小さなお店こそデザイン次第 | 飲・水・思・源・2

小さなお店こそデザイン次第

先日、物販店舗を計画中のクライアントと
お店候補物件の内見に行ってきました。

物件が決まってから空間デザインの依頼を頂くことが多いのですが、
クライアントが物件を決める前に内見に同行を頼まれることもままあります。
当該物件の良い点と悪い点を建築のプロの目から見て、
建物の状態のチェックや改修範囲の予測、空間の可能性を判断し、
クライアントの想定する事業との適合性を判断する訳です。

出店をお考えの方がいらっしゃいましたら、
「今こんな計画を考えているんだけど、ちょっと見てよ」と
お気軽にお声をおかけ下さい(w)
もちろん住宅やマンションでも結構ですよ。

さて今回は、世田谷線という超ローカル路線の駅近物件。
住宅地の中で開けた道に面し、両側はオシャレなレストランとケーキ屋さん。
古いアルミサッシに少しやけたビニールクロスの内装ですが、
店舗の形は正方形に近く、間口開口も大きいので扱いやすい物件ともいえます。

ネックなのは、5坪という狭さ。
最初に聞いていた物販の事業形態では無理なサイズだと考えていたのですが、
その後状況の変化があり、事務局兼ショールーム的な業務形態となるとのこと。
それであれば、間口いっぱいに開口部が開いている今物件は小振りながら方向性は適している。
内見後、そんな意見を言い合いながら、近所のカフェでクライアントとブレスト。

ところで、これまで私が手掛けた物件で一番小さい店舗は、約7坪でした。
大宮にある花屋「hana 8x8」です。
「お客様にとって花束の花を選ぶ行為を大切な経験にしたい」
というクライアントの明確な意志とセンスが光るお店です。

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また、仮設空間ですが展示会のブースも基本は一コマ3mx3m=9m2ですので、
2コマのブースが約5坪になります。
3年前にデザインした積水化学工業のブース「paroi forest」がそのサイズでした。

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そういえば、現在インテリアデザイン進行中のバーも5坪の広さです。
奇遇にも一致。

それらを思い起こしながら思うことは、
小さなお店ほど、余裕のスペースが必要だということです。
なぜならば、
・狭い場所に大量のものが溢れた空間は見るからに居心地が悪いため、入店しずらいこと。
・空間に余裕がないほど置く商品は選別しなければならなくなるため、
 一つ一つの商品を際立たせる様に配置する必要があること。
・お店のこだわりを理解してもらうために店員とお客様とのコミュニケーションが重要となること。

これは「paroi forest」をプレゼンした時にキーワードとした下記の4点とも通じます。
 A.一瞬で目を惹き付ける「鮮やかさ」
 B.必要な情報のみを的確に伝えられる「簡潔さ」
 C.係員との「コミュニケーション」のしやすさ
 D.後日改めて思い出す印象の「強烈さ」

商品等を売る行為の前に、店側/客側両者のコミュニケーションを育む雰囲気をつくること。
それが、小さなお店ならではの「心地よさ」につながります。
だからこそ、小さなお店ほど空間デザインの役割がかかせぬ要素になるのです。