原研哉氏の著書である「デザインのデザイン」という本は、私の座右の書となっています。カタチを考える以前・デザインとはモノの在り方を考えるということだということを改めて学んだ本です。
「無印良品の理由展 トークイベント採録 第3回 原研哉氏」
http://www.muji.net/lab/report/100203/index.html

 

 

 上の写真は、足利義政の書斎である銀閣寺の東求堂にある「同仁斎」に無印の数百円の茶碗を置いた広告写真です。
 これを見て思い出すのが、2007年のミラノです。私はその春、サローネ・サテリテに「happybirchday」という棚を出品したのですが、棚を引き立たせる展示として何か飾ろうと思い、搬入日の前日に市内の雑貨店やらを廻りました。しかしコストの問題もありイタリアの小物にはピンとくるものがあまりなく、結局MUJIミラノ店でカップや文房具やらを購入しました。
 その時は無印の商品の「存在感のなさ」が、棚を引き立たせる小道具としてマッチするのだと考えていましたが、改めて考えてみるとどこにあっても馴染む「佇まいの普通さ」といった魅力があるのだと思います。数百円のものであっても、そのような美意識の高さが我々日本人にとって、そして感度の高いイタリア人にとって(ミラノ店は地元ッ子で賑わっていました)訴えかけるものがあるのでしょう。

 

 

 上の写真は2003年に東京ADC賞のグランプリをとった無印良品のポスターです。世界の地平線の写真、そして「無印良品」という文字だけ。個人的に広告が面白いなと思ったキッカケはこのポスターだったかな。「エンプティネス」という概念を良く表したポスターです。
 無印的な普通なデザインが何よりも素晴らしい、と思っている訳ではありません。ただそのデザインの端緒として、日本というローカルな根っこから派生した美学を持ちながら、世界中の人に伝わる魅力を持つ受容性の高いデザインを目指すという姿勢こそが大事なのだと思います。