人間は心や意識と言われるものを持っています。人間の脳神経も、究極的には物理的世界における現象による情報を処理する一面があるということも否定することはできません。それでは、現在目覚ましく進歩しているAI(人工知能)がさらに発展すれば心は生まれるのでしょうか?

 

  私は現在のAIの発展は、心や意識の発生とは無関係の方向ではないかと思っています。現在のAIが、学習機能により膨大なデータからAI自身が最適なパラメーターを探り出したり、情報を蓄積しつつ新たな情報を処理しているとしても、それはあくまでもプログラムをされた命令を実行しているだけであることは同じです。

 

  そのパラメーターの仕組みが、ブラックボックス化しているとしても、それは、処理されるデータとアルゴリズムが膨大で、詳細なところまで、人間が追随できなくなっているということにすぎません。コンピュータが自分の処理していることを理解して考えながら行っているわけではありません。ブラックボックス化していることと、意識や心が発生していることは関係ないと思われます。「コンピュータが何を考えているのか分からない」のではなく、「コンピュータが心を持っていないことは確かだが、コンピュータが具体的にどのように処理するかが把握できない」ということです。

 

  脳のメカニズムはまだまだ未解明ですが、精神の働きが脳の生理的機能によって生み出された現象であることは確かでしょう。物質から自由意志がどのようにして成立するのかなどについても、殆どわかっていません。ロジャー・ペンローズが量子脳理論を提唱していますが、まだ単なるアイデアにすぎません。私も自由意志が成立するためには、量子の不確定性が関係しており、脳内の精神の働きと量子状態のコントロールが関わっているのではないかと思っております。

 

  このように回路の中を電子が流れて情報処理すれば心が発生するというものではありません。精神の働きによる量子状態のコントロールが可能となるような量子的な場が形成されなければ、自由意志が成立することはできないように思われます。

現在のように半導体電子機器としてAIが発展したとしても、意識や自我のようなものが生じる可能性はないと思います。

 

  「情報はエネルギーであり、情報が意識を産むという考え」は疑問です。意識が発生するためには意識が発生するメカニズムを備えた脳のような特別な器官や装置が必要です。脳のような意識を発生する装置として設計されない限り、意識が自然発生的に産まれることはないのではないでしょうか。コンピュータの中で、人間の恣意的な0と1に還元された客観的無意味な信号が行き来することによって、心は生まれることはできないと思います。