私は良かった本は必ずニ度読むようにしています。一度読む価値のある本はニ度読む価値がありますし、ニ度読む価値のない本は、本当は一度も読む価値がないのではないかとも思います。

「同じことは何度言っても同じ」とよく言ったりしますが、同様に「同じ本は何度読んでも同じことが書いてある。」ということは、客観的事実としては正しいでしょう。むしろ「一度も読まなくても同じことが書いてある」と言っても良いのです。しかし、これは本そのものについて述べただけであり、読む人間との関係については何も言っていません。言い替えますと幼稚園児が読もうが、大学教授が読もうが「同じ本は同じ」ということになります。

しかし、幼稚園児が読む場合と、大学教授が読む場合のように、その本と読む人間との関係を考えると、同じ本がまったく別の意味を持ってきます。同じ本であっても、幼稚園児がよむのと、大学教授が読むのとでは、まったく異なります。それぞれの人が、その本をどのように理解し、何を吸収するかが大きく異なるからです。

同様に、同一人物であっても、初めて読むときと、ニ度目を読むときとでは、理解の程度も、着眼点も変わってきます。極端に言えば、人間は同一人物として、同一性を保ちつつも、絶えず変化しているのです。初めて読むときは、「初めて読む人」として読んでいるのであり、ニ度目は「一度読んだ人」として読んでいるのであって、別の人になっているのです。一度目と違う別のものを二度目に発見してもまったく不思議でも何でもないのです。